大電力LEDの駆動、太陽電池の安定化、バッテリの充電に使用できる、60V入力の大電力降圧コントローラ

優れたLEDドライバは、LED電流を正確に安定化して色再現性を向上させ、高速のPWM制御によりコントラスト比の高い調光を実現します。さらに、LEDの短絡と開放を認識して対応し、電流レベルのモニタと通知、過熱からの保護、過剰な負荷電流からの電源の保護を実現します。通常のスイッチング・コンバータでこれらの機能を実現するためには、高価なアンプ、リファレンス、および受動部品をいくつも追加することが必要です。

これに対して、LT3763 LEDドライバ/コントローラにはこれらの機能が内蔵されているので、部品コストの削減、基板面積の節約、信頼性の向上を実現できます。LT3763の用途は、単なる高性能LEDドライバに留まるわけではありません。その豊富な機能により、密閉型鉛蓄電池の安全な充電や太陽電池パネルの最大電力点レギュレーション、あるいはその組み合わせなど、要求の厳しい他のアプリケーションの設計が簡単になります。LT3763は、60Vに達するほどの入力電圧であっても、これらの課題を高い効率で遂行します。

LEDの駆動

大電力LEDドライバとして構成されたLT3763を図1に示します。CTRL1ピンのポテンショメータにより、安定化されたLED電流を0~20Aの範囲で手動調整できます。LED電流を温度に応じて安定化するため、負の温度係数を持つ抵抗をLEDの近くに取り付けて、CTRL2ピンとGNDの間に接続します。

図1.アナログ調光とPWM調光機能を備えたシングル大電力LED(20A)ドライバ

図1.アナログ調光とPWM調光機能を備えたシングル大電力LED(20A)ドライバ

EN/UVLOピンに抵抗分割器を接続することにより、LT3763は、入力電圧が10V未満に低下するとシャットダウンするように設定されます。FBピンの抵抗分割器は、出力が6Vに達した場合を開回路条件と規定しており、その状態になった場合には、LT3763はインダクタ電流を自動的に減少させてオーバーシュートを防止し、FAULTピンを“L” にしてその状況を示します。

LT3763は、図2に示すようにちらつきのないLED調光を実現するように設計されています。これを実現するには、PWMピンが“L”のときは必ずPWMOUTピンを“L” にし、それによってLEDを切り離します。また、VCの補償回路網を同様に切り離し、内部のスイッチング・クロックをPWMパルスに再度同期させます。こうした高度な機能により、後続のパルスは全く同じ波形となり、インダクタ電流は可能な限り急速に増加してLED電流の設定レベルを満たし、LED光がちらつくことがなくなります。

図2.図1の回路のPWM調光性能

図2.図1の回路のPWM調光性能

LT3763 を図3 のように構成することにより、48Vの入力で効率98%の350W出力を供給できます。内蔵の電圧レギュレータは、外付けの2つのNMOS パワー・スイッチをそれぞれ駆動するのに十分な電力をTGピンとBGピンのドライバに供給します。LT3763を並列に接続して、2つのコントローラ間で電流を等しく分担するようにすれば、より大電力のアプリケーションを構築できます。この構成は、SYNCピンを使用して、並列に接続したLT3763を外部クロックに同期する方法も示しています。

図3.350W白色LEDドライバ

図3.350W白色LEDドライバ

LT3763は出力電圧定格が高いので、標準的な降圧コンバータと同じように簡単に、出力で35Vを供給します。出力電圧は最大で入力電圧より1.5Vだけ低い値にまですることができるので、図4の構成では、この機能を使用して、直列に接続した3本の密閉型鉛蓄電池(最大45V)を48V電源で充電できます。

図4.3.3A、6セル(36V)密閉型鉛蓄電池チャージャ

図4.3.3A、6セル(36V)密閉型鉛蓄電池チャージャ

バッテリの充電

図4に示すバッテリ・チャージャは、すべてのチャージャと同様、バッテリの電圧がその化学的な組成で決まる限度に達するまで、バッテリの定格充電電流を正確に安定化する必要があります。チャージャは、トリクル充電中のバッテリによって流れる電流が非常に小さくなるまで、オーバーシュートすることなく一定の電圧を維持する必要があります。トリクル充電段階が完了したら、チャージャはバッテリ電圧を緩和レベルまで低下させ、その後最終電圧に整定して、その最終電圧を無期限に維持できることが必要です。

LT3763での電流と電圧の複合レギュレーション・ループと、そのLEDフォルト処理回路により、ほぼ完全なバッテリ・チャージャが完成します。トランジスタを1個追加するだけで、完全なバッテリ・チャージャ・システムを構成することができます。

FBピンの分圧抵抗は、充電電圧を45Vに設定するために設計されています。オープン状態が発生した場合と同様に、電圧が45Vに達すると、図5に示すようにLT3763は自動的に電流を減少させてオーバーシュートを防ぎます。

図5.36V 密閉型鉛蓄電池充電サイクル

図5.36V 密閉型鉛蓄電池充電サイクル

その後、トリクル充電中、バッテリには長時間にわたって少量の電流しか流れません。充電電流が安定化電流の10%に減少すると(バッテリのC/10規格)、LT3763のオープン・フォルト状態が引き起こされます。この結果、FAULTピンが“H” から“L” に切り替わるので、追加トランジスタM3のゲートはオフになり、帰還回路網から抵抗RFB3 が取り外されたのと等価になります。そのため出力電圧の設定値が低くなり、LT3763はスイッチングを停止するので、バッテリは緩和状態になります。

バッテリの合成電圧が新規の設定値まで低下すると、LT3763は再度スイッチングを開始し、出力電圧を無期限に維持するために必要な持続電流を供給します。付加的な利点として、FAULTピンの状態遷移は、トリクル充電が開始されたことを示す信号として使うことが可能です。

太陽電池パネルの安定化

優れた設計の太陽電池パネル電源では、電流レギュレーションと電圧レギュレーションの高度な組み合わせが要求されます。最適な設計では、コンバータがパネルの電圧を検出し、パネルの最大電力点での入力電圧を維持するために流す電流を調整する必要があります。過剰な電流が流れると、高インピーダンスのパネルの電圧は急落します。流れる電流が少なすぎると、利用可能な光エネルギーが実質的に捨てられることになります。

多くの一般的な解決策では、太陽電池パネル・コントローラの設計者はアンプを使って入力電圧を検出し、電流制御ピンの電圧を調整しています。LT3763では、この機能がFBINピンに組み込まれています。CTRL1ピンを“H”、つまりVREF から取り出せる2Vのリファレンスに接続し、VINとFBINの間に抵抗分割器を追加します。FBINピンの電圧が1.205V付近まで低下すると、内部のアンプによってCTRL1ピンの電圧を上書きし、負荷電流が減少します。これにより、入力電圧(太陽電池パネルの電圧)がパネルの最大電力点で安定化されます。FBINピンの分圧抵抗を図6に示しますが、この抵抗値は任意の太陽電池パネルの要件に適合するようにカスタマイズすることができます。

図6.最大電力点レギュレーション機能を備えた70W太陽光発電システム

図6.最大電力点レギュレーション機能を備えた70W太陽光発電システム

図6に示す構成では、パネルの電圧を37Vに保持するために必要なインダクタ電流を(最大5Aまで)コンバータが発生できます。入力電圧はFBINピンの分圧抵抗を介して帰還されるので、与えられた任意の光条件でパネルをピークの電力に保持するために実際に必要な値にインダクタ電流が制御されます。

図7に示すように、太陽電池パネルによるバッテリの充電過程は、前述した低インピーダンスの電源による充電と非常に似ています。違いは、安定化インダクタ電流(充電電流)が設計者によって前もって設定されていないことですが、代わりに入力電圧を安定化する帰還ループが充電電流を調整することになります。これにより充電時間は実質的に最小限に抑えられます。入力電力はパネルの照度に関係なく常に最大に高められるからです。

図7.太陽電池式密閉型鉛蓄電池の充電

図7.太陽電池式密閉型鉛蓄電池の充電

LT3763 には入力電圧と入力電流、ならびに出力電圧と出力電流を安定化する機能があり、C/10でのフォルト・フラグ機能を備えているので、多種多様な太陽電池パネルと組み合わせて使用し、さまざまな種類のバッテリを充電することが簡単にできます。

電流レベルのモニタ

ここに示すそれぞれのアプリケーションでは、LT3763 が入力電流と出力電流のレベルをモニタしており、これには便利な使い方が考えられます。IVINPピンとIVINNピンの間の電圧( 範囲:0~50mV)が20 倍に増幅されたものがIVINMONピンの電圧として現れます。ISMONピンの電圧は、図8 に示すようにSENSE+ピンとSENSEピンの間の電圧と増幅率が同じです。

図8.PWM調光機能を備えたLEDドライバ・アプリケーションでの電流モニタ出力

図8.PWM調光機能を備えたLEDドライバ・アプリケーションでの電流モニタ出力

これらの信号は、LEDに供給される電流を測定したり、電圧変換の効率を測定する必要があるシステムで役立ちます。これらは、太陽電池パネルが供給する電力を概算したり、充電中のバッテリに少しずつ流れ込む電流が減少してゼロに近づくときにその電流をモニタしたりする際にも役立ちます。

降圧コンバータの入力電流は不連続なので、図1および図4に示すように、通常はIVINPピンとIVINNピンにローパスフィルタが必要です。はるかに小型のフィルタをSENSE+ピンとSENSEピンに取り付けるのも高周波ノイズを除去するのに便利なことがありますが、必須ではありません。これらのフィルタを取り付けた場合でも、図8に示すように、短いPWMパルスをモニタするためには十分高速です。あるいは、設計者が瞬時電流レベルより平均電流レベルにより関心がある場合は、ISMONピンとIVINMONピンにローパスフィルタを追加しても構いません。

まとめ

LT3763は用途の広い降圧コンバータで、LEDドライバだけでなく太陽光発電装置やバッテリ・チャージャにおいても有効な機能を数多く内蔵しています。PWMドライバおよび電流モニタが、フォルト検出、電流制限、入力電圧および出力電圧レギュレーションの各回路と共に内蔵されています。電圧定格が高いので、これらすべての機能を利用して直列接続数の多いLEDストリングを点灯したりバッテリ・スタックを充電したりすることができます。28ピンTSSOPパッケージで供給されるLT3763は、小型で機能の豊富な効率の高い電源システムです。

データシート、デモ基板、その他のアプリケーション情報については、www.analog.com/LT3763をご覧ください。

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Luke Milner