LTC4218 サーバ・ファーム向けの12V/100A Hot Swap設計

Hot Swap回路を適切に設計することにより、ファームの信頼性を高めます。

はじめに

クラウド・サービスを提供するデータ・センタが速度と容量を増すにつれて、バックプレーン電源はHot Swap部品の性能限界に挑戦するほどの電流を供給することを要求されます。Hot Swapソリューションにより、他の基板に分配している電力に支障を来すことなく、通電中のバックプレーンから基板を挿抜することができます。標準的なHot Swapソリューションでは、直列に接続したMOSFETを使用して、バックプレーンと基板の間の電力の流れを管理します。これは、グリッチやフォルトによってシステムの他の部分への電力が中断しないようにするためです。

堅牢なHot Swapソリューションを設計する上での課題は、電流への要望が高まるにつれて何倍にもなります。負荷電流が100Aになると、電力損失の要件を決定するだけではもはや不十分です。設計者はMOSFETの安全動作領域(SOA)に対して細心の注意を払い、複数の検出抵抗を対象とするケルビン電流検出技術を理解する必要があります。この記事では、LTC4218 Hot Swapコントローラをベースにした12V/100Aソリューションの例を使用して、これらの課題に対処する方法を示します。

12V/100AのHot Swap設計

最大1000μFのバイパス容量を搭載し、最大100Aの負荷電流を流し、12Vのバックプレーン電源に活線挿入される基板に供給する電力を管理しているLTC4218 Hot Swapコントローラを図1に示します。

図1. LTC4218:12V/100AのHot Swapソリューション

MOSFET M1およびM2での電力損失が過剰にならないように100Aの負荷電流に対応するには、電力が出力に完全に供給されるまでPG(パワーグッド)信号によって負荷を無効にしておく必要があります。これを実現するには、通常はHot SwapコントローラのPG信号を使用して、下流の回路のRESET信号を制御します。図1の回路では、有効な負荷抵抗が起動時(PGが“L”のとき)に10Ωより大きい場合、出力は正常に起動します。起動時に出力抵抗が低い場合(出力短絡フォルト時などに発生する場合あり)、LTC4218はこの状態を検出して、直列接続のMOSFETをオフにします。                                                             

起動時には、PG信号が“H”に遷移するまでLTC4218のISETピンをR4を介して“L”にしておくことにより、回路の電流制限しきい値は減少します。R4の3kΩの抵抗により、電流制限しきい値は、通常動作時の電流制限値のおよそ13%にまで減少します。起動時にそのレベルを超える余分な電流を流し込む何らかのフォルト状態が生じると、TIMERピンの回路が作動してMOSFETはオフします。(PGピンが“L”になると、比較的小型の部品M3、M4、R6、R7、およびC4が連携して動作して、R4の3k抵抗は実質的にISETとグランドの間に接続されます。)                                                                             

起動時の出力電圧ランプレートは、LTC4218の24μAのプルアップ電流がC1とMOSFET M1およびM2のゲートに流れ込むことによって設定されます。結果として、出力電圧ランプレートは2V/msになります。負荷回路はPG信号によって無効になるので、起動時の電流は、図1のC6で表されるHot Swap回路の下流の容量を充電する専用の電流になります。1000μFの容量の電圧を2V/msの割合でランプさせるには、1000μF • (2V/ms) = 2Aの電流が必要です。これは、R4によって設定された起動時の電流制限しきい値である16A(通常動作時の電流制限値の13%)よりはるかに低い値です。これにより、電流検出時の誤差の余裕を大きく取ることができます。起動時に短時間でもこの電流制限しきい値を超えると、フォルト状態であることが出力でわかります。また、LTC4218はMOSFET M1およびM2をオフすることによって応答します。

MOSFETの安全動作領域

このアプリケーションでは、SOA全体をM1またはM2単独で満たすことができます。MOSFETのドレイン/ソース間電圧がかなり大きくなる起動フォルト時、または出力過負荷フォルト時に、電流とSOAがMOSFET間で均等に分配されると思い込むのは考慮不足です。どちらのMOSFETもアプリケーション全体のSOAをサポートできるようにすることが必要です。

他方では、MOSFETが通常動作時に完全に導通すると、その動作は抵抗と同様になるので、電流がより均等に分配されると見なしても安全です。このアプリケーションでは、2つのMOSFETが使用される目的は、通常動作時の電力損失を低減するためであり、一時的な安全動作領域要件を満たすためではありません。電流が100Aのとき、1mΩのMOSFET 1個での電力損失は、I2R = (100A)2 • 1m Ω = 10Wです。電流を50Aずつ均等に分担すると、各MOSFETで消費する電力はより適度になり、I2R = (50A)2 • 1mΩ = 2.5W です。

複数の検出抵抗を使用した適切なケルビン検出

これらの電流レベルでは、検出抵抗に生じる電圧を適切にモニタすることが困難になる可能性があります。LTC4218の15mVの電流検出しきい値を使用する場合、電流制限値が100Aであれば検出抵抗を0.15mΩ未満にすることが要求されるので、ケルビン検出方式では、通常、それを満たすのに並列抵抗を使用します。                   

Hot Swap(または他の電流検出)アプリケーションで1個の検出抵抗を使用する場合、ICの検出ピンと検出抵抗の間に独立した低電流のケルビン・トレースを使用するのは一般的な方法です。電流検出抵抗へのケルビン接続のレイアウト例を図2に示します。検出抵抗とLTC4218のSENSE+ピンおよび SENSE-ピンの間を低電流のケルビン検出経路で直接結ぶと、抵抗性のPCB銅配線を大電流が流れるときに生じる電圧降下による誤差がなくなります。

図2. 検出抵抗が1個のケルビン検出

ただし、この100Aアプリケーションでは、複数の並列検出抵抗を使用して検出抵抗を実装する必要があります。8個の1mΩ抵抗を並列に接続するのが妥当です。こうすると、標準的な電流制限値が8 • (15mV/1mΩ) = 120Aとなり、100Aを超える適度な余裕がある電流を負荷に供給できるからです。                             

とは言っても、検出抵抗の数を増やせばその分だけレイアウトの課題も増えます。図2に示す1個の抵抗向けの単純なレイアウトでは、もはや十分ではありません。検出抵抗間で電流が均等に分配されることは滅多にありません。大電流アプリケーションで、値の小さいいくつかの検出抵抗間で電流に50%の差が見られることは珍しくありません。抵抗をMOSFET M1およびM2に近づけて配置するほど、検出抵抗を遠くに配置した場合より負荷電流のバランスが良くなります。これは、プリント基板の銅プレーンには、検出抵抗と直列に接続すると現れる有限の抵抗があるからです。可能であれば、プリント基板の上面と下面に同じ数の検出抵抗を配置するレイアウトを推奨します。こうすることで、最も遠い検出抵抗に到達するのに必要な銅プレーンを流れる横方向電流によって生じる寄生電圧降下を最小限に抑えられます。                                  

最適なプリント基板レイアウトにした場合でも、個々の1mΩ抵抗の両端で検出された電圧を平均化するために、抵抗回路網を使用する必要があります。この12V/100Aのアプリケーションでは、図1に示すように、LTC4218のSENSE+ピンとSENSE-ピンを、1Ω抵抗の列を使用して8個の1mΩ検出抵抗に接続します。SENSE+ピンとSENSE-ピンの間で生じる電圧は、1mΩの検出抵抗両端の全電圧の平均値なので、実質的に8個の1mΩ抵抗によるケルビン検出になります。レイアウトの一例を図3に示します。

Figure 3. Kelvin sensing layout for eight parallel resistors uses top and bottom of board

図3. 8個の並列抵抗のケルビン検出レイアウトでは、基板の上面と下面を使用する

実験室での結果

計算や回路シミュレーションは、もちろんベンチテストの代わりにはなりません。特に、大電流のHot Swapソリューションを扱う場合はそれが当てはまります。図4に、この設計回路のオシロスコープ波形を示します。まず、100Ωの抵抗接続点まで起動し、その後、ENABLE/RESET信号が“H”に遷移すると、100A負荷ステップが流れます。このセットアップでのENABLE/RESET信号が駆動するのは電子負荷ボックスの4VのON信号であり、図1に示すM5およびR10からの12Vレベルではないことに注意してください。

図4. 通常の起動

図4の波形は、フォルトが存在しない場合、正常動作の標準的な波形です。12Vの入力電源が最初に立ち上がります。次に、LTC4218は1000μFの出力コンデンサを2V/msの割合で充電します。最後に、ENABLE/RESET出力が“H”に遷移し、MOSFETのM1およびM2が完全に導通したことを通知すると、100A負荷がオンになります。              

図5は、出力短絡が発生したときに、LTC4218がMOSFET M1およびM2をオフしていることを示しています。入力電圧が上昇してから100ms後に、回路は出力ノードを充電し始めます。LTC4218は、充電電流を起動時の電流制限しきい値である16Aに制限し、短絡を素早く検出します。

図5. 短絡状態での起動

まとめ

Hot Swapソリューションの設計者は、長年にわたり、増加の一途をたどる電源電流によって突きつけられる新たな課題に絶えず対処しなければなりませんでした。大電流に起因する電力損失要件など、課題によっては新しくないものもありますが、今日の電流レベルでは、MOSFETの安全動作領域や、複数の検出抵抗を対象とするケルビン検出技術など、いくつかの新しい設計回路の課題が表面化しています。ここに示した12V/100A LTC4218 Hot Swapコントローラ・ソリューションは、こうした設計の要点を考慮しています。

Dan-Eddleman

Dan Eddleman

Dan Eddleman is an analog engineer with over 15 years of experience at Linear Technology as an IC designer, the Singapore IC Design Center Manager, and an applications engineer.

He began his career at Linear Technology by designing the LTC2923 and LTC2925 Power Supply Tracking Controllers, the LTC4355 High Voltage Dual Ideal Diode-OR, and the LTC1546 Multiprotocol Transceiver. He was also a member of the team that designed the world’s first Power over Ethernet (PoE) Controller, the LTC4255. He holds two patents related to these products.

He subsequently moved to Singapore to manage Linear Technology’s Singapore IC Design Center, overseeing a team of engineers that designed products including Hot Swap controllers, overvoltage protection controllers, DC/DC switched-mode power supply controllers, power monitors, and supercapacitor chargers.

Upon returning to the Milpitas headquarters as an applications engineer, Dan created the Linduino, an Arduino-compatible hardware platform for demonstrating Linear Technology’s I2C- and SPI-based products. The Linduino provides a convenient means to distribute C firmware to customers, while also providing a simple rapid prototyping platform for Linear Technology’s customers.

Additionally, in his role as an applications engineer, he conceived of the LTC2644/LTC2645 PWM to VOUT DACs, and developed the XOR-based address translator circuit used in the LTC4316/LTC4317/LTC4318 I2C/SMBUS Address Translators. He has applied for patents related to both of these products. Dan has also developed multiple reference designs that satisfy the onerous MIL-STD-1275 28V military vehicle specification.

Dan continues to study Safe Operating Area of MOSFETs, and has created software tools and conducts training sessions within Linear Technology related to SOA. His SOAtherm model distributed with LTspice allows customers to simulate MOSFET SOA within their Hot Swap circuit simulations using thermal models that incorporate Spirito runaway.

He received an M.S. in Electrical Engineering from Stanford University and B.S. degrees in Electrical Engineering and Computer Engineering from the University of California, Davis.