DN-566: 高電流の SIO チャネルを備えるクワッド IO-Link マスタ

はじめに

IO-Link は、産業用アプリケーションに見られるスマート・センサおよびアクチュエータへのポイント・ツー・ポイント、3 線インタフェースの通信規格です。IO-Linkは、上述したデバイスの従来のインタフェース機能を、単純な NC/NO スイッチ・インタフェース(標準の IOまたは SIO モード)からインテリジェントな双方向インタフェースに拡張し、コード化されたスイッチング動作によって追加情報を 3 種類の速度(COM1 - 4.8kb/s、COM2 - 38.4kb/s、または COM3 - 230.4kb/s)のいずれかで送信できるようにします。データ・ピン(C/Q)に加えて、IO-Link タイプ A インタフェースは、DC24V の電源ピン(L+)および共通帰線ピン(L-)を備えています。

IO-Link マスタは、パワーアップすると、接続された各デバイスからの応答を受けて、そのデバイスに適した動作モード(SIO、COM1、COM2、または COM3)を決定します。これによって、同じシステム内で従来のデバイスとIO-Link 対応のデバイスが混在してシームレスに動作することを可能にします。

LTC®2874 の定格 CQ 出力電流は 110mA です。チャネルを並列接続することによって、さらに高い 440mAまでの電流を得ることができます。この電流値は IOLink 仕様の値を超えますが、一部の非標準の SIO アプリケーションでは、さらに高い電流の供給を必要とする場合、または独立した 4 つのチャネルの機能を維持することを必要とする場合、あるいはその両方を必要とする場合があります。この記事では、LTC2874のホットスワップ・チャネルを再利用して大きい電流をSIO の負荷に供給しながら(SIO+ モードと呼ばれる)、LTC2874 の IO-Link の機能および能力を維持する方法を示します。

回路の説明

SIO+ モードでは、チャネルのホットスワップ・コントローラ出力を対応する CQ ピンに接続することによって、任意の大きい供給電流を使用できます(図 1 のポート1~ 3 を参照)。 高電流ポートの場合、L+ のホットスワップ機能は使用できません。ただし、アプリケーションで必要な場合は、外部のホットスワップ・コントローラを追加することができます。SIO 出力に使用されないLTC2874 ホットスワップ・コントローラは、通常の L+または図 1 のポート4 で示されているような他の用途に使用することができます。

図 1.L+ ホットスワップを備える、3 つの高電流 SIO ポート(SIO+)および 1 つの通常の SIO 電流ポートを使用して構成された LTC2874、クワッド IO-Link マスタ
図 1.L+ ホットスワップを備える、3 つの高電流 SIO ポート(SIO+)および 1 つの通常の SIO 電流ポートを使用して構成された LTC2874、クワッド IO-Link マスタ

通常の IO-Link または SIO の動作時に、L+ のMOSFET がオフになり、TXEN、TXD、および RXDを介して CQ 出力が正常に動作します。COM3 の速度および起動パルス生成での最大通信速度を含む、IO-Link の機能が全て維持されます。

SIO+ の動作時に、SPIレジスタ・インタフェースを介して L+ の MOSFET が制御され、CQ がディスエーブルされます(TXEN が“L”になるか、SPIレジスタによって制御されます)。レジスタ 0xE の上位ニブルが、L+の MOSFET を制御します。SIO+ モードの間、スイッチング周波数は、ほぼ COM1 の速度に制限されます。

CQ 出力と L+ 出力の両方が同時にアクティブになった場合、LTC2874 は損傷しませんが、出力波形の立ち上がりおよび立ち下がりの軌道が非単調になるため、この動作モードは推奨されません。このような軌道は、チャネル間のタイミングの違い、さまざまな電流制限、およびソース抵抗の相互作用に起因して発生します。

SIO+ モードの最大出力電流は、MOSFET および検出抵抗 RS の選択によって決まります。電流制限は、50mV/RS によって設定されます。図 1 では、回路の標準的な電流制限は 500mA です。許容誤差および変動を考慮すると、ポートの 400mA の出力定格が得られます。MOSFET は、電圧、電流、および安全動作領域(SOA)の要件に対処するように選択する必要があります。詳細については、LTC2874 のデータシートを参照してください。

MOSFET の出力容量は、約 60pF から、IO-Link 規格で許容される 1nF の最大値まで寄与します。

この回路は 2 つのドライバを並列接続するため、非アクティブなドライバがアクティブなドライバに対する容量性負荷として働きます。アクティブなドライバの状態が変化すると、非アクティブなドライバには充電電流が生成されます。この影響は、MOSFET の大きい容量およびCQドライバの高速なエッジ・レートのために、IO-Linkの動作時に著しくなります。アクティブなドライバがオフしたときに充電電流パルスによってリンギングが発生するのを防ぐには、MOSFET のソースと C/Qドライバ出力との間の寄生インダクタンスを最小限に抑えます。

SIO+ モードまたは通常の IO-Link モードのいずれかで動作しながら抵抗性負荷を駆動する 1 つの SIO+ 対応ポートの動作波形を図 2 および 3 に示します。電源電圧は 24V、抵抗性負荷はそれぞれ 56Ωおよび 200Ωです。 

図 2.SIO+ の動作
図 2.SIO+ の動作
図 3.COM3 の速度で C/Q を使用したSIO+ 対応ポートの IO-Link 動作
図 3.COM3 の速度で C/Q を使用したSIO+ 対応ポートの IO-Link 動作

まとめ

ホットスワップ・チャネルを高電流の SIOドライバとして再利用することによって、SIO+ モードで、LTC2874の動作用の任意の大きい電流を得ることができます。

著者

Eric Benedict

Eric Benedict

Eric Benedictはアナログ・デバイセズのシニア・アプリケーション・エンジニアです。パデュー大学でBSEEおよびMSEE、ウィスコンシン大学マディソン校でMSEEおよびPhDの学位を取得しました。