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閉じる産業用オートメーションの常時可視化とリアルタイムデータ取得を可能にするGMSL対応モジュール、ティアフォーとアナログ・デバイセズが開発
多くのメーカーが、自律型ロボットを活用し、機能の安全性と生産性を上させることに興味を持っています。安全性の高い自動化システムを導入することを望むメーカーも多くあります。プラントのアップグレードや強化、あるいは革新的な自動化機能を導入するには、メーカーが保有する装置にリアルタイムで生データを取得するための低遅延技術を適用することが必要です。
ティアフォー(TIER IV)は、オープンソースの自動運転用ソフトウェアに基づくプロダクトを開発するディープテック企業です。アナログ・デバイセズと協業し、GMSL™(Gigabit Multimedia Serial Link)からイーサネットへデータを変換するモジュールを開発しました。
ティアフォーの自動運転ソリューションに関する専門技術と、アナログ・デバイセズの革新的なGMSL技術を組み合わせ、産業用製造 向けに、堅牢な自律型ロボットソリューションを提供します。
「ICプロバイダの枠を超え、真の共創者としてアナログ・デバイセズと協業できることを大変嬉しく思います。アナログ・デバイセズは、産業向けソリューション分野のパイオニアです。アナログ・デバイセズがティアフォーのカメラソリューションを活用し、革新的なソリューションを提供できるよう支援していきます。」川端一成氏
TIER IV VP of Future Solution and PM of Edge.Auto | TIER IV
本事例の概要
顧客企業の概要
ティアフォーは、「自動運転の民主化」をビジョンとし、世界初のオープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware」の開発を主導するディープテック企業として、自動運転システムの社会実装を推進している。「Autoware」を活用したソフトウェアプラットフォームを自社製品として提供し、これらの製品を基盤に市場の需要に対応したソリューションを展開する。「Autoware」が生み出すエコシステムを通じて、世界各地のパートナーと協力して自動運転システムの可能性を拡大し、より良い社会の実現を目指している。
目標
最先端のインターフェースやセンサーの使用性を向上させ、自動運転車両とロボティクス技術を多様なアプリケーションで採用する。
課題
周辺環境を認識し、それに対応可能な産業用オートメーションを実現するため 、リアルタイムなマシンビジョン用プラットフォーム開発を支援するパートナーを見つける。
アナログ・デバイセズのソリューション
アナログ・デバイセズのGMSL技術は、複雑な構成が可能なSerDes(Serializer-Deserializer)ソリューションであり、高速のデータ転送、リアルタイム通信、電力伝送を1本の配線によって同時に実現できる。
GMSLとは何か?
アナログ・デバイセズのGMSL技術は、SerDes技術に基づくコネクティビティソリューションです。複雑な構成が可能なSerDesをベースとし、リンクの一端から他端に向けてデータを高速に伝送するこができます。また、1本のケーブルを使用する双方向のチャンネルにおいて、電力の伝送とデータ通信を同時に実現できます。GMSL2™ 製品のラインナップであれば、順方向のチャンネルで最高6Gbpsのデータ転送を実現できます。この技術は、自動車に実装される先進運転支援システム(ADAS)やインフォテインメント用のディスプレイで広く使われています。また、産業用オートメーション、インテリジェントインフラ、航空宇宙および防衛、デジタル医療といった分野でも広く採用されています。データの整合性、高い安全性と機能性 、低遅延 、小型ソリューションといった特徴を持つGMSLを活用すれば、高度な認識に必要な高解像度のカメラやディスプレイを備えるシステムを 設計できます。
単なる「ビジネス」を超える「共創」の関係
画像:©TIER IV 2024
アナログ・デバイセズが自律型ロボット分野でGMSLのソリューションを展開し始める中、ティアフォーは自社製品である車載カメラを活用したソリューションの更なる展開を検討していました。 両社は、注目を集める自律型ロボットの分野に革新をもたらし、貢献することを目指しています。
アナログ・デバイセズのエコシステムに関する豊富な経験と、強固なサプライチェーンは、ティアフォーとの関係を築く上で大きな支えとなりました。その中でも、アナログ・デバイセズのオープンな姿勢と、設計プロセスにおける共創的な取り組みこそ、両社の関係を強く支えました。
両社は、センサーから取得した周辺環境に関する精密な認識結果(行動のシフト、インテリジェンス、適応)を演算装置に伝送するためのプラットフォームを開発しました。プラットフォームには8つのチャンネルがあり、遅延を小さく抑えつつ、カメラを同期します。また、タイムスタンプを付加する機能やオフセット信号に関する機能なども備えています。
GMSL2から10GbEへデータを変換するモジュールで、最高クラスのリアルタイム対応の自律性を実現
ティアフォーとアナログ・デバイセズは、GMSL2から10GbEへデータを変換するシステム向けの複合型プラットフォーム「AD-GMSL2ETH-SL」を共同で開発しました。このプラットフォームに は、以下のような特徴があります。
- ロボティクスを含む様々なアプリケーションに対応する汎用性
- GMSL2のポートを介して最大8台のカメラやセンサーからデータを取得可能
- FPGAによる生データの変換、および10GbEのポートを介した低遅延の非圧縮のビデオデータの出力
- PTP(Precision Time Protocol)を介したLiDARなどの周辺機器との同期
- 各カメラのシャッタータイミングを個別に設定可能
- 画像データへのタイムスタンプ付加
- 設定管理を直感的に行えるユーザーフレンドリな設計とウェブインタフェースによる適応性の向上
- 高性能な変換プラットフォームと、全入力チャンネルのタイムスタンプ機能と同期機能により、通常は高コストで複雑なマルチプロセッシングが必要となる開発コストを削減
高度なビデオ接続機能 を多様な市場に向けて提供するGMSL
GMSLは、車載アプリケーションの分野で広く採用されています。ティアフォーと開発したGMSL機器は産業用オートメーションにも対応し、多様な分野での可視化のニーズに貢献しています。具体的には、スマート農業や養殖、交通監視を伴うインテリジェントなインフラ、セキュリティや監視を含む建物の自動化、航空宇宙分野の機内エンターテインメント、デジタル医療分野の手術支援ロボット、内視鏡、スマート手術室といったアプリケーション領域です。
GMSLを利用すれば、自律型ロボットシステムの空間認識能力と知覚認識能力を高めることができます。リアルタイムのデータ分析により、診断機能や最適化機能が収集するデータから、生産性と柔軟性を向上させるための実用的な知見を得られます。さらに、GMSLが低遅延、高速データ、リアルタイム通信を同時に提供することで、人間と協働するロボット(コボット)が安全な操作をするために必要な判断を迅速にできるようになります。
効率性と拡張性が高く、顧客のニーズに寄り添ったSerDes技術
業界を牽引する技術
- 堅牢性の高い物理層、極めて低い符号誤り率
- 最高レベルの解像度に対応
- 低遅延
柔軟なトポロジー
- ビデオ分割
- デイジー チェーン接続
- センサーからのデータ集約
スケーラブルなシステム設計
- フットプリントに応じた速度オプションの選択
- 以前のGMSLとの互換性
コスト効率の高いソリューション
- ビデオ、オーディオ、制御信号、データを1つのチャンネルで伝送可能
- ビデオの分割やディスプレイのデイジーチェーン接続
- PoC(Power over Coax)
路上の安全に対応したソリューション
- ASIL B 対応デバイス
- リアルタイムのリンク診断機能
- 厳しいEMI/EMC(電磁干渉・電磁環境適合性)要件に適合
エネルギー効率
- 軽量化設計によるエネルギー消費と排出の削減
- 製品ライフサイクルを通した無駄の削減
「GMSLを使うことで、高帯域幅で低遅延なビジョンやセンサーデータの転送を実現でき、次世代の自律型システムに必要なリアルタイム認識、高度な分析、最適化を行えるようになります。ティアフォーとアナログ・デバイセズは、『GMSL2 to 10GbE』のデータを変換するサブシステムモジュールを共同開発しました。これを活用すれば、高度なロボット知覚用プラットフォームを迅速かつ容易に開発することができます。」Mieu-Ngan Pang
シニア・ディレクタ | アナログ・デバイセズ
安全性の強化
低遅延と高速応答により、人間と協働ロボット(コボット)との近接共同作業が可能になります。作業者は、高温・低温、汚れた環境、危険な状況などを避けることができます。
データ収集と分析の強化
データを迅速に収集・分析することで、非効率性やその傾向をより素早く検知し、状況に適応して問題を解決することができます。
効率の向上
アプリケーションのプロセスに逸脱することなく従い、非常に高い精度と再現性で反復作業を遂行できます。
柔軟性の改善
製造ラインのニーズに応じて迅速にプログラムを再設定する能力により、高い柔軟性とパーソナライゼーションを実現します。
生産性の向上
より速いペースで長時間の作業が可能で、ダウンタイムを減らせます。また、精密な動作とプログラミングにより製品廃棄物が減少します。
両社の強みを活かして開発した新しい自律型製造向け技術
画像:©TIER IV 2024
ティアフォーは、世界初となるオープンソースの自動運転用ソフトウェアの開発をリードしており、自動車業界から高い評価を得ています。一方、アナログ・デバイセズも、産業用オートメーションの分野のリーダーとして実績を残し、高い評価を得ています。ICサプライヤの枠を超え、共創、協業、オープンな姿勢を妥協することなく追求する企業として認識されています。
産業用オートメーションをはじめとする様々な分野向けに、革新的な自律型のエクスペリエンスと価値をもたらす変換モジュールが、両社の協業によって開発されました。
ティアフォーの革新的なカメラソリューションとアナログ・デバイセズの先進的なGMSL技術が組み合わされ、製造の生産性、効率性、安全性の向上をその場で感じることができます。
参考資料
1 「Benefits of Robots in Manufacturing(製造業にロボットがもたらすメリット)」Robots Done Right