小さいことはいいことだ!

質問:

μModule®レギュレータは、なぜ非常に小さなサイズで 実現できているのですか?

RAQ Issue: 167

回答:

µModuleレギュレータは、電源回路の構築に必要な多くの コンポーネントを統合したモジュール製品です。

モジュール化された電源IC製品は、何年も前から市場に出回っています。そうした「パワー・モジュール」の多くは、スイッチング電源に必要なコンポーネントを1パッケージ化したものです。そのままプリント基板にハンダ付けすることによって、入力電圧を基に適切に制御された出力電圧を得ることができます。一般的なスイッチング・レギュレータICは、コントローラとパワー・スイッチだけを1つのチップに集積しています。それに対し、パワー・モジュールには、多数の受動部品も統合されています。通常、パワー・モジュールという名称は、インダクタも統合している場合に使われます。図2は、スイッチング方式の降圧コンバータ(降圧トポロジ)に必要 なコンポーネントを示したものです。濃い青色の部分がパワー・モジュール全体で、薄い青色の部分がその内部に含まれるスイッチング・レギュレータICを表しています。パワー・モジュールで使用するコンバータ回路は、専門のメーカーが開発します。したがって、ユーザは必ずしも電源の専門家である必要はありません。また、パワ ー・モジュールは集積度が高いので、スイッチング電源全体としてのサイズをかなり小さくすることができます。

低ノイズで小型なDC/DCコンバータ

スイッチング・レギュレータは、本質的に放射性のEMI(Electromagnetic Interference)の発生源となります。スイッチング・レギュレータが動作する際には、比較的高い周波数で大きな電流の変化di/dtが発生するからです。 多くの機器では、EMI規格に適合していることが求められます。例えば、医療用機器やRFトランシーバー、テスト/計測システムなどでは、EMI規格の遵守が設計上の 重大な課題になります。システムがEMI規格に適合していない場合や、スイッチング・レギュレータが高速デジタル信号やRF信号のインテグリティに影響を及ぼしている場合には、デバッグや再設計を行わなければなりません。そうすると、設計期間が延びるだけでなく、再評価なども必要になるため、コストがより増大します。また、プリント基板のレイアウト密度が高く、DC/DCコンバータがノイズに敏感なコンポーネントや信号経路の近くに配置される場合には、ノイズの影響がより顕著になる可能性があります。

確かに、スイッチング周波数を下げたり、プリント基板にフィルタ回路を追加したり、シールドを実装したりといった面倒な方法でEMIに対処する手法もあります。しかし、そもそものノイズ源であるDC/DC変換部でノイズを抑制する方が賢明ではないでしょうか。しかも、より小型なDC/DCソリューションを実現するために、MOSFET、インダクタ、DC/DCコントローラIC、周辺部品といったあらゆるコンポーネントが統合されていれば、言うことはありません。アナログ・デバイセズは、そうした製品を実際に提供しています。図1に示したのがその一例です。この「LTM8074」という製品では、表面実装型のICに似た小 さなオーバーモールド・パッケージに、あらゆるコンポーネントを統合しています。

図1. LTM8074の外観。Silent Switcher®の アーキテクチャを採用した低ノイズのソリューションを 小型パッケージで実現しています。
図1. LTM8074の外観。Silent Switcher®のアーキテクチャを採用した低ノイズのソリューションを小型パッケージで実現しています。

LTM8074は、EN 55022のクラスBなど、多くのEMI規格に適合する低ノイズのDC/DCコンバータ回路をより小さなサイズで実現した製品です。また、同製品を採用すれば、プリント基板上のコンポーネント数を最小限に抑えることができます。過渡応答が高速なDC/DCコンバータを使用すれば、出力容量に対する依存性は低くなります。これは、コンバータ内部の帰還ループ補償を最適化したことにより、電源の設計が簡素化されるということを意味します。それにより、出力コンデンサの選択肢が広がり、それぞれのコンデンサに対応した動作条件の下でも十分な安定性が確保されます。

図2. パワー・モジュールの概念図。スイッチング方式の 降圧レギュレータICをインダクタと統合したものです。
図2. パワー・モジュールの概念図。スイッチング方式の降圧レギュレータICをインダクタと統合したものです。
図3. LTM8074の過渡応答(12V入力、3.3V出力)。 同製品を採用すれば、値の小さい出力コンデンサ (2µF×4.7µFのセラミック・コンデンサ)を使用すること ができます。そのため、高速な過渡応答が得られます。
図3. LTM8074の過渡応答(12V入力、3.3V出力)。同製品を採用すれば、値の小さい出力コンデンサ(2µF×4.7µFのセラミック・コンデンサ)を使用することができます。そのため、高速な過渡応答が得られます。

LTM8074は、40V入力、1.2A出力のµModule 降圧レギュレータです。パッケージは、 4mm×4mm×1.82mm(0.65mmピッチ)の小型BGAです。入力電圧が3.2V~40V、出力電圧が3.3Vの場合、ソリューション全体のサイズは60mm2に抑えられます。外付け部品 としては、0805サイズの2個のコンデンサと、0603サイズの2個の抵抗しか必要ありません。パッケージが低背 で軽量(0.08g)であるため、部品が高い密度で配置さ れがちなプリント基板の上面ではなく、背面に実装することができます。Silent Switcher®(サイレント・スイッチャ)アーキテクチャを採用していることから、CISPR22のクラスBに適合するレベルまで放射性のEMIを抑えられます。そのため、他の敏感な回路がEMIの影響を受ける可能性を回避できます。

通常、パワー・モジュールにはすべての部品を統合することはできません。その理由は単純です。例えば、スイッチング周波数やソフトスタートの時間といった一部の設定を調整可能にするには、回路にその内容を指示する仕組みが必要になります。そうした処理は、デジタルで行うことができます。しかし、それにはマイクロコントローラや不揮発性メモリが必要になり、それに伴ってシステム全体のコストが増加します。この問題を回避するための効果的な手法は、外付けの受動部品によって必要な設定を行うことです。

通常、入力/出力コンデンサはパワー・モジュールに統合されますが、外部にも必要になるケースがあります。 図4に、LTM8074を使用した電源回路の概念図を示しました。

図4. LTM8074を使用した電源回路の概念図。 同製品の入力電圧は最大40V、出力電流は1.2Aで、 サイズはわずか4mm×4mmです。
図4. LTM8074を使用した電源回路の概念図。同製品の入力電圧は最大40V、出力電流は1.2Aで、サイズはわずか4mm×4mmです。

わずか1個の外付け抵抗で所望の出力電圧を設定可能なので、バラツキを抑えつつ、アプリケーションに一定の柔軟性をもたらすことができます。ソフトスタートが不要な場合、TR/SSピンにコンデンサを接続する必要はありません。こうしたことから、非常に小さな実装面積でDC/DC変換を実現できます。LTM8074のエッジ長はわずか4mm×4mmで、外部配線を最小限に抑えられます。入力電圧が最大40V、出力電流が最大1.2Aの場合で、電源回路全体のサイズはわずか8mm×8mm程度に収まります。図5に、LTM8074と外付け部品のレイアウト例を示しました。

図5. LTM8074を使用した電源回路のレイアウトの例。 基板上の実装面積は約8mm×8mmに抑えられます。
図5. LTM8074を使用した電源回路のレイアウトの例。 基板上の実装面積は約8mm×8mmに抑えられます。

小型の電源回路では、高い変換効率を実現することが非常に重要になります。放熱の問題が生じる恐れがあるからです。

LTM8074も非常にサイズが小さい製品ですが、効率と放熱の面からも理想的な選択肢となります。Silent Switcher技術を採用していることから、ノイズに特に敏感で、一般的にはリニア・レギュレータが使用されるような回路にも適用できます。

統合レベルの高いパワー・モジュールは、スイッチング電源の設計の簡素化に大きく貢献します。それだけでなく、非常に小さなスペースで効率的なDC/DC変換を実現することができます。

アナログ・デバイセズのµModule製品は、以下のような特徴を備えています。

  • 低ノイズ(Silent Switcherを適用した製品は超低ノイズ)
  • 超薄型のパッケージ
  • 6方向に放熱する効果的な冷却方式(CoP)
  • ライン、負荷、温度に対する高精度な出力電圧レギュレーション
  • 徹底的な試験によって保証された高い信頼性
  • 最小限のグラウンド・ループ
  • 基板上の複数出力
  • 徹底的な温度試験

Frederik Dostal

Frederik Dostal

Frederik Dostalは、ドイツのエアランゲン・ニュルンベルク大学でマイクロエレクトロニクスについて学びました。2001年にパワー・マネージメント事業の分野で働き始め、アリゾナ州フェニックスで4年間にわたってスイッチング電源を担当したほか、さまざまなアプリケーション分野の業務に携わってきました。2009年にADIに入社し、ミュンヘンのアナログ・デバイセズでパワー・マネージメントのフィールド・アプリケーション・エンジニアとして従事しています。