300Vのトランジェントから部品を保護する100Vサージ・ストッパー

高電圧トランジェントは自動車システムや産業用システムでは一般的で、数マイクロ秒から数百ミリ秒まで続くことがあり、かなりのエネルギーが負荷側へ送られます。トランジェントの原因は、自動車の負荷遮断や、負荷ステップと寄生インダクタンスによって生じるスパイクがあります。故障のリスクを回避するため、これらのシステムに搭載されているすべての電子機器は、トランジェントのエネルギー・スパイクにそのまま耐えられるほど十分頑強にするか、スパイクから保護する必要があります。

LT4356サージ・ストッパーは、従来の受動的なクランプ保護技術と比較して性能が飛躍的に向上したデバイスです。このデバイスは、パスMOSFETのゲートを安定化することで負荷側の部品を過電圧から能動的に保護し、標準的なセンス抵抗を使用することで電流を制限します。標準的な12Vのアプリケーションを図1に示します。

図1.12Vの過電圧レギュレータ

図1.12Vの過電圧レギュレータ

LT4356の最大定格は100Vで、動作電圧範囲は4V~80Vなので、産業用および自動車の幅広いアプリケーションで負荷側の電子機器を保護するのに最適です。それにもかかわらず、一部の回路では、最大で200V~300Vのトランジェントから保護する必要があります。

このような高電圧を阻止するようにLT4356を構成する1つの方法を図2に示します。ただし、この方法では電流制限機能が使用できなくなります。図2では、VCCピンとSNSピンが入力電圧から抵抗とツェナーダイオードによりクランプされており、100V未満の安全な値まで制限されます。VCCピンとSNSピンは入力経路から必然的に切り離されるので、電流検出は不可能であり、この回路は電圧クランプとしてのみ機能します。

図2.150Vに耐えられる24Vのアプリケーション回路

図2.150Vに耐えられる24Vのアプリケーション回路

図3に示すように、第2のプリ・レギュレイト用MOSFET Q2を縦続接続することにより、この制約を乗り越えることができます。Q2はVCCピンとSNSピンの電圧を安全なレベルにクランプし、電流制限機能を復活させるだけでなく、追加の利点として、SOA(安全動作領域)ストレスをQ1と分担します。

図3.レギュレータを前置きする回路構成により、LT4356の保護範囲が広がります。回路全体を図4に示します。

図3.レギュレータを前置きする回路構成により、LT4356の保護範囲が広がります。回路全体を図4に示します。

電源が最初に投入されると、R3とD1によってQ2のゲート電位が上昇し、その結果、電力がLT4356に伝達されます。次に、GATEピンによってQ1およびQ2のゲート電位が上昇し、両方のMOSFETが完全に導通して、電力が出力まで送られます。したがって、R3とD1は起動にとって不可欠です。通常の動作状態では、GATEピンの電圧はGATEピン自体によって出力より約12.5V高い値に制限されるので、入力は12Vで、Q1のゲートは24.5Vにバイアスされ、Q2のゲートはわずかに低い約24Vにバイアスされます。

入力が高い電圧トランジェントにさらされると、R3とD1によってQ2のゲート電位が上昇し、その結果、D2によってクランプされる80Vに至ります。Q2はソース・フォロワとして機能するので、Q2のソースは約75Vよりは高くならず、VCCピンとSNSピンの電圧は最大定格の100Vより低い状態が安全に維持されます。図2に示すシャットクランプ・アプリケーションとは異なり、図3の直列クランプ回路構成では、LT4356の電流制限機能を全面的に使用できます。Q1は、R1とR2によって規定されるとおりに、通常の方法で出力電圧を調整し、制限します。

図3 に示す回路構成の追加の利点は、Q2がSOAストレスをQ1と分担することです。150V~200Vの入力電圧範囲では、SOAストレスはQ1とQ2の間で等しく分担されます。ある特定のアプリケーションでは、このことにより、非常に高価で特殊な1つの高SOAデバイスを2つの安価なMOSFETで置き換えることができます。ピーク入力電圧の要件が200Vより高くなると、SOAはますますQ2に集中するようになり、直列接続は実質的にストレス軽減の役目を果たさなくなります。

新しい回路構成に基づいた回路全体を図4に示します。この回路は、最大300Vのピーク入力電圧に耐えるよう設計されています。前述したように、Q2のゲートは80Vでクランプされるので、入力電圧が300Vの場合、Q2では225V降下するのに対して、Q1にかかる電圧が合計で75Vを超えることはありません。この理由から、Q2には250V耐圧のデバイスが採用されるので、Q1には100V耐圧のデバイスで十分です。Q2を適切に選択すれば、さらに高い入力電圧に耐えることもできます。

図4.300Vのトランジェントを阻止できる16Vの過電圧レギュレータ

図4.300Vのトランジェントを阻止できる16Vの過電圧レギュレータ

こうした高い入力電圧に耐える回路を設計する場合は、入力に高いdV/dt が生じる可能性とそれがもたらす結果を認識しておくことが重要です。回路が応答できるまでの間、瞬間的に印加された高い入力電圧によって生じる電流を制限するのは、寄生インダクタンスと出力コンデンサまでの配線抵抗のみです。ほとんどのテスト波形では、許容できる一定の立ち上がり時間が規定されていますが、無限大の入力スルーレートも考えられないわけではありません(ベンチ・テスト時などに発生する場合があります)。こうした条件下でLT4356の電流制限ループが優先的に起動できるように、Q3が追加されています。

300Vのスパイクにさらされた場合の回路の結果を図5に示します。CTMRの大きさは、こうした過電圧状態を乗り切れるように設定しますが、持続時間の長いサージは中断されるので、その結果MOSFETは破壊から保護されます。

図5.図4の回路の入力での300Vのスパイクとその結果

図5.図4の回路の入力での300Vのスパイクとその結果

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Sal Afzal