DN-156: 最大50Aの高出力同期式降圧コンバータ
はじめに
LT1339は、12V~48Vの入力電圧範囲と1.3V~36Vの出力電圧範囲の電源変換問題に対応可能な単純で耐久性の高いコントローラです。LT1339は数十Wから数十kWの範囲の電力レベルに対して最適です。構造が単純できわめて使いやすくなっています。負荷電流が20A、50A、あるいは150Aでも安定して動作するパワー・コントローラです。
LT®1339はステロイドが不要な降圧/昇圧コントローラです。全機能内蔵型の同期式コントローラLT1339は、システム・レベルのソリューションに必要な機能を備えています。ほとんどのPWMコントローラではこのような機能が欠如しているため設計者は多くの部品について模索を強いられます。LT1339は斬新なスロープ補償機能を備えており、回路設計者はスロープ補償ランプの傾斜とオフセットの両方を自由に管理することができます。加えて、LT1339は平均電流制限ループを内蔵しており、入出力電圧に関係なく一定の出力電流制限を行います。LT1339には高精度コンパレータの入力であるRUNピンがあり、設計に適した低電圧ロックアウト・ポイントやヒステリシスを自由に選択できます。SYNCピンとSS(ソフト・スタート)ピンを使用して、システム・レベルの設計問題を容易に解決できます。リニアテクノロジーのすべてのコントローラと同様、LT1339は中および高電力変換を行うために実際のアプリケーションで要求される耐久性を実現するアンチシュートスルー回路を内蔵しています。
分配電源
図1に標準的な低電圧降圧コンバータの詳細を示します。この回路のVIN範囲は10V~18Vで、出力電流と電圧をさまざまに構成できます。この単純な回路は、90%半ばの効率を維持しながら、5V負荷に対して250Wの負荷電力を供給します。
高入力電圧
図1に示す回路では、LT1339のVINピンの最大定格(絶対最大)により入力電圧が20Vに制限されています。この入力電圧は、図1の回路のアスタリスク(*)で示す箇所に10Vのツェナー・ダイオードを挿入すれば、20V以上にすることができます。これにより、図1の回路の入力電圧は最大30V(MOSFETの絶対最大定格)に拡張されます。
設計上の問題
入力電圧が30Vに近づくと、ボトムMOSFETが“見かけ上のターンオン”を開始します。この現象はドレインでの瞬時の電圧ステップ(CINPUT対CMILLERの比による)によってドライブされ、ボトムMOSFETのスレッショルド電圧Vtより高いローカル・ゲート電圧を生じます。この問題に対応するために、図2のボトム・ゲート・ドライブに3Vの負のオフセット電圧を加えています。しかしまだボトムMOSFETのボディ・ダイオード効果の問題があります。図1では、ボディ・ダイオードと並列になったショットキ・ダイオードを内蔵するFETであるFETKY™MOSFETを使用しています。高電圧のFETKY MOSFETはないため外付けショットキ・ダイオードを使用しなければなりません。ボディ・ダイオードと外付けショットキ・ダイオードによって形成されるループのインダクタンスはかなり大きくなるため、ボディ・ダイオード電流はゆっくりショットキ・ダイオードに流れ込みます。我々の解決法は小型のショットキ・ダイオードを使用し、ボトムMOSFETと組み合わせてインダクタンスを低減することです。図2に48V入力、5V/50A出力の同期式降圧コンバータの詳細を示します。このコンバータを24V出力に構成すると、97%の効率を維持しながら36Vまたは48V入力から960Wを供給することが可能です。