MAX1464のADCレンジの最大化
要約
MAX1464は、内蔵の16ビットアナログ/ディジタルコンバータを使ってアナログ入力信号をディジタル値に変換する、高性能なマルチチャネルの信号コンディショナです。変換の分解能を最大にするには、入力信号からオフセットを取り除いて、アナログ/ディジタルコンバータのリニアレンジを超えないように増幅を行う必要があります。このアプリケーションノートでは、この作業を効率的に実施するための手順を説明し、フローチャートを示します。
MAX1464の変換分解能の最大化
MAX1464は、オンチップのフラッシュメモリと温度センサを備えた、高性能、低コスト、低消費電力、マルチチャネル、マイクロプロセッサベースのディジタルセンサ信号コンディショナです。信号経路の中心に位置するのは、アナログ入力信号を内部のマイクロプロセッサで処理するためのディジタル値に変換する、16ビットのアナログ/ディジタルコンバータ(ADC)です。変換の分解能を最大にするには、粗オフセットDAC (CO)を使用して入力信号からオフセットを取り除き、その後、ADCのリニアレンジを超えない範囲で可能な限り最大の値にプログラマブルゲインアンプ(PGA)の指示値を設定することによって増幅してやる必要があります。入力信号の粗オフセット指示値は、ミッドスケールのセンサ励起時にディジタル値ができる限り0x0000 (hex)に近くなるように設定する必要があります。その後、最小と最大の励振レベルにおいてディジタル出力値がADCのレンジの±85%にできる限り近くなるように、PGAの指示値を設定する必要があります。
COおよびPGAの設定の分解能が限られているため、この段階で可能なのは、大まかなPGAと入力信号のオフセット調整だけです。出力信号の最終的かつ最も正確な設定は、通常は最終的な較正プロセスの中で達成されます。そこでは、センサ誤差、デバイス間の個体差、アプリケーション回路のコンポーネント間の個体差、およびその他すべての残留誤差が整理され、補償アルゴリズムによって補正されます。一般的には、ある程度一貫したセンサを備えた生産ラインでは、同じCOとPGAの設定を使用することができます。したがって、個々のセンサについてそれぞれCOとPGAの設定を決める必要はありません。
MAX1464信号コンディショナでは、COとPGAのどちらの指示値も、チャネル1、チャネル2、およびチャネルT (温度センサ)の各入力について独立に設定します。それぞれのチャネルについて、PGAの指示値は構成レジスタ中の5ビット(17通りの設定が可能)、COの指示値は4ビット(符号1ビットを含み、16通りの設定が可能)を使用して設定します。図1のフローチャートは、特性の不明なセンサについて最適な粗オフセットと利得の設定を見つけるための手順を示しています。詳細な定義および構成レジスタの設定方法については、MAX1464のデータシートをご覧ください。
例
この例では、感度10mV/V、オフセット-12mV/Vのセンサを使用し、電源電圧5V時の補正後出力0.5V~4.5Vという希望条件に基づいて、COとPGAの指示値を決定します。したがって、センサのオフセットは5V x (-12mV/V) = - 60mVであり、完全励起時におけるセンサのスパンは50mVになります。同様に、-FSO (フルスケール出力) = -85mV、+FSO = -35mVです。フローチャートに沿って、PGAの利得設定をPGAn[4:0] = 10000b (利得 = 123)、粗オフセット補正の設定をCon[3:0] = 1010b (+57mV RTI - 入力相対値)とします。粗補正後のADCへの-FS入力は(-85mV + 57mV) x 123 = -3.690Vです。ADCへの+FS入力は(-35mV + 57mV) x 123 = +2.460Vです。ADCの入力レンジは±VDDです。こうして、センサ信号のディジタル値は-FS = -3.690/5 = -0.738および+FS = +2.460/5 = +0.492になります。
ブリッジではVDDによる乗算、ADCではVDDによる除算が行われることに注意してください。よって、このシステムはVDDのDC値にレシオメトリックかつその変化に影響されないことになります。入力値が±VDDを超えると、ADCの出力は±1.0にクリッピングされます。
図1. MAX1464信号コンディショナ使用時におけるセンサ信号補償用の最適な粗オフセットおよびPGA設定の決定手順