概要
設計リソース
評価用ボード
型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。
- EVAL-CFTL-6V-PWRZ ($20.01) Wall Power Supply for Eval Board
- EVAL-CN0206-SDPZ Complete Type T Thermocouple Measurement System with Cold Junction Compensation
- EVAL-SDP-CB1Z ($116.52) Eval Control Board
デバイス・ドライバ
コンポーネントのデジタル・インターフェースとを介して通信するために使用されるCコードやFPGAコードなどのソフトウェアです。
AD779x Linux GitHub Driver Source Code
機能と利点
- 温度範囲 -200 ℃ ~ +400 ℃ (typ)
- タイプT熱電対
- 低消費電流 500uA max、 0.2度の低いシステムノイズ
- プログラマブル・ゲインと冷接点測定による、シングルチップ・ソリューション
- 高性能、高精度
製品カテゴリ
マーケット & テクノロジー
使用されている製品
参考資料
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CN0206 Software User Guide2018/10/18WIKI
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MT-101: Decoupling Techniques2015/02/14PDF954 kB
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MT-023: ADC Architectures IV: Sigma-Delta ADC Advanced Concepts and Applications2015/02/14PDF936 kB
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MT-022: ADC Architectures III: Sigma-Delta ADC Basics2015/02/14PDF289 kB
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MT-031: データ・コンバータのグラウンディングと、「AGND」および「DGND」に関する疑問の解消2009/03/20PDF144 kB
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MT-004: The Good, the Bad, and the Ugly Aspects of ADC Input Noise - Is No Noise Good Noise?2009/03/04PDF342 kB
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CN-0206: 消費電流 500 μA 未満の熱電対測定システム2013/08/26PDF485 kB
回路機能とその特長
図1に示す回路は、24ビット・シグマ・デルタ(ΣΔ)A/Dコンバータ(ADC) AD7793に使用した全機能搭載の熱電対計測システムです。AD7793は、低消費電力、低ノイズの高精度測定アプリケーション向けの全機能搭載アナログ・フロントエンドです。このデバイスは、プログラマブル・ゲイン・アンプ(PGA)、リファレンス、クロック、励起電流を内蔵しているため、熱電対計測システムの設計が大幅に簡素化します。
AD7793の消費電流は最大でわずか500 μAであり、フル機能のトランスミッタで消費電力を、4 mA未満に抑える必要があるスマート・トランスミッタなどの低電力アプリケーションに最適です。AD7793にはパワーダウン・オプションがあります。このモードでは、補助機能を含めADC全体がパワーダウンし、最大消費電流を1 μAに削減します。
AD7793は熱電対回路設計用の統合ソリューションであるため、熱電対に直接接続可能です。冷接点補償には、サーミスタと精密抵抗を使用します。EMC対策用のいくつかの簡単なRCフィルタを除けば、冷接点測定に必要な外付け部品はこれだけです。
回路説明
この回路にはタイプT熱電対が使われています。この熱電対(銅・コンスタンタン)は−200°Cから+400°Cまでの温度を測定し、40 μV/°Cの温度差に依存する電圧を発生します。
熱電対の応答は、温度範囲全体の狭い範囲の一部分では(例えば0°Cから60°Cまでの範囲)でほぼ線形を示します(図2を参照)。温度範囲全体で正確な測定をするために、CN0206-SDP-0 評価用ソフトウェアが線形化(リニアライズ)ルーチンを実行します。
冷接点補償
熱電対は、絶対温度ではなく2点間の温度差を測定します。1点の温度を測定するには、片方の接点(通常は冷接点)を既知の基準温度にして、もう一方の接点の温度を検出します。
大部分のアプリケーションでは、1つの接点を既知の安定した一定の温度にすることが難しいため、熱に応答するデバイスをプリント回路基板(PCB)上に配置して正確な温度を測定します。この回路では、この温度測定にサーミスタを使い、熱電対の回路への入力点の温度を測定します。熱電対接続端子の金属製タブの内側にサーミスタを取り付けて、温度勾配による誤差ができる限り生じないようにします。
既知の冷接点温度からの電圧をシミュレートするため、適切な補正を行って確認することができます。正確な温度測定値を得るための熱電対およびサーミスタ電圧の処理と操作の詳細については、熱電対の直線化を参照してください。
ADCチャンネル1の設定- 熱電対入力
熱電対の温度範囲は−200°Cから+400°Cです。熱電対が生成する代表的な温度差に対する応答電圧は40 μV/°Cなので、これによって−8 mVから+16 mVまでの熱電対電圧が発生します。
ADCは熱電対電圧を読み取る際に2 Vの外部リファレンスを使用し、内部のゲインは64に設定されています。このため、アナログ入力電圧範囲は、差動で±31.25 mV(±VREF/Gain)となります。ゲインが64の場合、アナログ入力の絶対電圧はGND + 300 mVからAVDD − 1.1 Vまでの間でなければなりません。
AD7793は単電源で動作するため、熱電対が生成する信号をADCの入力許容範囲に収まるように、信号をグラウンドより高い値にバイアスする必要があります。熱電対信号の同相電圧がAVDD/2となるように、AD7793上のバイアス電圧発生器が信号にDCバイアスをかけます。
ADCチャンネル2の設定- サーミスタ入力
ADCの2つめの入力チャンネルは、AD7793が持つ電流出力ピンの1つによって駆動されるサーミスタ両端に発生する電圧を監視します。図1に示すように、1 mAの励起電流がサーミスタと精密抵抗(2 kΩ、0.1%)の直列ペアを駆動します。
サーミスタの値は0°C(815 Ω)から30°C(1040 Ω)までの範囲で変化し、1mAの励起電流により815 mVから1040 mVまでの範囲の電圧信号を生成します。精密抵抗は、サーミスタ両端の電圧測定するための外部リファレンスとして使用するので、この電流で2.0 Vの電圧を発生します。ゲインが1の場合、アナログ入力範囲は差動で±2 V(±VREF/Gain)です。このアーキテクチャはレシオメトリック測定回路です。励起電流の値が変化してもシステムの精度は変わりません。
0°Cから30°Cまでの範囲で伝達関数が線形だと想定すると、冷接点温度とサーミスタ抵抗Rの関係は次のようになります。
冷接点温度 = 30 × (R − 815)/(1040 − 815)
考慮すべきもう1つの点は、AD7793のIOUT1ピンの許容出力電圧範囲(コンプライアンス電圧)です。1 mAの励起電流使用時の許容出力電圧範囲はAVDD − 1.1 Vまでです。IOUT1の最大電圧は、精密抵抗の両端電圧にサーミスタ両端の最大電圧を加えた値、すなわち2 V + 1.04 V = 3.04 Vであるため、この仕様に適合しています。
出力コーディング
入力電圧に対する出力コードは、いずれのチャンネルでも次の通りになります。
コード = 2N − 1 × [(AIN × Gain/VREF) +1]
ここで、
AIN はアナログ入力電圧、
GAIN は計装アンプ設定、
N = 24.
EVAL-SDP-CB1Z アナログ・マイクロコントローラは、AD7793からの変換データを処理します。
熱電対の直線化
「回路の説明」で述べたように、熱電対がほぼ線形を示すのは限られた狭い温度範囲だけです。実際、これ以外の範囲では熱電対は高い非線形を示します。このため、CN0206-SDP-0 ソフトウェアによる直線化処理が実装されています。
米国標準技術局(NIST)は、熱電対用のITS-90ルックアップ・テーブル(標準の出力数表)を提供しています。熱電対の各種類による表には、熱起電力(mV)とそれらの電圧に対応する温度のリストが示されています。
前述の冷接点温度補正を実現するために、CN0206-SDP-0評価用ソフトウェアは、タイプT熱電対のルックアップ・テーブルを使用して、冷接点温度に対応する熱起電力値を探します。さらにこのソフトウェアは、標準ルックアップ・テーブル内の各値からこの熱起電力を減じて、冷接点補償済みの熱起電力ルックアップ・テーブルを作成します。
次に評価用ソフトウェアは、修正されたルックアップ・テーブル内を検索して、AD7793がサンプリングした熱電対からの入力電圧を探します。CN0206-SDP-0評価用ソフトウェアがこの熱電圧がどの2点の間にあるかを探し出し、線形補間によって熱電対センサー端の温度を精密に割り出します。
システム・キャリブレーション
熱電対温度の直線化のほかに、評価用ソフトウェアは2点キャリブレーションも行います。ユーザーが最低温度と最高温度を入力すると、CN0206-SDP-0評価用ソフトウェアが対応する温度測定値を出します。
ソフトウェアはこれらの測定値を使用してゲインとオフセットを計算し、以後に行われる熱電対温度の計算に適用します。
システム・ノイズの考慮
出力データレートが16.7 Hzでゲインが64の場合、AD7793のRMS(実効値)ノイズは0.086 μVです(ノイズは入力換算)。ピークtoピークのノイズは次のように概算できます
6.6 × RMS Noise = 6.6 × 0.086 μV = 0.5676 μV
熱電対の感度が正確に40 μV/°Cである場合、その熱電対は次に示す分解能で温度を測定することができます。
0.5676 μV ÷ 40 μV = 0.014°C
テストのデータと結果
すべてのデータの収集には、CN0206-SDP-0 LabVIEW評価用ソフトウェアを使用しました。熱電対入力のシミュレーションには、CL540ZAシグナル・ソース(および適切な、タイプTに合う補償導線)を使用しました。CL540ZAは、複数タイプの熱電対(J、T、E、K、R、S、B、N、その他)のシミュレーションができます。 CL540ZAの入力ソースを−200°Cから+400°Cまで+5°C刻みでスイープすることで、CN0206-SDP-0評価用ソフトウェアを使用し、2個のユーザー定義キャリブレーション・ポイントに従って、システムのデータ収集、直線化、キャリブレーションができました。
図3によると全温度範囲での誤差は1°C未満ですが、大部分の温度範囲で0.5°C未満です。
AD7793 のピークtoピーク・ノイズは、ADCの入力ピン同士を短絡して入力の中点電位に接続して1000個のサンプルを収集して確認しました。図4のヒストグラムに示すように、コードの分布幅は約220コードです。これはピークtoピークで0.02°Cの温度分布幅に相当します。
テスト・データは、図5に示すボードを使用して収集しました。このシステムに関する文書はすべて、 CN-0206 Design Support packageに入っています。
回路の評価とテスト
この回路は、 EVAL-CN0206-SDPZ 回路基板と EVAL-SDP-CB1Z システム・デモンストレーション・プラットフォーム(SDP)評価用ボードを使用します。2つのボードには120ピン・コネクタがあり、これを通して回路性能の設定と評価を短時間に実行できます。
EVAL-CN0206-SDPZ ボードには、この回路ノートに示した通り、評価対象の回路が含まれています。SDP 評価用ボードは、EVAL-CN0206-SDPZボードからのデータを取り込むために CN0206 Evaluation Software を使用します。
必要な装置
以下の設備、及びソフトウェアが必要です。
- USBポート付きWindows® XPおよびWindows Vista®(32ビット)、またはWindows® 7(32ビット)搭載PC
- 回路評価用ボードEVAL-CN0206-SDPZ
- SDP評価用ボードEVAL-SDP-CB1Z
- CN0206評価用ソフトウェア
- 電源:6 VDC ソースまたは6 V ACアダプタ
- CL540ZA熱電対ソースまたは同等品
測定の準備
PCにCN0206評価用ソフトウェアCDをセットして、評価用ソフトウェアをロードします。マイ・コンピュータから評価ソフトウェアCDがあるドライブに行き、Readmeファイルを開いてください。Readmeファイルの指示に従って、評価ソフトウェアをインストールして使用します。
機能ブロック図
回路ブロック図についてはこの回路ノートの図1を、回路図についてはEVAL-CN0206-SDPZ-SCH-RevA.pdfファイルをご覧ください。このファイルは、 CN0206 Design Support Package に含まれています。
セットアップ
EVAL-CN0206-SDPZボードの120ピン・コネクタをEVAL-SDP-CB1Z評価用(SDP)ボードのCON Aと表示されたコネクタに接続してください。120ピン・コネクタの末端にある穴を利用し、ナイロン製取り付けねじを使って2枚のボードをしっかり固定します。DC電源をオフのまま、ボードの+6 VピンとGNDピンに6 V電源を接続してください。6 VのACアダプタがあれば、ボード上のジャック・コネクタに接続してこの6 V電源電圧の代わりに使用することができます。熱電対コネクタをJ1に接続します。注:この時点ではまだ熱電対信号ソース(CL540ZA)をオンにしないでください。
SDPボード付属のUSBケーブルをPCのUSBポートに接続してください。注:この時点では、まだUSBケーブルをSDPボード上のミニUSBコネクタに接続しないでください。
テスト
EVAL-CN0206-SDPZボードに接続した6 V電源(またはACアダプタ)に電源をオンにしてください。CL540ZA熱電対信号ソースをオンにしてPCからのUSBケーブルをSDPボードのUSBコネクタに接続し、評価用ソフトウェアを起動します。
USB通信の確立後は、SDPボードを使用してEVAL-CN0206- SDPZボードからシリアル・データを送信、受信、取り込むことができます。
テスト・セットアップとキャリブレーションについての情報と詳細、およびキャリブレーション用ソフトウェアを使用してデータを収集する方法については、CN-0206ユーザー・ガイドwww.analog.com/CN0206-UserGuide をご覧ください。
SDPボードに関する情報はSDPユーザー・ガイドに記載されています。