DS2761の起動

要約

DS2761高精度バッテリモニタによって、Li+ (リチウムイオン)セルのモニタリングと保護が可能になります。デバイスを起動するとき、DQ端子の状態、パワーモードのビット(PMOD)、およびバッテリ電圧が、デバイスの移行モード、およびCharge Control (CC)端子とDischarge Control (DC)端子の応答に影響を与えます。このアプリケーションノートでは、予想される多くの起動シナリオで生じる状態について詳しく説明します。

DS2761の起動

DS2761は、パワーオンリセット(POR)シーケンスが完了するとスリープモードに移行し、デバイスがアクティブモードになる条件が発生するまでそのモードが続きます。

以下に示すDS2761の起動のケースでは、デバイスのすべてのEEPROMは、PORシーケンス中にシャドウRAMにリコールされます。起動時には、電流積算レジスタ(ACR)は0.00mAhrにリセットされ、ユーザRAMは不定です。

以下の表に、このアプリケーションノートで考察する起動時の条件を記載します。

CASE POWER UP CONDITIONS
PMOD SWEN DQ VIN
A -- -- 0 --
B 0 -- 1 --
C 1 -- 1 > VUV
D 1 -- 1 < VUV

ケースA:DQ = 0

最初にDS2761に電源が印加されたときにDQがローの場合、デバイスはスリープモードの状態に留まります。DC端子はセル電圧にプルアップされ、このためPAC+端子はディセーブルになります。デバイスがスリープモードのとき、PAC+端子はローにプルダウンされます。CC端子はPAC+にプルされるため、CCはローですが、充電用FETはディセーブルのままになります。DQがローのとき、PMODの状態は制御用端子に影響しません。いずれの場合もデバイスがウェークアップしないためです。また、このケースの波形は、電圧低下スレッショルド(VUV)に関係するセル電圧の影響を受けません。

図1. DQ = 0の場合

図1. DQ = 0の場合

ケースB:DQ = 1、PMOD = 0

起動時にDQがハイでPMODが0の場合、DS2761は、1-Wire® リセットに応答している場合と同様に、DQラインをローにプルダウンします。その他の端子は、DQがローの場合と同様の結果を示します。これは、デバイスはスリープモードのままで、PAC+がアクティブになることはないためです。また、このケースの波形は、VUVに関係するセル電圧の影響を受けません。

図2. DQ = 1、PMOD = 0の場合

図2. DQ = 1、PMOD = 0の場合

ケースC:DQ = 1、PMOD = 1、セル > VUV

PMODが1の場合、DS2761は、DQもハイであればアクティブモードで起動します。電源がデバイスに印加されたとき、DS2761はプレゼンス検出で応答するため、DQはローにプルダウンされます。最初の1msは、DC端子がセル電圧にプルアップされるため、PAC+はディセーブルになります。CC端子はPAC+にプルされるため、CCはローですが、充電用FETはディセーブルのままになります。PAC+端子は、CCとDCの両方がローに駆動されるまで、約1msの間、ディセーブルの状態のままになります。

図3. DQ = 1、PMOD = 1、セル > VUVの場合

図3. DQ = 1、PMOD = 1、セル > VUVの場合

ケースD:DQ = 1、PMOD = 1、セル < VUV

ケースCと同じシナリオのときにセル電圧がVUV未満の場合、最初の100msの間は同一の波形ですが、100msが経過すると、電圧低下状態が検出され、デバイスはスリープモードになります。また、DC端子はセル電圧にプルアップされるため、PAC+はディセーブルになります。CC端子は最初の100msの間はローに駆動され、次にデバイスがスリープモードになると、CC端子はPAC+にプルされるためローのままですが、充電用FETはこの時点でディセーブルになります。

図4. DQ = 1、PMOD = 1、セル < VUVの場合

図4. DQ = 1、PMOD = 1、セル < VUVの場合

まとめ

DS2761に電源を印加したときの保護用端子の状態は、PMODビット、DQライン、およびセル電圧の設定によって決まります。このことは、デバイスへの電源が一時的に消失するような事態から回復するための回路とソフトウェアを設計するときに重要となります。このアプリケーションノートは、DS2760のC2版にも適用されます。