短距離UHF ASK変調トランスミッタに関するFCCおよびETSIの要件

2006年07月09日

要約

リモートキーレスエントリ(RKE)、ホームオートメーション、ホームセキュリティ、および短距離デバイス(short-range device:SRD)を必要とするその他のアプリケーションに使用される、免許不要のトランスミッタから意図的または非意図的に放射される電力に関しては、行政機関による規制が存在します。これらの規制は、それぞれの国や地域の監督官庁によって制定されます。市場に対する影響の規模を基準にしたとき、最も大きな影響力を持つ2つの官庁は、米国のFCCとヨーロッパのETSIです。

このアプリケーションノートでは、315MHzと433.92MHzを含むISM帯の振幅偏移変調(amplitude-shift-keyed、ASK)トランスミッタに適用される、FCCおよびETSIの放射規制値について説明します。それらの規制値に対する適合性を示すために必要となる具体的なテスト、およびテスト結果に影響する可能性のあるテストパラメータについても、すべて検討します。ASK変調スペクトルの計算値と実測値、およびMAX1472 ASKトランスミッタからの送信波を測定したスペクトルアナライザの記録は、これらのテストに合格するために必要な条件を示しています。

はじめに

米国のFCCとヨーロッパのETSIは、両者ともに、リモートキーレスエントリ(RKE)、ホームオートメーション、ホームセキュリティ、およびその他の無線制御デバイスに使用される免許不要のトランスミッタの放射電力レベルに関する規制値を指定しています。この電力規制値は、これらのデバイスからの意図的な送信波と意図的でない(またはスプリアス)送信波の両方に適用されます。これらの規制値に付随する形で、あるデバイスからの放射が定められたガイドラインの範囲内か否かを判定するためのテスト手順も示されています。テスト機器の設定とトランスミッタの放射特性との関係が、テスト結果(合格か不合格か)にとって非常に重要になります。

このアプリケーションノートでは、振幅偏移変調(ASK)信号の変調スペクトル、トランスミッタの位相ノイズ、およびトランスミッタVCOの過渡周波数引込みのすべてについて、それらがテストの合否にどのように影響するかを示します。

ASK変調のスペクトル

ASK変調のスペクトルを理解する方法の1つは、まず周期的な方形波によるRFキャリア波の変調を出発点として、次にデータストリームのランダムな性質を反映させてスペクトル線に「スミアさせる」というものです。

最初に、図1に示す周期2Tの方形波を、データ速度1/Tの1010...という非ゼロ復帰(non-return-to-zero:NRZ)データシーケンスだと考えます。この方形波の電力スペクトルを、図2に示します。ここでは、キャリア周波数f0をゼロ周波数としています。この場合、f0はキャリア波の線(これを1に正規化してあります)と、(1/2T)の奇数倍の線で構成されます。キャリア(ゼロ周波数)の線における電力に対する、それぞれの線における電力の比率は、次のように定義されます。

3587eq01

3587Fig01

図1. 周期2Tの方形波

3587Fig02

図2. 周期2Tの方形波の電力スペクトル

ASK変調されるのが本当のデータのときは、データのランダム性が原因となって、電力スペクトルのそれぞれの線にスミアが生じて、半正弦波のサイクルになります。キャリア周波数でのスペクトル密度に正規化したスペクトルの数学的表現は、次の通りです。

3587eq02

キャリア周波数でのスペクトル密度に対する、各サイドローブにおけるスペクトル密度のピークの比率は、この場合もやはり式1で与えられます。

図3に、4kHzの方形波で変調されたMAX1472 ASKトランスミッタのスペクトルを示します。これは、8kbpsのデータレートに相当します。サイドローブのピークが、(データレートの半分である) 4kHzの奇数倍に位置していることに注意してください。

3587Fig03

図3. 4kHz変調時のMAX1472 ASKトランスミッタのスペクトル

ASK変調された信号のキャリア線(ローブ)の電力と、変調されていない(CW)キャリアの電力との関係に注意してください。これが重要なのは、FCCとETSIの規制が相対的な電力に適用される場合と絶対電力に適用される場合があるからです。トランスミッタが一様な(変調されていない)POWのキャリアを放射し、次に50%デューティサイクルのASKデータストリームによって変調された場合、放射される電力の合計は半分、すなわちPO/2になります。さらに、変調によってそれらすべての側帯波が生成されるため、スペクトルの中心(キャリア)ローブに含まれるのはASK変調信号の電力の半分だけです。その結果、トランスミッタで利用可能なCW電力との比較で変調サイドローブの電力を語る場合、式1の電力比(ASK変調されたキャリアのキャリアスペクトルローブに含まれる電力に対するCW電力の比)をさらに6dB減少できます。

例を上げると、無変調時に10mWのキャリア電力を放射する315MHzのトランスミッタは、ASK変調時には5mWの出力だけを放射します。その5mWの内、2.5mWはキャリアローブに含まれ、残りの2.5mWがサイドローブ間に分配されます。したがって、データレート8kbpsの場合(式1参照)、101番目のサイドローブ(キャリアから404kHz)の電力は次のようになります。

3587eq03

サイドローブの電力は、ASK変調された信号のキャリアローブにおける電力より44dB低いだけでなく、変調されていないCWキャリアの電力より50dB低い値にもなっているという点に注目してください。

ASKトランスミッタに関するFCCの要件

放射帯域幅


FCC Section 15.231(c)1では、意図的な送信の放射帯域幅は中心周波数の0.25%より広くしてはならないと規定しています。この場合の放射帯域幅は、放射スペクトル中において変調キャリアより20dB低い2点によって決定されます。260MHz~470MHzの免許不要バンドの中で最も多用される2つの周波数である315MHzと433.92MHzの場合、許容される最大の帯域幅は787.5kHz (±394kHz)と1.085MHz (±542kHz)になります。

ASKスペクトル中の電力に関する上記の公式から、キャリア周波数ローブの電力より少なくとも20dB低い電力のサイドローブを決定することによって、ASK変調された信号の20dB帯域幅を容易に予測できます。式1によると、7次のサイドローブ電力はキャリア周波数ローブ電力より20.8dB低くなります。したがって、20dBの帯域幅はデータレートの半分の±7倍になるはずです。データレートが10kbpsの場合、20dBの放射帯域幅はわずか70kHzということになります。キャリアから500kHz (0.25%という帯域幅制限の一方の側にほぼ相当する位置)では、10kbpsのスペクトルはキャリア周波数ローブより44dB低くなります。

実際には、次の3つの理由から、測定される20dBの帯域幅はこれらの計算値より大きく、500kHz離れたスペクトル高は計算値より高くなります。

  1. FCCは、測定機器の分解能帯域幅が変調のサイドローブより広いことを求めている。
  2. シンセサイザ発振器からの位相ノイズによってサイドローブの電力が増大する。
  3. ASK変調がVCOをわずかに引き込むことで過渡的な周波数成分を生じ、それが測定値に現れる。

FCCの測定帯域幅(すなわち測定装置の帯域幅設定)は、決定が容易ではなく、例外も存在します。FCC Section 15.231(b)(2)はFCC Section 15.205を参照しており、それがFCC Section 15.35を参照し、それが最終的にCISPR Publication 16を参照しています。CISPR-16は、1GHz以下の放射に対する測定帯域幅を、準尖頭値(quasi-peak、)検波器を使用する場合は120kHz、ピーク検波機能を備えたスペクトルアナライザを使用する場合は100kHzとしています。数kbpsのデータレートの場合、これは放射帯域幅を判定するには大きな測定帯域幅であるように思われます。

幸いFCCの測定帯域幅には、より狭い、より現実的な仕様が存在します。これはどの文献にも記載されていませんが、適合検査を行う会社はこの仕様を知っており、FCCのWebサイトにあるOffice of Engineering and Technologyというページで調べれば確認できます。このあまり知られていない仕様では、測定帯域幅は許容される20dBの放射帯域幅の少なくとも1%でなければならないと定めています。したがって、315MHzの信号の場合、787.5kHzという帯域幅の1%は大体8kHzですから、スペクトルアナライザの帯域幅を10kHzに設定すれば条件を満たすことができます。433.92MHzの信号の場合、1.085MHzの1%は10kHzをわずかに上回ります。したがって、スペクトルアナライザを10kHzの1段階上の30kHzに設定しなければなりません。いずれの信号の場合も(315MHzでも433.92MHzでも)、測定帯域幅は100kHzより小さくなります。

PLLトランスミッタの位相ノイズのスペクトル密度は、メーカーによって大きく異なる可能性があります。マキシムのRF CMOSトランスミッタシリーズの位相ノイズ密度は、キャリアから500kHzで測定したとき-85dBc/Hz~-90dBc/Hzの範囲になります。これは、100kHzという最大のFCC帯域幅で測定される位相ノイズが、キャリアから500kHzでキャリア電力より少なくとも35dB低くなることを意味します。低いデータレートにおける理論上のサイドローブ電力レベルは、キャリアから500kHzで測定したときキャリアローブ電力より35dB以上低くなりますが、位相ノイズの存在によって、変調スペクトルの実測値はこれよりも大きくなります。

広い測定帯域幅(100kHzなど)を使用する場合、ASK変調による過渡的なVCOの引込みによって、スペクトル高の実測値が5dB大きくなる可能性があります。こうした過渡現象は数マイクロ秒しか存在しませんが、「マックスホールド」機能を備えた広い分解能のフィルタによって検出される可能性があります。フィルタ分解能帯域幅を30kHz以下に狭めると、この現象によるスペクトル測定値への影響が劇的に除去されます。

FCCが要求するピーク検出器、または「マックスホールド」の設定によって、これら3つの要素の電力測定値が10dB増大する可能性があります。したがって、理論上の変調スペクトルが実際には35dB~55dB低いにも関わらず、放射帯域幅の測定結果として、キャリアから500kHzでキャリア電力より20dB~25dBだけしか低くないスペクトルが示される場合も考えられます。理論上のスペクトルと測定値の間のこの大きな差によって、高いデータレートにおいてFCCのテストに合格する上で問題が生じる恐れがあります。FCCは、すべての要素によるスペクトルがキャリアから大体500kHzにおいてキャリアローブ電力より20dBだけ低くなることを要求しているからです。表1に、ASK変調のキャリアから500kHz離れた側波帯の理論上のスペクトル高を各データレートについて示します。また、100kHz、30kHz、および10kHzの各帯域幅で測定されると思われる電力も示しています。

表1. FCC放射帯域幅測定に関するASK側波帯の理論的電力レベル
Data Rate (kbps) Sideband Number at 500kHz Sideband (dBc) dBc in 100kHz BW dBc in 30kHz BW dBc in 10kHz BW
2 501 -58 -41 -46 -51
4 251 -52 -38 -43 -48
8 126 -46 -35 -40 -45
10 101 -44 -34 -39 -44
20 51 -38 -31 -36 -41
100 11 -25 -25 -28 -32

図4および5に、MAX1472 ASKトランスミッタICについて、100kHzと30kHzの帯域幅を使って測定した、データレート19.2kbpsで変調されたスペクトルの測定値を示します。これらの計算上のレベルと実測されたレベルとの差は、位相ノイズの寄与、過渡的なVCO引込み、および「ピークホールド」測定手法に起因するものです。30kHzの分解能帯域を使うことで電力の測定値が-25dBcから-30dBcに下がり、放射帯域幅の要件を満たすためのマージンが増えることに注意してください。

3587Fig04

図4. 100kHzの分解能帯域幅を使ってFCCの放射帯域幅テスト用に測定した9.6kHzの方形波で変調されたMAX1472のスペクトル

3587Fig05

図5. 30kHzの分解能帯域幅を使ってFCCの放射帯域幅テスト用に測定した9.6kHzの方形波で変調されたMAX1472のスペクトル

スプリアス放射


FCC Section 15.231(b)(3)は、スプリアス放射の電界強度が、そのセクション中の表で示されている所定のレベルに維持されなければならないと規定しています。この表は、キャリア周波数における意図的な送信と、放射帯域外のスプリアス送信とに上限を設けています。これらスプリアスの電界強度のレベルは、意図的な送信レベルの最大許容値より20dB低くなっています。すなわち、仮にトランスミッタが最大許容レベルを放射しているとすると、放射帯域幅の外部で放射されるものはすべてキャリアの電力レベルより20dB以上低くなければならないということです。これは、最大電力が放射されている場合に20dBの放射帯域幅の要件と都合良く一致します。スプリアス放射は、CISPR-16に従って準尖頭値(quasi-peak、)検波器で測定するか、またはピーク検波器を使ってスペクトルアナライザで測定します。このプロセスは、スペクトルアナライザの帯域幅が100kHzであるという点を除いて、放射帯域幅の測定とほとんど同じです。

トランスミッタが最大許容電力で放射していない場合でも、スプリアス放射の最大レベルはやはり表で定義されている絶対電界強度のままだという点に注意してください。この場合、スプリアス放射は放射帯域幅の外部において意図的に放射される電力より20dBも低い値である必要はないかも知れません。

ASKトランスミッタに関するETSIの要件

ヨーロッパでは、433.05MHz~434.79MHzの帯域において最高+10dBmの送信信号が認められています。ETSI EN 300 220-1仕様に適合する第一の目標は、すべての帯域外放射を250nW(-36dBm)以下に、470MHz~862MHzの領域では4nW(-54dBm)以下に抑えることです。433MHz帯において「帯域外」という言葉は、433.05MHzから434.7MHzまでの1.74MHzのスペクトルの外部のすべての周波数を意味します。433.92MHzが選択されたのは、この帯域の中心だからです。このキャリア周波数に対して、±870kHz以上離れた放射はすべて「帯域外」です。この-36dBmの規制を受ける放射には、2種類のカテゴリーがあります。第1のカテゴリーは、信号の変調側波帯の中で±870kHzの範囲外に位置するものです。第2のカテゴリーは、スプリアス放射です。


変調側波帯


上記の式1から式3を使って、表2を作成することができます。これは表1に似ていますが、キャリアからの距離としてFCCの要件では約500kHzが使用されていたのに対し、この表では870kHzになっている点が異なります。

表2. ETSI変調側波帯測定に関するASK側波帯の理論的電力レベル
Data Rate (kbps) Sideband Number at 870kHz Sideband (dBc) Min. Meas. Res. BW (kHz) dBc in Meas. BW
2 871 -63 3 -61
4 435 -57 10 -53
8 219 -51 10 -50
10 175 -49 10 -49
20 87 -43 30 -41
100 19 -29 100 -29

図3は、データレート8kpbsの場合、各側波帯の中心が4kHzの奇数倍の位置になることを示しています。したがって、4kHzの第219次高調波による側波帯が、キャリアから870kHz以上離れた最初の完全な側波帯になり、この側波帯の送電力が-36dBm以下でなければなりません。表2によると、第219次側波帯の電力はキャリアローブのスペクトル高より51dB低くなっており、これは-36dBmの制限より十分に低いように思えます。無変調のキャリアで測定される送信電力には+10dBmという規制値が適用されるため(ETSI EN 300 220-1、Section 8.2)、側波帯の電力は実際には無変調のキャリアの電力より57dB低く、さらに条件が良くなります。トランスミッタが+10dBの最大許容電力で放射を行っている場合、側波帯の電力の計算値は-47dBmであり、-36dBmという要件より11dB低くなります。FCCの規制と同様、トランスミッタの位相ノイズのレベルとこの電力を測定する手法の相乗効果で、電力レベルの測定値は理論値よりも大きくなります。

ETSI EN 300 220-1、Section 8.6は、この変調およびその測定について取り上げています。測定方法の指示では、レシーバ(またはスペクトルアナライザ)の帯域には主要な変調側波帯をすべて受け入れるだけの十分な大きさが必要であり、電力測定はピーク電力で行う(スペクトルアナライザを「マックスホールド」に設定する)と書かれています。標準的なスペクトルアナライザの帯域幅設定は1kHz、3kHz、10kHz、等であり、図2と図3から、キャリアローブと2つの基本周波数側波帯をカバーするためには少なくとも10kHzの帯域幅が必要であることがわかります。10kHzという帯域幅には、1つの側波帯(null点間8kHz)の全電力に加えて、隣接する側波帯の電力がわずかに含まれることになり、そのため測定値は1つの側波帯に含まれるよりも約1dB大きな値(すなわち-46dBm)になります。ピーク電力の測定値は平均電力より最大10dB高くなる可能性があるため、それによって電力の測定値が-36dBmに高まり、ちょうどETSIの規制値と一致することになります。測定ラボによっては、8kbpsデータレートからの主要な変調側波帯をすべて受け入れるために、30kHzの分解能帯域の使用を主張するかも知れませんが、その場合は測定値が-31dBmに上昇します。これでは明らかにETSIの規制値を超えてしまうため、10kHzの帯域幅を維持するためにデータレートを下げる必要があります。安全なデータレートは5kpbsであり、この場合3つすべてのローブが10kHz以内に入ることが保証されます。変調パルスをシェーピングして、より高いデータレートを実現することも可能です。変調パルスのシェーピングによって高次の変調側波帯における電力が大幅に低下するため、より高い測定帯域幅を使用しても帯域辺縁部での電力ははるかに低くなります。

データレートが低いほど、ETSIの規制に適合しやすくなります。図6に、1.5kHzの方形波でASK変調した433.92MHz +10dBmのキャリアを434.79MHz(ゼロスキャン)において3kHzの帯域幅で測定したスペクトルアナライザのトレースを示します。これは、3kbpsのデータレートと等価です。このトレースのピーク振幅は約-45dBm、すなわち+10dBmのキャリアに対して-55dBcです。この値は、キャリアから870kHzに位置する581次の変調側波帯における電力の計算値、すなわち+10dBmに対して-65dBc、あるいはピーク検波器から10dB増の-55dBmと一致します。仮に10kHzの帯域幅を使用したとしても、変調がETSIの規制値を満足することになります。

3587fig06a

図6. 3kbps ASK変調キャリアの434.79MHz変調側波帯で測定した電力(キャリア周波数は433.92MHz)

これらの計算および実測データは、ヨーロッパの434MHz帯で最大許容電力を放射するためには5kbps以上のデータレートでパルスシェーピングが必要になることを示しています。この測定の分解能帯域幅は100kHzよりはるかに小さいため、このテストではASK変調によるVCO過渡的引込みの影響によって実測電力が増大することはありません。

ETSI 300 220-1の改訂案(既存のVersion 1.3.1に対し、Version 2.1.1となる予定)では、振幅およびASK変調信号に対してはるかに厳しい制限が課されます。側波帯の構造を問わず、この測定には100kHzの分解能帯域が要求されるようです。現時点では、これはまだ採択されていません。もし採択された場合でも、発効するのはその2~3年後になります。


スプリアス放射


ETSI 300 220-1のSection 8.7では、スプリアス放射を、通常のテスト変調に伴うキャリアと側波帯の周波数以外の周波数における放射と定義しています。この測定は、意図しないミキサ成分やクロック高調波の検出を目的としたものであり、キャリアを変調した結果のスペクトル高を調べるためのものではありません。測定は可能な限り無変調のキャリアで行うため、変調側波帯は問題になりません。この測定では、測定帯域内のトランスミッタ位相ノイズの電力レベルを考慮する必要があります。

433.05MHz~434.79MHzの帯域外での放射が許される最大の電力は-36dBmです。ただし470MHz~862MHzの領域は例外であり、規制値が-54dBmになります。電力の測定方法は、Section 8.6の変調側波帯の場合とは異なります。電力の測定値は、100kHzの帯域における電力の平均値です。すなわち、キャリアから870kHz以上離れた位置では、ノイズに類する信号(位相ノイズなど)の放射電力密度が-86dBm/Hz (-36dBmを帯域幅の100kHzで割った値)より高くなってはいけません。トランスミッタのCW電力を+10dBmとすると、トランスミッタの位相ノイズ密度は-96dBc/Hz (-86dBm/Hzを無変調キャリアの+10dBmで割った値)より低い値であることが必要です。

MAX1472とMAX7044の位相ノイズのスペクトル密度は約-91dBc/Hzであるため、これらのデバイスが完全に+10dBmのCW電力を放射すると、ETSIの要件を5dB超過してしまいます。これらのデバイスは、ETSIの要件に抵触しない低電力(+5dBm)動作が可能です。MAX1479の位相ノイズのスペクトル密度はキャリアから870kHzの位置で-98dBc/Hzであるため、ETSIによって認められた完全な+10dBmの電力レベルでの動作が可能です。470MHz~862MHzの範囲における-54dBmという要件は、位相ノイズ密度-114dBc/Hzに相当します。すべてのマキシム製トランスミッタは、この電力レベルに適合しています。この条件が要求される領域の下限周波数(470MHz)はキャリアから非常に離れているため、放射されるノイズはトランスミッタのサーマルノイズフロアに由来するものだけになるからです。

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