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閉じる冷静さを保ち、ロボットと協働せよ
ふと周りを見渡すと、至るところにロボットが存在することに気づきます。COVID-19のパンデミックによってソーシャル・ディスタンスが求められるようになった結果、特にその状況が顕著になりました。例えば、食料品店ではロボットが床の汚れを拭き取り、客からの質問に答えています。また、スマート・ファクトリでは、コボット、協働ロボットなどと呼ばれるロボットが人間と同じ空間で働き、反復作業を支援しています。芝刈りをしてくれるロボットもあれば、床を掃除してくれるロボットもあります。更には、病院の消毒室で救命につながるスキルを発揮したり、看護師や介護士が怪我をしないように重い患者を抱き起こす作業を補助したりするロボットも存在します。
様々なロボットの普及が進むと、人の働き方や遊び方、人とロボットの関わり方が再定義されるようになるでしょう。ロボットは、間違いなく永遠に私たちの暮らしにおいて重要な役割を担い続けていくことになるはずです。
ロボットが需供関係の調整を担う
現在、様々な業界では、消費者の需要や行動に応じた変化が生じています。そうしたなか、あらゆる製造現場に対しては、ロボットからの大きな影響が及んでいます。メーカーに対しては、更なるカスタマイズ性と短期開発/短納期が求められるようになっています。そうした需要に応えるためには、各地域のニーズに合致した施設を配備したり、簡単に再構成できる製造ラインを導入したりといった形で業務形態を変更しなければなりません。
消費者の需要に応えるためには、少品種大量生産から多品種少量生産への移行を進める必要があります。つまり、「ボンネットにゴールドのイニシャルが彫り込まれたバブルガム・ピンクのスポーツカーが欲しい」といった声に対応できるようにするということです。現在の製造環境は、このようなカスタマイズ性を求める声に応えられるようにするために変貌しつつあります。その背景には、ロボットの普及があります。ロボットの導入によって生産性と柔軟性が高まりました。更に、より手頃な価格でロボットを導入できるようになったことから、オートメーション化によるROI(投資収益率)が向上しています。
従来から、自動車メーカーなどは産業用ロボットを活用していました。通常、そうしたロボットは動作が高速で、かなり多くの積載量に対応していました。そのため、人間の安全性を確保するためには、安全ケージやライト・カーテンによる隔離が必要でした。そうしたロボットには更なる進化が求められています。すなわち、より高精度なモーション制御や高度な多軸同期に対応しなければなりません。同時に、サイズと消費電力の削減も達成する必要があります。
その一方で、コボットの普及も進んでいます。それにより、従来は人間にしかできなかった作業を自動化することが可能になりました。コボットは、従来型の産業用ロボットよりもはるかに容易かつ少ないコストで導入することが可能です。また、コボットそのものも安価です。コボットの配置、設定、プログラムは、導入企業自らの手で実施できます。このことから、以前はコストの障壁に悩まされていたメーカーも、TCO(総所有コスト)を抑えつつオートメーション化を進められるようになってきています。
「オートメーション化により、退屈な反復作業の軽減が促進されています」アンバー・ラッド
元英国労働・年金省国務大臣
「3つのD」をオートメーション化で解消し、人間の業務内容を改善する
現在、メーカーにはより少ないリソースでより多くの作業をこなすことが求められています。それに向けて、業務全体というよりも、個々の作業の自動化が進められるようになっています。オートメーション化は、「Dull(退屈)、Dirty(汚い)、Dangerous(危険)」の3つのDを解消できるものとして期待されています。3つのDに該当する作業を自動化することにより、人間を他の業務に振り分けることが可能になるからです。従業員は退屈な反復作業から解放され、より高いスキルと経験的な知識が必要とされるやりがいのある仕事に取り組めるようになります。それだけでなく、怪我をするリスクも抑えられます。このような業務の改善によって、従業員の潜在能力を最大限に生かすことが可能になります。また、仕事に対する従業員の満足度が向上するので、離職率の低減につながります。
「ロボットに仕事を奪われるのではないか」という懸念を持つ方もいるでしょう。しかし、人間の頭脳による複雑な思考に、技術で張り合うのはまず不可能です。そのような思考を必要とする仕事はたくさん存在します。例えば、共感、重大な意思決定、プロセス知識といった人間のスキルを必要とする仕事が挙げられます。
ロボットによって実現された革命の例
製造ラインの方向転換
柔軟性の高いオートメーション・システムを導入すれば、ツールのシームレスな変更、インターフェースのプラグ&プレイ、迅速な再プログラミングが可能になります。そのため、既存のタスクから別のタスクへロボットを転用することができます。例えば、衣料の縫製用ロボットを、医療用のマスクやガウンの製造のような別の作業に転用するといった具合です。
従業員の間の物理的な距離の確保
パンデミックの渦中にあって、製造、物流、リサイクルなどの施設では、ロボットの導入が有用な方策になります。従業員の間の距離を確保するために人員を削減し、その分の作業をロボットで代行することで生産性を維持できるからです。
清掃/消毒
病院、空港、ショッピング・モール、公共施設は、ロボットがその能力を最大限に発揮できる場所です。例えば、無人搬送車(AGV)を使えば、紫外線の照射によって病室を消毒することができます。そうすれば、人間が手作業で消毒液を噴射するよりも高速かつ効率的に清掃が行えます。
物資の搬送と処理
医療施設で使われるロボットは、完全に自律的に移動することができます。人間が介入することなく、エレベーターに乗り込むことも可能です。薬を配布したり、検体を研究室に運んだりすることができるので、作業の効率を改善可能なだけでなく、人間が危険な物質に触れる機会を減らせます。
配送施設における商品のピッキング/梱包
オンライン・ショッピングの急激な成長は、今後も間違いなく続きます。したがって、注文された商品を迅速かつ正確に取り出して梱包し、翌日(あるいは即日)配送に対応するということが求められます。これは、正にロボットの能力が試されるということを意味します。
ロボットを受け入れる
ロボットとオートメーションは、負の影響をもたらす可能性があります。そのことを、この世の終わりだと言わんばかりに嘆く悲観的な方も存在します。しかし、冷静さを保ちながら、今後の有意義な変化に目を向けることが重要です。オートメーションとロボティクスが、人間の生産性、安全性、競争力、雇用創出に対してもたらす効果は絶大です。移り変わりの激しいパンデミックの時代において、ロボットは非常に大きな役割を担うことになります。グローバルなサプライ・チェーンへの依存を減らし、製造を国内に戻し、社会を支えて復旧を支援する上では、ロボットの存在が重要になります。ロボットは、誰もが待ち望む未来を支える存在だと言えるでしょう。