要約
携帯機器に対するエンドユーザの満足度(または不満足度)は、多くの場合、バッテリの性能に左右されます。
バッテリ性能の主な測定基準は、もちろんバッテリ寿命です。表面上、バッテリ寿命は単純な仕様ですが、実際には、多くの要素が含まれています。これらには、システム負荷の性質(最大負荷電流、その部分電流、またはマイクロアンペアだけを使って消費する時間の程度)、電源効率、システムパワーマネージメント、バッテリタイプ、および充電方法があります。
これらの性能特性は個々に重要ですが、これらの特性がどの様に相互作用するかによって、エンドユーザに良い印象を残すかどうかが決まります。一般的に、ユーザがバッテリを意識するようになるのは良くないことです!最良の製品は、電池の交換頻度(例えばTVのリモコン)または充電が少なくて済む、またはあまり苦にならない充電(電気歯ブラシ)のようにバッテリを「意識させない」のです。最も避けなければならない状況は、ユーザがその製品の機能と同じくらい、バッテリのことを考えることです。
バッテリの種類の選択
製品設計においてよく軽視される課題として、バッテリとシステム間の相互作用があります。バッテリの強さをシステムの要求にマッチさせることが重要です。携帯電子機器の最も一般的なバッテリタイプは、アルカリ、ニッケル水素(NiNH)、およびリチウムイオン(Li+)です。これらの間に、互換性はありません。ほとんどの製品には、最も適した1つの「選択」があります。
非充電型:アルカリ
アルカリ電池は非充電型(深夜TV広告の宣伝文句にもかかわらず)ですが、自己放電が非常に少なく実装コストが安いことで優れています。(充電器またはAC電源ジャックが不要です。)電力要求が低ければアルカリ電池を選択することが最良ですが、これらのバッテリを適正に使うためには、静止負荷、またはスリープ電流を絶対に減少させなければなりません。
最もよくある設計の間違いは、「オフ」または「スリープ」電流を無視して、動作効率のみ考慮することです。マイクロアンペア単位の電流を10秒間無駄にするだけでも電池を消耗させて、断続的に使用する製品でも電池を頻繁に交換することが必要になります。皮肉にも、この設計ミスは数年前よりも現在の方が多く見られます。その理由は、完全にバッテリを非接続にするのに使用する機械的なスイッチがソフトウェアスイッチに置き換えられたためです。
再充電可能:NiMHおよびLi+
アルカリ電池で動作負荷が大きすぎる場合、またはバッテリの交換が頻繁すぎる場合、再充電可能なバッテリが好ましいことになります。これは、ノートブック、PDA、および携帯電話などのポータブル機器では標準的です。困難なのは、再充電可能なバッテリを可能な限り面倒でなくすることです。このための最良の開始方法は、製品の通常の使用を補完する(または、少なくとも損なうことがない)電池を選択することです。
再充電可能なバッテリでよく使われる選択肢は2つ、ニッケル水素(NiMH)とリチウムイオン(Li+)です。
ニッケル水素のコストはリチウムイオンよりも安く、製品の通常の使い方のパターンが電池にとって過酷ではない場合に適しています。ニッケル水素電池が完全充電/放電サイクルを好むため、複雑な充電機能を組み込むことが難しい低コストの製品において特に重要なことです。これにより、ほとんどのニッケル水素電池は電動工具などのように使い切ることが多い製品に適しています。しかし、最近、低自己放電とごくわずかなメモリ効果を備える新しいクラスのニッケル水素電池が市場に現れました。これらは「ハイブリッドニッケル水素」と呼ばれ、Sanyo® Eneloop、Uniross® Hybrio®などのブランドで代表されます。このタイプのニッケル水素電池は従来のニッケル水素電池よりもはるかに長く充電を維持し、1年でわずか充電の15%しか失わないのが通常です。低自己放電によりハイブリッドニッケル水素電池は、電池が使い果たされると装置から取り外して外部の充電器で充電されるようなアプリケーションにおいてアルカリ電池の「代替」として最適となります。これはディジタルカメラでは一般的ですが、なおユーザからの注意を必要とします。
多くの携帯情報製品は、都合良くこのパターンに合いません。PDAと携帯電話は定期的に充電されますが、放電は散発的です。これらの製品はリチウムイオンバッテリで最高の性能を示します。リチウムイオンバッテリは、そのパワー対重量比の利点に加えて、自己放電が少なく、小さな予期できない充電と放電のサイクルについても問題がありません。従って、ユーザは「バッテリマネージメント」に関して努力を注ぐ必要が減り、その代わりにバッテリについてはほとんど考えることなく製品を単純に使用することになります。リチウムイオン電池はユーザが置き換えることのできない「専属」バッテリを備える製品において特に適しています。
この記事の旧版が「Portable Design」誌の2003年11月号に掲載されました。