MAX9949およびMAX9950のパラメータ測定ユニットの動作モード
要約
このアプリケーションノートでは、MAX9949およびMAX9950のパラメータ測定ユニット(PMU)の4つの主要動作モードについて説明します。動作モードは、電流印加/電流測定(FIMI)、電流印加/電圧測定(FIMV)、電圧印加/電流測定(FVMI)、および電圧印加/電圧測定(FVMV)です。ブロック図、式、および表によってサンプルセットアップを検証しやすくなります。
はじめに
MAX9949/MAX9950は、デュアルチャネルのパラメータ測定ユニット(PMU)で、以下の4つの主要動作モードがあります。
- FIMI—電流印加/電流測定
- FIMV—電流印加/電圧測定
- FVMI—電圧印加/電流測定
- FVMV—電圧印加/電圧測定
上記以外に補助的な測定動作モード(印加なし/電圧測定(FNMV)と印加なし/電流測定(FNMI))の2つがありますが、このアプリケーションノートでは説明しません。これらの動作モードの詳細については、データシートを参照してください。
このアプリケーションノートは、各トピック項で4つの主要動作モードを説明します。各項で等価ブロック図を示してシリコンで機能が実行される様子を説明します。式では演算を説明し、サンプルセットアップを示します。FIMIモードの表では詳細な例を示し、MAX9949/MAX9950のMSRピンへのさまざまなADC接続のセットアップ方法を示します。読者はこれらの例、設定、式、および表を利用して特定の動作モードをセットアップすることができます。
シリアルインタフェースで各モードをセットアップする方法については、データシートを確認してください。
注意事項と前提事項
ブロック図に進む前にいくつかの項目を理解しておく必要があります。
- このアプリケーションノートはデータシートでの情報を補完するものです。読者はデータシートのコピーを入手することをお勧めします。これによって、すべての設定が仕様どおりであることが保証されます。
- ここで示される例は較正済みのセットアップを前提としています。簡潔にするため、オフセットはすべてゼロと想定しています。これは理想の設定であって、実際の設定ではあり得ないため、オフセットのすべてを較正して絶対精度を得る必要があります。
- 仕様におけるフルスケールレンジ(FSR)とは、負の最小から正の最大の設定までの全レンジを指しています。たとえば、200µAレンジの動作FSRは、±200µA = 400µAの合計レンジになります。これは他のすべてのレンジ、すなわち±2µA、±2mA、および±64mAについても当てはまります。
- 線形誤差は必ずFSRの関数として表され、通常は±0.02%以内です。2µAレンジを選択した場合、最大線形誤差は、4µAのFSR全体にわたって4µAの0.02% = 80nAです。
- 絶対最大定格を超えてはいけません。必ずデータシートで規定された標準動作レンジ内で動作させてください。標準レンジ外で動作させると、誤った設定や部品の損傷につながるおそれがあります。
- 図面の楕円内に示された数字はノード電圧です。読者は各ノードに従い、その期待値を確認することができます。ブロック図は理想のオペアンプを用いた実際のSPICEモデルであり、ノード電圧はシミュレーションの実行からバックアノテートされています。
- FI (電流印加)モードでは、電流印加は[VIN - VIOS]に比例することに留意してください。
- 表の例は、IOSを設定してユニポーラとバイポーラのADCに対応する方法を示しています。
- 例のブロック図はすべて、15.5kΩの負荷を使用しています。また、RSENSE = 10kΩに設定することで、レンジは200µAに設定しています。このブロック図はいかなる負荷およびいかなるレンジにも適用可能です。
- このアプリケーションノートは、MAX9951/MAX9952のPMUにも適用可能ですが、次に示す2つの重要な例外があります。すなわち、フィードバックループのゲイン乗算器は4で、2ではないということ、およびセンス抵抗器が2倍になるということです。実際の結果はまったく同じです。
FIMIモード
図1から、以下の所見が得られます。
- MSRピンはIN入力ピンの電圧を監視しており、U1、U2、U3、U4、およびU5からオフセットを増減させます。単独では、MSRピンは電流印加を直接監視していません。代わりに、IFORCE電流が、次式によってVIN - VIOSに直接関連しています。
- 図1は、IN = 3.456V、IOS = 1.234V、および負荷 = 15.5kΩの場合のセットアップ例を示しています。式1およびRSENSE = 10kΩ (±200µAレンジ)を使用すると、IFORCE = 111.1µAであることがわかります。
- RSENSEを流れる電流を計算することで、IFORCEに関するこの計算を確定することができます。したがって、想定どおり、次式のようになります。
IRSENSE = (2.833 - 1.722)/10,000 = 111.1µA
最後に、負荷では、次のようになります。
IRLOAD = 1.722/15,500 = 111.0968µA (誤差は3桁の分解能によるものです)
FIMI | ||||
IN (V) |
IOS (V) |
RSENSE (Ω) |
FI (µA) |
MSR (V) |
IOS set for -4V to +4V ADC on MSR output | ||||
-4 | 0 | 10,000 | -200 | -4 |
-3 | 0 | 10,000 | -150 | -3 |
-2 | 0 | 10,000 | -100 | -2 |
-1 | 0 | 10,000 | -50 | -1 |
0 | 0 | 10,000 | 0 | 0 |
1 | 0 | 10,000 | 50 | 1 |
2 | 0 | 10,000 | 100 | 2 |
3 | 0 | 10,000 | 150 | 3 |
4 | 0 | 10,000 | 200 | 4 |
IOS set for 0V to +8V ADC on MSR output | ||||
0 | 4 | 10,000 | -200 | 0 |
1 | 4 | 10,000 | -150 | 1 |
2 | 4 | 10,000 | -100 | 2 |
3 | 4 | 10,000 | -50 | 3 |
4 | 4 | 10,000 | 0 | 4 |
5 | 4 | 10,000 | 50 | 5 |
6 | 4 | 10,000 | 100 | 6 |
7 | 4 | 10,000 | 150 | 7 |
8 | 4 | 10,000 | 200 | 8 |
表1は、IOSピンを用いてユニポーラADC (この場合、-4V~+4V)またはバイポーラADC (0V~8V)を使用可能な方法を示しています。このように、顧客はアプリケーションについて広範囲のADCから選択することができます。表1の例は200µAレンジ(RSENSE = 10kΩ)を表していますが、すべてのレンジに同じセットアップを適用することができます。
FIMVモード
FIMVモードは基本的にFIMIモードと同じセットアップですが、出力端の電圧すなわち印加ピンは、MSRピンで監視されます(図2)。電流印加は図1とまったく同じであるため、計算はすべて同じです。
FVMIモード
FVMIモードでは、ループは、印加ピンがINピンの電圧に印加されるようにセットアップされます(図3)。このため、VFORCE = VINとなります。
これは、図3で容易にわかり、次式が成立します。
ILOAD = VIN/RLOAD = 3.456/15,500 = 222.97µA
RSENSE = 10kΩであるため、200µAレンジを使用していることになります。このため、200µAレンジのFSRを22.97µAだけ超過しています。これは実際には許容可能です。各レンジには、FSR仕様を超過することができる余裕があるためです。 MSRピンはIOSでオフセットされ、VMSR = 2 × (ILOAD × RSENSE) + VIOSであることに留意してください。
FVMVモード
図4は、印加出力ピンがIN電圧に設定され、MSRピンは単にこの設定すなわち電圧印加を監視する、簡単なループを示しています。したがって、ILOAD = VIN/RLOADとなります。
まとめ
このアプリケーションノートでは、PMUデバイスMAX9949/MAX9950の4つの主要動作モードについてのデータシートの記載について詳しく説明しました。各モードの等価ブロック図はサンプルセットアップとともに示され、容易に検証することが可能です。