正帰還によってPT100トランスデューサを補償

2023年03月06日
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説明

温度は最もよく測定される物理的パラメータの一つです。熱電対と測温抵抗体(RTD)センサはほとんどの高温測定に十分ですが、アプリケーションに最も適した特性を持つセンサを選択しなければなりません。表1はセンサを選定するための一般的なガイドラインを示しています。

表1. センサの特性
Feature Thermocouple RTD
Response Time Better
Maximum Temperature Higher
Ruggedness Better
Cost Efficiency Better -
Accuracy - Better
Long-Term Stability - Better
Standardization - Better

RTDは高精度であり、温度範囲は-200℃-+850℃です。RTDは電気的出力であり、適切なデータ処理装置を使うと伝送、切換、表示、記録、および処理が容易です。RTDの抵抗は温度に比例するため、既知の電流を抵抗に流すと、温度に比例して増加する出力電圧が得られます。抵抗と温度の間の正確な関係が分かると、所定の温度の計算が可能です。

物質の温度に対する電気抵抗の変化は、その物質の「抵抗温度係数」と言われます。ほとんどの金属の温度係数は正であり、多くの純金属では有用な温度範囲のほとんどで基本的に一定です。さらに、抵抗温度計は温度測定に利用できる、最も正確で、リニアなデバイスです。RTD (プラチナ、銅、およびニッケルなど)で使われる金属の抵抗は、所望の温度測定範囲に依存します。

プラチナRTDの公称抵抗は0℃で100Ωです。プラチナRTDは非常に規格化されていますが、世界で同一でない多数の標準に準拠しています。したがって、ある標準で作られたRTDがそれとは異なる標準で作られた計測器で使われる場合は問題が起こります。

表2. プラチナRTD*の良く知られた標準
Organization Standard ALPHA (α): Average temperature coefficient of resistance (/°C) Nominal resistance at 0°C (Ω)
British Standard BS 1904: 1984 0.003850 100
Deutschen Institut für Normung DIN 43760: 1980 0.003850 100
International Electrotechnical Commission IEC 751: 1995 (Amend. 2) 0.00385055 100
Scientific Apparatus Manufacturers of America SAMA RC-4-1966 0.003923 98.129
Japanese Standard JIS C1604-1981 0.003916 100
American Society for Testing and Materials ASTM E1137 0.00385055 100

*Sensing Devices. Inc.はこれらの温度測定標準のプラチナRTDを製造しています。

プラチナは長期安定性、再現性、高速応答、および広い温度範囲を備えているため、多くのアプリケーションで有用な選択となっています。その結果、プラチナRTDは温度測定で利用可能な最も信頼性の高い標準として認められています。PT100 RTDは次に示す一般式で記述されますが、この式で明らかなように温度と抵抗の間は非線形な関係となっています。

RT = R0(1 + AT + BT² + C(T-100)T³)

ここで、

  • A = 3.9083 E-3
  • B = -5.775 E-7
  • C = -4.183 E-12 below 0°C, and zero above 0°C

表形式になっている対応するデータについては表3を参照してください。

表3. 0℃で100.0Ωの385プラチナの抵抗/温度の表**
°C 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
-100 60.26
-90 64.3 63.89 63.49 63.08 62.68 62.28 61.87 61.46 61.06 60.66
-80 68.32 67.92 67.52 67.12 66.72 66.31 65.91 65.51 65.1 64.7
-70 72.33 71.93 71.53 71.13 70.73 70.33 69.93 69.53 69.13 68.73
-60 76.33 75.93 75.53 75.13 74.73 74.33 73.93 73.53 73.13 72.73
-50 80.31 79.91 79.51 79.12 78.72 78.32 77.92 77.52 77.12 76.73

°C 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
-40 84.27 83.88 83.48 83.08 82.69 82.29 81.9 81.5 81.1 80.7
-30 88.22 87.83 87.43 87.04 86.64 86.25 85.85 85.46 85.06 84.67
-20 92.16 91.77 91.37 90.98 90.59 90.19 89.8 89.4 89.01 88.62
-10 96.09 95.69 95.3 94.91 94.52 94.12 93.73 93.34 92.95 95.55
0 100 99.61 99.22 98.83 98.44 98.04 97.65 97.26 96.87 96.48

°C 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 100 100.39 100.78 101.17 101.56 101.95 102.34 102.73 103.12 103.51
10 103.9 104.29 104.68 105.07 105.46 105.85 106.24 106.63 107.02 107.4
20 107.79 108.18 108.57 108.96 109.34 109.73 110.12 110.51 111.9 111.28
30 111.67 112.06 112.45 112.83 113.22 113.61 113.99 114.38 114.77 115.15
40 115.54 115.92 116.31 116.7 117.08 117.47 117.85 118.24 118.62 119.01

°C 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
50 119.4 119.78 120.16 120.55 120.93 121.32 121.7 122.09 122.47 122.86
60 123.24 123.62 124.01 124.39 124.77 125.16 125.54 125.92 126.31 126.69
70 127.07 127.45 127.84 128.22 128.6 128.98 129.37 129.76 130.13 130.51
80 130.89 131.27 131.66 132.04 132.42 132.8 133.18 133.56 133.94 134.32
90 134.7 135.08 135.46 135.84 136.22 136.6 136.98 137.37 137.74 138.12

°C 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
100 138.5 138.88 139.26 139.64 140.02 140.4 140.77 141.15 141.53 141.91
110 142.29 142.66 143.04 143.42 143.8 144.18 144.55 144.93 145.31 145.68
120 146.06 146.44 146.82 147.19 147.57 147.94 148.32 148.70 149.07 149.44
130 149.82 150.2 150.7 150.95 151.33 151.7 152.08 152.45 152.83 153.2
140 153.7 153.95 154.32 154.7 155.07 155.45 155.82 155.6 156.57 156.94
140 153.7 153.95 154.32 154.7 155.07 155.45 155.82 155.6 156.57 156.94

°C 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
150 157.32 157.69 170.06 170.44 170.81 159.18 159.56 159.93 160.3 160.67
160 161.04 161.42/td> 161.79 162.16 162.53 162.9 163.28 163.65 164.02 164.39
170 164.76 165.13 165.5 165.88 166.24 166.62 166.99 167.32 167.74 168.1
180 172.17 172.53 172.9 173.27 173.64 174 174.37 174.74 175.11 175.48
190 172.16 172.53 172.9 173.27 173.64 174 174.37 174.74 175.11 175.48

°C 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
200 175.84

**抵抗と温度の関係を示したRTD PT100の表。

図1. この2線式接続の精度はRTDに直列に抵抗が加わり、その影響を受けます。

図1. この2線式接続の精度はRTDに直列に抵抗が加わり、その影響を受けます。

図2. RTDに3番目の線を加えると、線の抵抗の補償が可能です。この唯一の制限は、メインの2線が同じ特性を備えなければならないことです。

図2. RTDに3番目の線を加えると、線の抵抗の補償が可能です。この唯一の制限は、メインの2線が同じ特性を備えなければならないことです。

図3. ケルビン検出を可能とする4線式接続では2つの接続線の電圧降下の影響が排除されます。

図3. ケルビン検出を可能とする4線式接続では2つの接続線の電圧降下の影響が排除されます。

PT100 RTDの測定アプリケーションには2線式、3線式、および4線式のいずれの接続も可能です(図1、2、および3)。PT100 RTDの非線形性を補償するために幾つかのアナログおよびディジタル的な方法があります。例えば、ディジタル線形化はルックアップ表または先に述べた一般式を使って実装可能です。

マイクロプロセッサのメモリにルックアップ表を置くことによって、アプリケーションが(補間を使って)測定したPT100抵抗を、対応する線形化した温度に変換します。他方、前述の一般式を使うと、実際の測定されたRTD抵抗に基づいて、温度値をじかに計算することができます。

ルックアップ表の抵抗/温度値の数は、必要とする精度と使用可能なメモリ量で決定されるため、制限があります。個々の温度を計算するためには、最初に2つの最も近い抵抗値(RTDの測定値の上下)を特定して、その間を補間しなければなりません。

例として、測定された抵抗値が109.73Ωとします。ルックアップ表が10℃の分解能であったとすると、最も近い2つの値は107.79Ω (20℃)と111.67Ω (30℃)です。これらの3つの値を用いて補間すると次のようになります。

Equations

このディジタル方式はマイクロプロセッサ(µP)を使用する必要がありますが、図4の小規模の回路を使うと、アナログ方式で正確なリニアライズ補償が行われます。この回路は-100℃で0.97V、200℃で2.97Vが得られます。例えば、-100℃で-100mVから~200℃で200mVの出力範囲とするためには、ゲイン調整(スパン)とレベルシフト(オフセット)を加える必要があります。

図4. このアナログ回路によってRTD出力をリニアライズ

図4. このアナログ回路によってRTD出力をリニアライズ

図5はPT100の生出力とy = ax + bの形式による直線近似を示し、図6は回路による線形化出力と直線近似が示されています。各図は、図4の回路から計算した出力と比較して、温度と抵抗の計算された関係を示しています。図7と8の図はアナログ補償の前と後のPT100の誤差を示しています。

Equations

図5. 正規化したPT100の元の出力とその出力に対する直線近似。

図5. 正規化したPT100の元の出力とその出力に対する直線近似。

図5. 正規化したPT100の元の出力とその出力に対する直線近似。

図6. アナログ補償した出力と出力の直線近似であり、線形化の後の誤差を示しています。

図6. アナログ補償した出力と出力の直線近似であり、線形化の後の誤差を示しています。

図7. 正規化した誤差であり、生のPT100出力と、PT100の温度と抵抗の間の直線近似との偏差を表しています。

図7. 正規化した誤差であり、生のPT100出力と、PT100の温度と抵抗の間の直線近似との偏差を表しています。

図8. 正規化した誤差であり、図4の線形化された出力と、PT100の温度と抵抗の関係の直線近似との偏差を表しています。図7と図8の曲線を正規化することによって、図4の回路の性能を評価することが容易になります。.

図8. 正規化した誤差であり、図4の線形化された出力と、PT100の温度と抵抗の関係の直線近似との偏差を表しています。図7と図8の曲線を正規化することによって、図4の回路の性能を評価することが容易になります。

アナログ温度計を校正する場合、製造および校正の間は、調整を最小限にし、測定を管理することが常に望ましいと言えます。通常は、PT100の2つの値でオフセットとスパンのみを調整することが最良です。しかし、この方法はPT100の抵抗と温度の間に線形関係があることが必要で、この場合はそうではありません。

上に述べた計算からアナログ補償によって、PT100の誤差をおよそ80分の1に小さくすることできますが、これは伝達関数がPT100の値と測定温度の間で線形相関であることが前提です。さらに、PT100が低消費電力(0.2mW~0.6mW)であるため、自己発熱は最小です。このように、アナログ方式のリニアライズされたPT100の信号は、例えば±200mVのパネルメータに、ソフトウェアに負荷をかけずに容易に接続することができます。

図9. ディジタル方式:µPの制御により、ADCがRTD出力をディジタルに変換します。その後、µPはルックアップ表を使って対応する温度を計算します。

図9. ディジタル方式:µPの制御により、ADCがRTD出力をディジタルに変換します。その後、µPはルックアップ表を使って対応する温度を計算します。

ディジタル方式の例(図9)にはRTD、差動アンプ、電流源、およびµP (図示されていません)制御のADCで構成されます。温度測定は1mA~2mAの電流をセンサに流して、その両端間に生じた電圧降下を測定することによって行われます。電流が大きいとセンサの電力消費が大きくなり、その結果、自己発熱によって測定誤差が生じます。内蔵の4.096Vリファレンスがセンサ用の励起電流の発生を簡単にしています。

接続線の抵抗が測定精度に影響することを避けるために、4つの分離した線でRTDを差動アンプに接続します。センス線はアンプのハイインピーダンス入力に接続されるため、流れる電流派大変小さく実質上電圧降下は生じません。4096mVのリファレンスと3.3kΩの帰還抵抗によって励起電流はおよそ4096mV/3.3kΩ = 1.24mAに設定されます。このように同じリファレンス電圧でADCおよび電流源を駆動するため、レシオメトリックな測定が行われて、リファレンスがドリフトしても変換結果には影響しません。

MAX197の入力レンジを0V~5Vに構成して、差動アンプのゲインを10に設定すると、400Ωまでの抵抗値の測定が可能となり、それはおよそ+800℃に相当します。µPはセンサ信号を線形化するためにルックアップ表を使うことができます。システムを校正するためには、RTDを2つの精密抵抗(0℃用に100Ω、フルスパン用に300Ω以上)に置き換えて、変換結果を格納します。

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