レーザドライバMAX3735にディジタル制御抵抗器DS1859をインタフェース接続

2008年05月12日
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要約

このアプリケーションノートでは、レーザドライバMAX3735にディジタル制御抵抗器DS1859をインタフェース接続するための3つの選択肢について説明します。オペアンプを使用することで線形伝達関数を得る新しい手法について説明します。この手法では、任意の電流範囲について調整することができます。また、最小限の抵抗で、DS1859ポテンショメータに流れる電流よりも大きな電流を生成することもできます。この手法は他の製品にも応用できます。

はじめに

MAX3735レーザドライバにDS1859ディジタル制御抵抗器をインタフェース接続する場合、設計者にはいくつかの選択肢があります。最も簡単な選択肢は、DS1859の可変抵抗器をMAX3735のMODSETとAPCSETのピンにじかに接続することです。これを選択肢1と呼びます(図5)。この手法の長所は、追加部品が不要なことです。短所は、非直線性なことで、大電流で分解能が低下します。

このインタフェースについてのもう1つの選択肢は、抵抗分圧器を使用して電流制御範囲を調整することです。これを選択肢2と呼びます(図6)。選択肢1より小さな範囲でさらに優れた分解能を実現していますが、依然として非直線性の問題は残ります。

3番目の選択肢は、オペアンプを使用して電流対ポテンショメータ値の伝達関数を線形化するものです。これを選択肢3と呼びます(図7)。この3番目の手法では、より優れた分解能を得られることに加えて、任意の電流範囲に調整することができます。また、この手法では、DS1859の最小抵抗値でそのポテンショメータに流れる電流よりも大きな電流を生成することもできます。選択肢3の唯一の制限は、オプアンプの電流駆動能力です。選択肢3は、新しい手法であり、ここで、必要なすべての設計情報とともに詳細について説明します。

この記事の例は、リファレンスデザイン「HFRD-04.0: 2.7Gbps, 1310nm Small Form Factor Pluggable (SFP) Transceiver」に基づいています。これらの手法は、DS1859とMAX3735以外の多く製品にも適用することができます。

これらの3つの手法をPSPICE (図1/2/3/4)でシミュレートしました。この記事には、その回路図、シミュレーション結果、およびまとめを記載しています。

PSPICEシミュレーション結果

Figure 1. PSPICE results: Modulation current vs. potentiometer value.
図1. PSPICE結果:変調電流 対 ポテンショメータ値

Figure 2. summary: Modulation current vs. potentiometer value.
図2. まとめ:変調電流 対 ポテンショメータ値

Figure 3. PSPICE results: Photodiode current vs. potentiometer value.
図3. PSPICE結果:フォトダイオード電流 対 ポテンショメータ値

Figure 4. summary: Photodiode current vs. potentiometer value.
図4. まとめ:フォトダイオード電流 対 ポテンショメータ値

Figure 5. Option 1 schematic.
図5. 選択肢1の回路図

MAX3735 (図5)は、電流ミラーを使用して変調およびAPC設定値を生成しています。1.2Vバンドギャップリファレンスは、MODSETおよびAPCSETノードでの電圧を設定します。これらのノードにおいて接地する抵抗によって、ミラー電流が決定されます。MODSET電流は、270のミラー利得が乗算され、最終的な変調電流値が得られます。APC制御ループは、モニタフォトダイオード電流がAPCSETによって定義された値に等しくなるまで、レーザ出力をサーボ制御します。モニタフォトダイオード電流は、APCSETでの値の½です(APCSETの利得が1であると示したMAX3735のデータシートは誤りです)。

選択肢1
最も簡単なインタフェース接続の手法では、MODSETおよびAPCSETにDS1859をじかに接続します。これによって、抵抗の逆数に比例した電流が得られます。この非線形逆関数は、大電流での分解能は非常に低くなり、低電流での分解能は非常に高くなることを示します。もう1つの問題は、変調電流が、DS1859範囲の最初の10%について推奨最大値である60mAを上回ることです。これらの大電流値は、プログラミングまたはテスト中に誤って選択してしまう可能性があるため、いずれの部品にも損傷を与えないよう、またアイセーフティ(眼の安全)に危険が及ぶことのないように保証する必要があります。

これらの制限をすべて回避することができれば、この手法は最も低コストの選択肢になります。

Figure 6. Option 2 schematic, divider.
図6. 選択肢2の回路図 - 分圧器

選択肢2
この選択肢では、MODSETとAPCSETのピンに抵抗分圧器を追加します(図6)。この分圧器を流れる電流の合計が最小電流値を決めます。上側の抵抗(R1とR5)の値は、最大電流値を決めます。これらの値を適切に選択することによって、電流の範囲を制限することが可能で、また対象範囲内でより大きな分解能が得られます。これらの抵抗器の影響は、相互に依存するものであり、また可変抵抗器の値にも依存します。この選択肢の設計手法の詳細については、HFAN-02.3.3 「Optimizing the Resolution of Laser Driver Current Settings Using a Linear Digital Potentiometer」を参照してください。

Figure 7. Option 3 schematic, Op Amp circuit.
図7. 選択肢3の回路図 - オペアンプ回路

選択肢3
選択肢1および2では、ポテンショメータ全体の電流は1/Rに比例します。この逆関数が非直線性の問題の原因です。ポテンショメータをオペアンプのフィードバックループに配置した場合、利得はポテンショメータ値の一次関数になります。このオペアンプがこの線形利得だけリファレンス電圧を増幅した場合、オペアンプの出力電圧もポテンショメータ値の一次関数になります。この電圧を使用して、ポテンショメータ値の一次関数となる電流を生成することができます。いったんRの一次関数となる電流が得られると、1/Rの非直線性の問題はすべて解消されます。

回路(図7)の動作は、以下のように理解することができます(リファレンス設計はMODSETの例の場合です)。R1およびR2は、オペアンプU3の非反転入力端のリファレンス電圧を生成します(例では0.2V)。この分圧器を流れる電流は、MODSET電流にも寄与するため、設計式で明らかにする必要があります。リファレンス電圧にオペアンプの利得が乗算され1 + Rds1859/R3となります。R4を流れる電流は、MODSETでの電圧(1.2V)からオペアンプ出力の電圧を減算し、R4の値で割ることによって求められます。

選択肢3の設計
以下の項では、MODSETとAPCSETのオペアンプ回路を設計するために必要なすべての式を示します。これらの式を使用することができるようになるには、以下の技術的な決定を行う必要があります。

オペアンプの選択
オペアンプは、優れたDC性能を備えると同時に小型で安価でなければなりません。SC70パッケージのMAX4245シングルオペアンプおよびSOT23パッケージのMAX4246デュアルオペアンプはこの要件を満たします。これらのオペアンプは、入力オフセット電圧が1.5mV (max)、入力オフセット電流が6nA (max)、およびバイアス電流が50nA (max)です。

オペアンプの非反転入力端子の電圧
この電圧は、オペアンプのオフセット電圧の影響を最小限に抑えるために十分に大きくなければなりません。上記の回路についてのPSPICEのワーストケースの解析は100mVを上回る値を示していますが、これは十分な値です。この例では200mVを選択しています。

最大および最小の電流範囲
MODSETおよびAPCSETについて希望する電流範囲を決定する必要があります。この電流範囲は、初期の許容誤差、温度、およびすべての部品の経年変化の影響に対応することができるよう十分に広くなければなりません。この例での値は、HFRD-04.0リファレンスデザインの値とよく似た値になるように選択しています。

電圧分圧器の上部の抵抗値
電圧分圧器の上部の抵抗R1とR5は、分圧器の電流がMODSETまたはAPCSETで所望の最小電流値未満になるように十分に大きくする必要があります。この例で選択した49.4Kの値によって20µAの電流が得られますが、これは必須最小電流値を十分に下回っています。

一度上記が決定すれば、結果を以下の式に挿入して残りの抵抗値を得ます。式で得られる値は、たいてい標準値に一致しないため、近い値を選択します。最初に戻り、実際の抵抗値を使用して、回路を再計算、シミュレート、または構築して、所望の電流範囲が得られることを確認します。これらの設計は、あらゆる電子回路と同様、生産に移る前に十分にテストする必要があります。

付録 - Option 3 Mod Design Calculations

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