LTC4226 Hot Swap回路の並列MOSFET

The Good, the Bad, and the Ugly

良い例、悪い例、最悪例

はじめに

Hot Swap™回路で複数のMOSFETを並列に使用することは多くの場合望ましく、ときには不可欠ですが、安全動作領域(SOA)の注意深い解析が欠かせません。並列MOSFETを回路に追加する毎に、電圧降下、電力損失、およびアプリケーションに付随する温度上昇が改善されます。ただし、並列MOSFETは必ずしもトランジェントに対する回路の電力能力を改善しません。それぞれのMOSFETが独立した制御ループによって駆動されない限り、負荷の初期ターンオンや、短絡フォルトに対する電流制限などの一時的高電力事象により、1個のMOSFETへ電力が集中する傾向があります。

そのことを確認した上で、各MOSFETのSOAがトランジェント事象全体を包含できる場合に限り、MOSFETを並列に接続し、単一の制御ループを使って全体の抵抗値を減らすのが安全です。

良い例

The Good SOA: Using Parallel MOSFETs with Independent Control Loops

良いSOA:独立した制御ループを備えた並列MOSFETを使用

MOSFET Safe Operating Area and Hot Swap Circuits」の記事の中の12V/18A LTC4226アプリケーション回路は、2つの制御ループを使って2個のMOSFETを駆動しています。LTspiceのGOOD SOA simulation exampleを実行すると、SOAthermモデルがMOSFETの接合部温度を表示してSOAを検証します。このシミュレーションでは、出力がグランドに短絡してから1秒でワーストケース状態に達します。2V電圧源を一方のMOSFETのゲートに直列に接続して、しきい値の不整合をシミュレートします。(これは、温度の不整合や熱暴走によって生じるしきい値のシフトとともに、メーカーのプロセスのばらつきも表します。)回路シミュレーションを実行すると、Tj-GOOD1およびTj-GOOD2とラベル付けされているシミュレートされたMOSFETの接合部温度が、MOSFETの175°Cの最大定格接合部温度を超えないことが分かります。

Good Example of LTC4226-1 & LTC2912-1 with Parallel FETs

良い例

悪い例

The Bad SOA: Parallel MOSFETs & Single Control Loop (9A instead of 18A)

悪いSOA:並列MOSFETと単一制御ループ(18Aの代わりに9A)

BAD SOA simulation exampleは2個の並列MOSFETと5mΩの電流検出抵抗を備えています。したがって、電流制限は上の18Aに比べて9Aに減少します。Tj-BAD1とTj-BAD2のノードのシミュレートされたMOSFETの接合部温度は、最初の回路のTj-GOOD1およびTj-GOOD2と同じ温度を示します。MOSFETが損傷を受けるからこれらにBADというラベルを選択したわけではなく、最初の回路のシミュレーションではMOSFETのSOA能力がフルに利用されており、負荷への電流の2倍を安全に流すことができるからです。

Bad Example of LTC4226-1 & LTC2912-1 with Parallel FETs

悪い例

最悪例

The Ugly SOA: Parallel MOSFETs & Single Control Loop (Tj > 175°C)

最悪のSOA:並列MOSFETと単一制御ループ(Tj > 175°C)

最後に、UGLY SOA simulation exampleは、最初の良い回路の2個の別々の制御ループの代わりに単一の制御ループによって駆動される2個の並列接続されたMOSFETを示しています。この場合、出力がグランドへ短絡されると、1秒後にはMOSFETの一方がトランジェント事象からの全電力を受け取り、MOSFETの175°Cの最大温度を超えます。実際の回路では、MOSFETがこの状態を耐え抜くかどうかは偶然によります。それらのしきい値が整合しており、たまたま等量の電流を分担すれば、回路は見かけ上正常に動作します。しかし、運がなければ、MOSFETの片方がより多くの電力を担い始めます。その温度が上昇し始めると、そのしきい値が下がり、まもなく全ての電力を消費するようになり、他方のMOSFETには何も残しません。そのとき、事態は明らかに最悪になります。

Ugly Example of LTC4226-1 & LTC2912-1 with Parallel FETs

最悪例

まとめ

良い設計者はソリューションのコストを最少に抑え、全てのMOSFETがそれらのSOAリミットを超えないように保護します。良くない設計者は利用可能なSOAを放棄して必要以上に金を浪費します。ただし、煙と消える回路を作成して、他の設計者たちが良く見えるようにする設計者こそ最悪の設計者です。

Gabino-Alonso

Gabino Alonso

Gabino Alonsoは、アナログ・デバイセズのPower by LinearTMグループで戦略的マーケティング・ディレクターを務めています。アナログ・デバイセズに入社する前は、Linear Technology(現在はアナログ・デバイセズに統合)、Texas Instruments、カリフォルニア・ポリテクニック州立大学で、マーケティング、エンジニアリング、オペレーション、教育など、多岐にわたる業務に従事していました。カリフォルニア大学サンタバーバラ校で電気工学とコンピュータ工学の修士号を取得しています。

Dan-Eddleman

Dan Eddleman

Dan Eddlemanは、Linear Technology(現在はアナログ・デバイセズに統合)のアナログ技術者です。ICの設計者、シンガポールのIC設計センターのマネージャ、アプリケーション・エンジニアとして15年の経験を有しています。

Linear Technologyでのキャリアは、電源トラッキング・コントローラ「LTC2923/LTC2925」、高電圧に対応するデュアル理想ダイオードOR「LTC4355」、マルチプロトコル対応のトランシーバー「LTC1546」の設計担当から始まりました。また、世界初のPoE(Power over Ethernet)コントローラ「LTC4255」を設計したチームの一員でもありました。これらの製品に関連して2件の特許を取得しています。

シンガポールのIC設計センターでは、マネージャとして製品設計チームを統括。ホット・スワップ・コントローラ、過電圧保護コントローラ、スイッチング方式のDC/DCコントローラ、電力モニタ、スーパーキャパシタ用のチャージャといった製品を担当していました。

アプリケーション・エンジニアとしては、I2C/SPIベースの製品のデモに用いるArduino互換のハードウェア・プラットフォーム「Linduino」を開発。同プラットフォームは、C言語ベースのファームウェアをお客様に配布する手段として、また容易かつ迅速なプロトタイピングを可能にするものとして活用されています。

加えて、アプリケーション・エンジニアとしてはPWM信号を電圧出力に変換する方式のD/Aコンバータ「LTC2644/LTC2645」を発案。更に、I2C/SMBusアドレス変換器「LTC4316/LTC4317/LTC4318」で使用されているXORベースのアドレス変換回路を開発しました。これらの製品に関連する特許も出願しています。軍用車両向けの厳格な仕様であるMIL-STD-1275に準拠した複数のリファレンス設計(28V対応)も開発しました。

MOSFETの安全動作領域(SOA)に関する研究を継続的に実施。SOA関連の設計に利用できるソフトウェア・ツールを開発したり、SOAについての社内講習会を開催したりしています。LTspiceに付属しているSOAthermを利用すれば、ホット・スワップ回路のシミュレーションにおいてSpirito暴走を組み込んだ熱的モデルをベースとし、MOSFETのSOAをシミュレーションすることができます。

スタンフォード大学で電気工学の修士号、カリフォルニア大学デービス校で電気工学/コンピュータ工学の学士号を取得しています。