持ち運びが可能で、机上でも使用できる完全な回路ラボ

持ち運びが可能で、机上でも使用できるうえに、1 ~ 2冊の工学の教科書よりも安価で柔軟性に優れる電子回路用の実験ラボが存在すれば便利だと思いませんか。そのような新たな世界を現実に提供するのがアクティブ・ラーニング・モジュール「ADALM1000」です。今回は、「M1K」という名称でも知られるこのモジュールを紹介します。

M1K は評価用のプラットフォームです。ハンズオンの環境で電子工学の基本について学び、学習過程の早い段階で現実の設計の進め方を体験できるため、非常に役に立ちます。M1K は関数発生器、オシロスコープ、スペクトラム・アナライザ、デジタル・マルチメーターといった多彩な機能を提供します。しかも、PC やタブレット端末以外の追加のハードウェアは必要ありません。

図 1 . ADALM1000(M1K)の外観

図 1 . ADALM1000(M1K)の外観

図 2 . M1K の機能を単純化して表したブロック図(1 チャンネル分)

図 2 . M1K の機能を単純化して表したブロック図(1 チャンネル分)

先月の StudentZone ではアナログ・パーツ・キット「ADALP2000」を紹介しました。これを利用すれば、ソルダーレス・ブレッドボードと各種の部品を使用して簡単に回路を組み立てられます。そして、M1K を使うことにより、その回路のテストを実施することができます。試作した回路とM1K をリュックサックに入れて持ち運び、教室や実験室で教授や他の学生にデモを見せるといったことも行えます。

ADALP2000 には、アンプやセンサーなどのアナログ ICのほか、トランジスタ、ダイオード、抵抗、コンデンサ、インダクタなどのディスクリート部品が含まれています。使い勝手の良い各種の部品が、持ち運びやすいパッケージに収められています。全部品のリストや発注に関する情報は、ADALP2000 の製品ページをご覧ください。

図 3 . ADALP2000 の外観

図 3 . ADALP2000 の外観

アナログ・デバイセズでフェローを務める Doug Mercerは、ADALP2000 の利用法について、ブログでいくつもの貴重な提案を行っています。また、有用かつ低価格の部品によって ADALP2000 を補完する方法も紹介しています。

https://ez.analog.com/community/university-program/blog/2016/07/14/beyond-the-adalp2000

M1K の中身は?

M1K は、アナログ・デバイセズの技術者によって設計されました。信号の発生と測定には、分解能が 16 ビットの高性能データ・コンバータ(アナログ・デバイセズ製)を使用しています。そうすることで、複雑で高価なアナログ信号処理用のハードウェアを使わなくて済むようにしています。M1K は、革新的な GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)を特徴とするソフトウェア「Pixelpulse2」によって動作します。そのため、M1Kの使い方は短期間で習得できます。その GUI によって、学習速度を向上し、よりスマートに作業を進め、より深く探求することが可能になります。

M1K の主要な機能を以下に列挙します。

  • 給電/通信に使用する USB インターフェース
  • 2チャンネルの信号発生機能。電圧または電流を出力します。
  • 2チャンネルの信号測定機能。電圧または電流が入力となります。
  • DVM(電圧、電流、抵抗の測定)
  • 電圧範囲: 0 V ~ 5 V
  • 電流範囲: -200 mA ~ 200 mA
  • 16ビット、100 kSPS(キロサンプル/秒)のD/Aコンバータ(DAC)を使って実現した関数発生器
  • 16ビット(0.05%)、100 kSPSのA/Dコンバータ(ADC)を使って実現したデジタル・オシロスコープ
  • 16ビット(0.05%)、100 kSPSのADCを使って実現したデジタル・スペクトラム・アナライザ
  • 4系統のデジタル信号
  • 電源出力: 5 V/200 mA、2.5 V/200 mA
  • PixelPulse2(オープンソースのソフトウェア)はWindows、Linux、OS X に対応
  • C言語/C++/Pythonのバインディング

M1K と Pixelpulse2 は簡単に使いこなすことができます。詳細についてはhttp://www.analog.com/en/education/education-ibrary/videos/4865877204001.htmlをご覧ください。

アナログ・デバイセズは、M1K を使用するオンライン・ラボを数多く提供しています。また、新しいラボも継続的に追加していきます。

これらのラボには、それぞれに複雑さが異なる回路を使用した各種の実験について一通り説明するビデオが用意されています。各ラボには、https://wiki.analog.com/university/courses/engineering_discovery からアクセスしてください。

上記のページには、M1K を使用するラボとして以下のようなものが列挙されています。

  • Introduction to Electronic Components andEquipment(電子部品と装置の基礎)
  • Introduction to RC Circuits(RC回路の基礎)
  • LED Flasher(LED の点滅回路)
  • Audio Amplifier with Microphone(マイクロフォンを備えるオーディオ・アンプ)
  • An Introduction to Electric Filters(フィルタ回路の基礎)
  • A Simple Magnetic Proximity Sensor(シンプルな磁気近接センサー回路)
  • A Simple Light Detector(シンプルな光検出器)
図 4 . オンライン・ラボには、M1K の使い方を説明するために、ビデオを含む一連のコンテンツが用意されています。

図 4 . オンライン・ラボには、M1K の使い方を説明するために、ビデオを含む一連のコンテンツが用意されています。

M1K 用のソフトウェア「ALICE」

より高度なアプリケーションでは、ソフトウェア・スイート「ALICE(Active Learning Interface for Circuitsand Electronics)」を利用するとよいでしょう。https://wiki.analog.com/university/tools/m1k/alice/desk-top-users-guideからダウンロードしてインストールを行ってください。

何人ものブロガーが、ALICE を使用した経験を記事にしています。ここではDesignSparkに掲載された記事

https://www.rs-online.com/designspark/fun-with-alice-and-op-ampsをお勧めしておきます。

ALICE には以下のような機能が含まれています。

  • ALICE には以下電圧/電流の波形を時間領域で表示/解析するための2チャンネルのオシロスコープのような機能が含まれています。
  • 2チャンネルの任意波形発生器(AWG)の制御
  • 電圧波形のヒストグラムを含め、取得した電圧/電流のデータをプロットするための X-Y ディスプレイ
  • 電圧波形を周波数領域で表示/解析するための 2 チャンネルのスペクトラム・アナライザ
  • ボード線図のプロッターと、掃引機能が組み込まれたネットワーク・アナライザ
  • 複雑な RLC ネットワークの解析機能、RLC の測定機能、ベクトル電圧の測定機能を提供するインピーダンス・アナライザ
  • 2.5 V 出力の高精度リファレンス IC「AD584」(ADALP2000に含まれる)を使用した回路基板のセルフキャリブレーション機能

アナログ/デジタル機能を強化したM2K(ADLM2000)が間もなく登場

M1K は 100 kSPSのサンプリング・レートに対応しています。そのため、音声帯域や約 20 kHz までのオーディオ周波数に適しています。ただ、高度な信号処理にはより高いサンプリング・レートが要求されます。アナログ・デバイセズはこのことを認識し、次世代のアクティブ・ラーニング・モジュールとして「ADALM2000(M2K)」を開発中です。M2Kは、分解能が12ビットで低消費電力/広帯域のミックスド・シグナル・フロントエンド「AD9963」をベースとします。AD9963は 170 MSPS(メガサンプル/秒)に対応する DAC と 100 MSPS に対応する ADC を内蔵しています。このようなサンプリング・レートに対応することから、約 30 MHz に達する信号の生成/処理が可能になります。

M2K は、デュアルチャンネルのアナログ入力とアナログ出力を備えます。また、ソフトウェアをベースとする複合的な計測機能を構成することが可能です。そうした機能の例としては、電圧計、オシロスコープ、スペクトラム・アナライザ、関数発生器、任意波形発生器、ネットワーク・アナライザが挙げられます。こうした機能が、Windows、OS X、Linux 上で稼働するソフトウェアをベースとし、USB または Wi-Fiを経由して利用できるようになっています。また、M2K には 16本のデジタルI/Oピンが用意される予定です。それらは、ロジック・アナライザ用、デジタル・パターン発生器用、あるいは一般的なデジタル・バス(I2C、SPIなど)のマスター/スレーブ用のピンとして構成することが可能です。これらのデジタルI/Oピンを介すことで、アナログ回路、デジタル回路、SPI、I2C、外付けの周辺機能を駆動して測定を行うことができます。このような機能を利用できることから、学生はもちろん、ホビー・ユーザーなども含めて、自身を取り巻くアナログの世界をより正しく理解できるようになるでしょう。M2Kの詳細はanalog.com/jpをご覧ください。

今月の問題

私たちは、このコラムが皆さんにとって有益なものになるようにしていきたいと考えています。今後取り上げてほしいトピックスや質問などがあれば、ぜひ StudentZoneまでご連絡ください。それでは今月の問題です(図5)。

図 5. 問題:グラウンドを基準とする点 A、B、C の電圧を計算してください。

図 5. 問題:グラウンドを基準とする点 A、B、C の電圧を計算してください。

この問題は頭の中で計算してみてください。正解はEngineerZone®StudentZone でご確認ください。

参考資料

ADALM1000 (M1K) Active Learning Module(アクティブ・ラーニング・モジュール)Analog Devices

ADALP2000 Analog Parts Kit(アナログ・パーツ・キット)Analog Devices

Beyond the ADALP2000(ADALP2000のさらなる活用法)Analog Devices

Engineering Discovery Labs Using the M1K(M1Kを活用したエンジニアリング・ディスカバリ・ラボ) AnalogDevices

Fun with ALICE and Op Amps(ALICE とオペアンプで遊んでみよう)」DESIGNSPARK Blog、2016年1月

Introduction to the ADALM1000 SMU and PixelPulseSoftware(ADALM1000のSMU機能とPixelpulseの基礎)」Analog Devices

過去 2 回の StudentZone の記事は、以下のページで読むことができます。

Walt Kester 、StudentZone 「IntroducingStudentZone(StudentZone のご紹介)」Analog Devices2016年10月

WaltKester、StudentZone 「Breadboarding and Prototyping Circuits( ブレッドボード/ プロトタイプによる回路の試作)」Analog Devices 2016年11月

Walt Kester

Walt Kester

Walt Kester は、アナログ・デバイセズのコーポレート・スタッフ・アプリケーション・エンジニアです。長年にわたるアナログ・デバイセズでの業務の中で、高速ADC、DAC、SHA、オペアンプ、アナログ・マルチプレクサの設計/開発/アプリケーション・サポートに従事してきました。多数の論文や記事の執筆に加え、アナログ・デバイセズの国際的な技術セミナー・シリーズ向けに11冊のアプリケーション・ブックの編集/制作も手掛けました。それらの中では、オペアンプ、データ変換、電源管理、センサー向けのシグナル・コンディショニング、ミックスドシグナル回路、実用的なアナログ設計手法などを取り上げています。最新の著書である「Data Conversion Handbook(データ変換ハンドブック)」(発行:Newnes社)では、データ変換について約1000ページにわたり包括的に解説しています。ノースカロライナ州立大学で電気工学学士号、デューク大学で電気工学修士号を取得しています。