Industria Italianaが、工業用オートメーション、インダストリ4.0、そして未来の工場に備える方法について、アナログ・デバイセズのリージョナル・セールス・マネージャMarco La Ciaceraとゼネラル・マネージャBrendan O’Dowdにインタビューしました。
インダストリアルIoT(モノのインターネット)という新たなシナリオに向き合うことは、アナログ・デバイセズにとって何を意味するのでしょうか?
インダストリアルIoT(IIoT)を実現するというのは、既存のシステムやプロセスをより高速に、より効率的に、あるいはより正確にするという問題ではありません。IIoTを実現するには、全く新しい、従来と異なる技術を採用する必要があります。状態基準保全(CbM)などの機能や、自律走行車あるいは協働ロボットといったシステムは、これまでの工場には見られなかったものですが、IIoTの中核的な要素です。
工場業務をデジタル化し接続することによって、IIoTは、これまで必要とされなかった安全のための装置やプロセス、そしてデータ・セキュリティについて、新たな条件を数多く提起しました。
アナログ・デバイセズは1965年の創業以来、一貫して検出、測定、変換、接続、電源、セキュリティといったアナログ/デジタル変換技術の開発に取り組んできました。これらの能力は、IIoTを実現しようとするお客様の求める条件にまさしく一致します。
IIoTというパラダイムによって呼び起こされる新世代の工業用オートメーション・インフラストラクチャの創造に、アナログ・デバイセズはどのような形で貢献できるのでしょうか?
アナログ・デバイセズは、ありふれた半導体企業ではありません。半導体技術の境界を越えて、ソフトウェアやシステムに関する高度な専門技術、そしてその主要市場におけるドメイン知識のために多額の投資を行っています。これにより、お客様がシステムレベルで課題を解決し、成功を収める最良の方法を探すための支援を可能にしています。
この能力は、アナログ・デバイセズ独自の構造に反映されています。アナログ・デバイセズの組織は製品ラインに沿った一般的な編成ではなく、お客様に関わるすべてのスタッフが技術とマーケティングの2種類の部門のどちらかに所属するようにしています。
- 技術部門は、信号処理、センシング、パワー・マネージメントなどの技術に関して、ワールドクラスの知識と経験を備えています。
- マーケット部門は、CbMやロボティクスといったアプリケーションにおけるお客様の要求をシステムレベルで捉えることで、アナログ・デバイセズとそのパートナーが提供する製品とシステムを効果的なソリューションに統合しようとするお客様を支援します。
これは、産業用機械の状態基準保全、あるいは有人フォークリフトから自律走行車両への置き換えといったアプリケーションの開発と実施を通じて、アナログ・デバイセズがIIoTの実現に取り組んでいる企業の牽引役となり得ることを意味します。また、これらの産業分野の企業が、工場労働者の安全と、ネットワーク化されたデータのセキュリティを適切に確保するのを支援することもできます。これらの措置は、新しいIIoT技術の導入と密接に関連する安全対策です。
この産業分野に対しどのような展望と戦略をお持ちでしょうか?
IIoTの背景にある考え方は、一連の工程全体をデジタル化することで生産性を改善し、デジタル・データに基づいて見通しを立てるというものです。新しい技術的能力は、メーカーがファクトリ・オートメーション設備への投資から、より大きな価値を得る助けにもなります。
小型で高性能の半導体センサーの急速な普及と、それに伴うネットワーク化の広がりは、装置やプロセスの性能に関する膨大なデータを生み出しています。このため、ヘルス・モニタリングや予防保全など、データ分析用の豊富な機能を備えた新しいアプリケーションの可能性は、これまで以上に広がっています。同時に、プログラマブルなハードウェアやソフトウェア定義の電子機能が使用されるようになり、工場の工程やツールの迅速な構成変更が可能となっています。
これは、将来の工場では以下のようなことが実現されることを意味しています。
- 生産性の向上と自動化の促進
- 需要への迅速な対応
- 安全性の向上
- セキュリティの強化
アナログ・デバイセズは、センシング、高速ネットワーク接続、ソフトウェア定義I/O、データ・セキュリティ、安全システムなどの技術を提供することを通じてこれらの分野における発展を支え、お客様がそれらの技術を統合して、必要な機能を備えたシステム・ソリューションを実現することを支援します。
産業用イーサネット・ネットワークのレベルまで拡張可能な新しいインテリジェント機能には、どのようなものがあるでしょうか?
各種の工場やプロセス・プラントで使われるセンサーの数は急速に増えつつあり、それによって膨大な量のリアルタイム・データの流れが生じるようになっています。4mA~20mAの制御ループのようなセンサー・ノードとプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)間のレガシー通信プロトコルは、イーサネット・プロトコルを産業用に特化した超高速のバージョンへ移行しつつあり、工場内の運用・制御技術(OT)インフラストラクチャと企業内の情報技術(IT)のより緊密な統合化が実現されようとしています。
この工場内での高速データ転送への新しい需要に対応していく中で、OEMはそのシステム実装を将来的な需要にも対応できるものとする必要に迫られ、その結果として、PROFINET®やEtherCATといった現在使われている産業用イーサネット・プロトコルだけに止まらず、新たに出現したタイム・センシティブ・ネットワーキング(TSN)型のイーサネットもサポートするようになっています。
アナログ・デバイセズは、将来の工場では、TSNがネットワーク接続のバックボーンになると見込んでいます。現在は様々な産業用イーサネット・プロトコルが使われていますが、TSNイーサネット・プロトコルに基づいて標準化を行うことは、業界にとって大きな利点となります。ネットワーク関連の投資をより長期的な計画の一部とするのであれば、各メーカーは他の機能強化に関するロードマップと共に、TSN対応ソリューションの仕様を定める必要があります。
産業用イーサネット(および最終的にはTSN)への移行を支援するために、アナログ・デバイセズは、ハードウェアを設計し直すことなく1つのイーサネット・プロトコルから別のイーサネット・プロトコルへの切替えを可能にするイーサネット・プラットフォームを提供します。これは、様々な顧客の要求を1つのプラットフォーム製品で満たすことのできる柔軟性を、産業機器メーカーに提供します。
その上、アナログ・デバイセズの製品には既にTSN機能が含まれており、TSN標準案に新たに導入される規定に対応するため、定期的にアップグレードされています。
産業分野の企業には、工場内へのイーサネット・ネットワーク導入と並行して、データ・セキュリティについても慎重に考慮することが求められます。産業用イーサネット・ネットワークの脆弱性は、従来からの4mA~20mAシステムの脆弱性と大きく異なります。4mA~20mAノードへの攻撃によって危険にさらされるデバイスは、そのノードに直接接続されているものに限られます。これに対し、イーサネット・ノードへの攻撃は、工場のネットワーク全体をマルウェアや不正侵入の脅威にさらす可能性があります。堅牢なデータ・セキュリティ技術があれば、業務の継続性や完全性へのリスクを増大させることなく、工場が高速ネットワーク接続の利益を得られるようにすることができます。
セキュリティを最適化するには、特定のデバイスやエンド・ポイントの条件を考慮するのではなく、システムレベルのアプローチが必要です。セキュリティは、エッジ・デバイス、コントローラ、ゲートウェイの中、あるいは更にその上のスタックなど、システム全体を通じ様々な方法で実現できます。ネットワーク内の所定のポイントでどのような方法を講じるかということに焦点を当てる前に、システムの仕様決定者は、「どこで、どの程度」という問題に焦点を当てる必要があります。
このためには、消費電力、性能、および遅延に関わるトレードオフを最小限に抑えながら効果的なセキュリティを追加するという視点の下に、各ポイントにおける脅威のレベルと、その脅威に対応するためのコストを考える必要があります。階層化されたアプローチは、全体としてセキュリティに対する優れた態勢を実現します。
メーカーは、組織的な方法をとることによって、あるいはアナログ・デバイセズのようなパートナーを選ぶことによって、セキュリティに関する知識と経験を装置レベルを超えて展開できるシステムレベルのアプローチで、時間とリソースを投入することが賢明といえます。
状態基準保全:業務を停止させることなく継続するために使用できる技術には、どのようなものがあるでしょうか?
実際のところ、CbMの目標は業務を停止させないことだけではありません。最大限の効率で業務を停止させることなく継続できるようにすることを目標とすべきです。
これを実現するにあたっては、MEMSセンサー技術が極めて重要な位置を占めます。この技術は新しいセンサー・タイプの開発を可能にするものであり、振動や動作を精密に測定することができます。例えば、低ノイズで広帯域幅の加速度センサーは、装置の振動特性のごくわずかな変化を捉えるために必要な、高い精度と正確さを備えています。これらのデバイスをセンサー分析ソフトウェアと組み合わせれば、実際の故障発生よりはるか前に、故障の可能性のある箇所を装置オペレータがピンポイントで特定することが可能となります。
装置の状態監視は、従来型の工場設置だけに限られるわけではありません。モバイル型やリモート型の産業用機器は、ワイヤレス接続を使用して中央コントローラに診断情報と動作状態をレポートすることができます。バッテリ電源やソーラー・エネルギーなどの間欠的な電源を使用する場合は、消費電力が非常に小さいセンシング・ソリューションが必要です。アナログ・デバイセズは、これらのソリューションを提供することができます。