概要

設計リソース

設計/統合ファイル

  • Schematic
  • Bill of Materials
  • Gerber Files
  • Assembly Files
  • Allegro Files
設計ファイルのダウンロード 2.05 M

評価用ボード

型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。

  • EVAL-ADICUP360 ($52.97) ADuCM360 Arduino Form Factor Compatible Development System
  • EVAL-CN0409-ARDZ ($176.55) Turbidity Measurement Arduino Shield
在庫確認と購入

機能と利点

  • 0FTU~4000FTUの測定範囲
  • +/–0.5FTUのシステム精度(0FTU~1000FTU)
  • 周辺光除去

マーケット & テクノロジー

使用されている製品

回路機能とその特長

図1に示す回路は、測光用フロント・エンドおよび、波長860nmの赤外(IR)発光素子とシリコンPINフォトダイオードからなるネットワークを使用して、濁度測定システムを構成したものです。濁度は、水中に分散または浮遊し飲用水や環境条件に影響する固体の存在を示す重要な水質指標で、これらの浮遊固体が光の透過率を低下させる度合いによって示される、定性的な特性です。濁度測定では、水中の分散粒子を直接測定するのではなく、そのような粒子が光に及ぼす散乱効果を測定します。

図1. 簡略化した回路ブロック図
図1. 簡略化した回路ブロック図

このシステムでは、0FTU~1000FTUの範囲にわたる低レベルから高レベルの濁度を測定できます。IR LEDおよびフォトダイオードからなるネットワークは、一般に広く認められている2つの濁度測定規格である、ISO7027(レシオおよび非レシオ)とGLI法に対応できるように構成されています。3点キャリブレーションを行った場合、システムが実現可能な精度(代表値)は、±0.50FTUまたは指示値の±5%のいずれか大きいほうとなります。この精度は0.05FTUのノイズ・レベルを加えた値なので、このシステムで行った測定は非常に信頼できるものと言えます。

ADPD105には周辺光除去機能があるため、この回路は、高精度、堅牢、非接触の濁度測定が重要なアプリケーションに最適なものとなっています。こうしたアプリケーションには、未加工の大量の水(下水や飲用水など)の化学分析や環境モニタリングがあります。

プリント回路基板(PCB)は、Arduinoシールド互換のフォーム・ファクタで設計されており、EVAL-ADICUP360 Arduinoフォーム・ファクタ互換のプラットフォーム・ボードと直接インターフェースすることで、迅速なプロトタイピングが可能です。

回路説明

濁度測定

ほぼすべての場合に用いられる重要な水質指標は、分散した浮遊固体、つまり、純粋な溶液には存在しない粒子(多くの場合、沈泥、泥土、藻類、その他の微生物、有機物、その他の微粒子など)の存在です。濁度は、これらの浮遊固体が光の透過率を低下させる度合いによって示される、定性的な特性です。これは、水中の分散粒子を直接測定したものではなく、そのような粒子が光に及ぼす散乱効果を測定したものです。

フォトメトリック・フロント・エンド

CN-0409回路は、フル機能の光トランシーバーとして動作して2個の860nm赤外発光素子(DS1およびDS2)とシリコンPINフォトダイオード(D1とD2)を駆動する、ADPD105測光用フロント・エンドを使用しています。フォトダイオードから受信したデータは、被験溶液を透過する際に散乱されたエネルギー量の測定データです。濁度が1FTU未満の溶液は、光をほとんどあるいはまったく阻害せず、そのため、測定された散乱効果は無視できます。濁度が増加すると、浮遊固体の数も増加して光の直線ビームの妨げとなり、途中で一部のエネルギーが散乱されます。濁度と散乱光の比例関係が、ほとんどの濁度測定手法で用いられている基本原理です。

周辺光除去

ADPD105は、2つの独立したタイム・スロット、タイム・スロットAとタイム・スロットBで動作し、この両スロットが順番に実行されます。各LEDパルスは検出期間と一致しているため、検出された値は、フォトダイオードが対応するLEDパルスにのみ応答して収集した総電荷を表します。周辺光など、LEDパルスに対応しない電荷は除去されます。このADPD105の機能により、様々な照射条件下でも堅牢な回路となっています。

LEDを励起してからデータをキャプチャし、処理を実行するまでの信号パス全体が、各タイム・スロット内で順次処理されます。各タイム・スロットには個別のデータ・パスがあります。これらのデータ・パスは、LEDドライバ、アナログ・フロント・エンド(AFE)のセットアップ、結果のデータごとに、独立した設定を使用します。回路は、860nmの放射光に対応して100mAのパルスを2µsの間LEDに供給します。特定のLEDパルスに対応する電荷がフォトディテクタに蓄積され、この電荷がADPD105内でデジタル化されます。信号分解能を向上させるには、16個の連続パルスをADPD105のデジタル・エンジンで平均化します。

電力とデジタルに関する考慮事項

回路では、2つのADP7105低ドロップアウト(LDO)リニア電圧レギュレータを異なる固定電源電圧出力(1.8Vと3.3V)で使用しています。1.8Vの出力はADPD105に電力を供給し、3.3V出力はLEDをバイアスします。ADP7105は、優れたノイズ特性(15µV rms)とライン・レギュレーション(±0.015%)特性を備えていますが、これは測定サンプルごとの光強度再現性を確保する上で重要です。このような要因により、CN-0409は高速(<12秒)で高精度の濁度測定を実現しています。

濁度測定規格

国際標準化機構(ISO)は、「ISO7027水質-濁度の測定」として知られる設計規格を定めました。これは、単色光源を必要とすることでよく知られています。この規格に適合する計測器のほとんどは、860nmのLED光源と、90°の角度に置かれた主検出器を使用します。測定可能な濁度レベルの範囲を拡大するため、180°の角度に検出器を置くなど、他の検出角度を追加することもできます。

0FTU~40FTUの濁度では、90°検出器が散乱に対して最も直線性の高い応答を示します。濁度レベルが低い場合は、粒子が入射光の波長よりはるかに小さいため、対称的な散乱分布を示します。浮遊固体の数と大きさがこの範囲内で増加する場合、90°検出器は直線的に比例する量の散乱光を受光します。この方法は、1つの検出器だけを使用するため、非レシオISO7027とも呼ばれます。

図2. ISO7027非レシオ検出法
図2. ISO7027非レシオ検出法


40FTU~4000FTUの高い濁度レベルでは、非レシオ法と同じ直線性を得るために、検出器を追加する必要があります。このような種類の溶液中の大きな粒子は、非対称な光散乱分布を示すため、前方散乱光の強度が増加します。CN-0409のISO7027レシオ法では、90°検出器と180°検出器の比を使用して、理論的には最大4000FTUまでの濁度レベルを測定します。

図3. ISO7027レシオ検出法
図3. ISO7027レシオ検出法


ISO7027非レシオの実行

ADPD105は最大4個のフォトディテクタと3個のLED光源に対応できます。ISO7027非レシオ測定法を実行するため、CN-0409では、2個のIR LEDと2個のフォトディテクタを使用します。ADPD105のコア回路は、LEDを駆動し、アナログ・ブロックに戻された光強度を2個のフォトディテクタを使用して測定します。LEDは2つの異なるタイム・スロットで駆動され、これらのタイム・スロットが順次処理されます。LEDを励起してからデータをキャプチャし、処理を実行するまでの信号パス全体が、各タイム・スロット内で実行されます。これは、2個のLEDが相互に干渉し合うのを防止する上で重要です。

タイム・スロットAの間、LED2が駆動され、これに対応する散乱光が90°検出器D2を使用して検出されます。同じことが、タイム・スロットBでLED1とD4検出器を使用して行われます。実際には、非レシオ測定を行うために必要なのは、1つのタイム・スロットだけです。しかし、LEDとフォトディテクタからなるCN-0409ネットワークは、他のデータ・ポイントを他のタイム・スロットから引き出し、そのデータ・ポイントも使用できるように構成されています。最終的なFTUは次式で計算されます。

数式 1

ここで、
mはキャリブレーションから得た傾き(FTU/LSB)、
D2はタイム・スロットAの間に検出器D2から得たコード(LSB)、
D4はタイム・スロットBの間に検出器D4から得たコード(LSB)、
bはキャリブレーションから得たインターセプト(FTU)です。

ISO7027レシオの実行

CN-0409では、ISO7027レシオ法も、非レシオと同様に実行できますが、180°検出器を追加する必要があります。

追加の検出器は100FTUを超える濁度レベルを測定する場合に必要ですが、それは、このような溶液に存在する大きな粒子が非対称な散乱光分布を示すためです。CN-0409では90°検出器と180°検出器の比を使用して、濁度レベル測定の直線範囲を拡大しています。最終的なFTU測定は次式を使用して計算されます。

数式 2

ここで、
mはキャリブレーションから得た傾き(FTU/LSB)、
xはタイム・スロットAの間の90°検出器のコードと180°検出器のコードとの比、
yはタイム・スロットBの間の90°検出器のコードと180°検出器のコードとの比、
bはキャリブレーションから得たインターセプト(FTU)です。

自動範囲設定機能

前述のように、各規格が正確なのは一定の濁度範囲のみです。ISO7027非レシオ法は、0FTU~40FTUの濁度レベルでのみ正確で、レシオ法は40FTU~1000FTUのより高い濁度レベルで正確です。提供されているソフトウェアは自動範囲設定機能を備えており、被験溶液に対し適切な規格を選択します。これによって、報告される濁度レベルは常に精度と信頼性が高いものになります。

自動範囲設定のフローは、図4に示すように、閾値と比較する単純なプロセスです。

図4. 自動範囲設定のフロー
図4. 自動範囲設定のフロー

システムの精度

CN-0409の回路には、市販の濁度計と同等の精度があります。表1に、CN-0409と市販濁度計を並べて比較します。

表1. 仕様の比較
パラメータ 市販濁度計 CN-0409
Range 0FTU~1000FTU 0FTU~1000FTU
精度 ±0.5FTUまたは指示値の±5%(いずれか大きいほう) ±0.5FTUまたは指示値の±5%(いずれか大きいほう)
ノイズ 該当せず 0.05FTU(0FTU~1000FTU)
キャリブレーション 3点:0FTU、10FTU、500FTU 3点:0.02FTU、100FTU、800FTU
規格 ISO7027非レシオ(単一LED測定) ISO7027非レシオおよびレシオ(デュアルLED測定)
測定時間 25秒 <12秒

CN-0409は、同じ溶液セットを測定した場合、市販濁度計と比べ優れた性能を示します。図5に示すように、CN-0409を使用した場合の誤差は、市販の濁度計の誤差よりも小さくなります。

図5. 誤差の比較
図5. 誤差の比較


キャリブレーションによる精度向上

非常に低いレベルの濁度で濁度計をキャリブレーションし検証するプロセスは、ユーザの技術にも、周囲の環境にも極めて敏感です。1.0NTU未満の濁度レベルを測定する場合、泡や粒子の汚染を原因とする干渉(高レベルでもわずかに問題となることがあります)によって、偽陽性の指示値や無効な検証結果が生じる可能性があります。

高精度濁度測定に必要な高レベルの精度を実現するには、CN-0409で擬似3点キャリブレーション・ルーチンが必要です。CN-0409は、工場出荷時のキャリブレーション係数で事前にプログラムされていますが、入手可能なバイアル溶液やキャリブレーション溶液などの変数によっては、一定期間後に回路をキャリブレーションする必要があります。キャリブレーションに使用する溶液は、Oaktonの0.02FTU、100FTU、800FTU(T100キャリブレーション・キット)です。CN-0409のキャリブレーション領域を図6に示します。低濁度測定で使用する非レシオ法では、0.1FTUと100FTUの溶液を使用してキャリブレーションの傾きとインターセプトを取得します。一方、レシオ法では、100FTUと800FTUの溶液を使用して必要なキャリブレーション値を取得します。

図6. CN-0409のキャリブレーション領域
図6. CN-0409のキャリブレーション領域


システム・ノイズ性能

CN-0409のノイズ・レベルはわずか± 0.05FTUであるため、再現性のある濁度測定を提供します。

図7. CN-0409のノイズ・レベル
図7. CN-0409のノイズ・レベル


実際的な考慮事項

実際のアプリケーションでは、濁度測定のセットアップには多くの誤差源があるため、干渉が生じて計測器の精度が低下する場合があります。これらの誤差源の1つが迷光です。

迷光は、低レベルの濁度測定においては大きな誤差源です。迷光は光学システムの検出器に到達しますが、サンプルから生じたものではありません。計測器は、サンプルからの散乱光と計測器内の迷光源の両方に応答します。迷光の影響を抑制するには、次のガイドラインを参考にしてください。

  • サンプル・バイアルは、細心の注意を払って清浄にする必要があります。クリーニングには、洗剤と脱イオン水でバイアルを洗浄し、塩酸溶液にサンプル・バイアルを浸し、限外ろ過脱イオン水ですすぎ、シリコン・オイルで磨く工程が含まれます。
  • サンプルのバイアルには目印を付けることが必要です。クリーニング・プロセス後、そのバイアルを使用して非常に低濁度の溶液を測定します。最低の濁度が測定されたポジションに目印を付け、後続の測定はこのポジションで行います。
  • 気泡が消失するよう溶液を数分間静止させ、気泡を除去します。
  • 可能ならば、最適なポジションに印を付けた1つのサンプル・バイアルのみを使用します。

バリエーション回路

ADPD105を使用することで、濁度測定や一般的なフォトダイオード設計に対し柔軟性がもたらされ、カスタマイズが可能となります。135ºと45ºの位置に第3、第4のフォトディテクタを接続すると、より精巧な比例測定が実行でき、最大10000FTUの濁度レベルまで範囲を広げることができます。

回路の評価とテスト

この回路は、EVAL-CN0409-ARDZシールド回路ボードとEVAL-ADICUP360 Arduino互換プラットフォーム・ボードを使用します。プラットフォーム・ボードの詳細なユーザ・ガイドは、www.analog.com/jp/EVAL-ADICUP360で入手できます。

必要な装置

以下の装置類が必要になります。

  • EVAL-CN0409-ARDZ回路ボード
  • USBポート付きでWindows® 7(32ビット)以降を搭載したPC
  • CN-0409ファームウェアを搭載したEVAL-ADICUP360 Arduino互換プラットフォーム
  • シリアル・ターミナル・ソフトウェア(PuTTY、Tera Term、その他同様のもの)
  • USB A-micro USBケーブル
  • テスト用バイアル
  • 濁度キャリブレーション用溶液:Oakton T100、HI88703-11、またはCole Parmer濁度キット

テスト・セットアップの機能ブロック図

試験構成の機能図を図8に示します。

図8. テスト・セットアップの機能ブロック図
図8. テスト・セットアップの機能ブロック図


セットアップ

評価用回路のセットアップは、以下の手順に従います。

  1. EVAL-CN0409-ARDZシールド・ボードをEVAL-ADICUP360プラットフォーム・ボードに差し込みます。
  2. EVAL-ADICUP360ユーザ・ガイドの指示に従って、EVAL-ADICUP360の仮想COM USBポートをPCに接続します。
  3. CN-0409ファームウェアのUART設定にマッチするようシリアル・ターミナル・ソフトウェアをセットアップし、正しい仮想COMポートを選択します。
  4. EVAL-ADICUP360のリセット・ボタンを押すと、ソフトウェアによって水濁度測定の手順が表示されます。

ハードウェアおよびソフトウェアの動作の詳細については、CN-0409ユーザ・ガイド(www.analog.com/jp/CN0409-UserGuide)を参照してください。

EVAL-CN0409-ARDZ回路ボードとEVAL-ADICUP360 Arduino互換シールド・ボードを使用した、水濁度測定のサンプル・テストのセットアップ写真を図9に示します。

図9. EVAL-CN0409-ARDZおよびEVAL-ADICUP360を使用した 水濁度測定のセットアップ
図9. EVAL-CN0409-ARDZおよびEVAL-ADICUP360を使用した 水濁度測定のセットアップ