DN-158: LT1425を使用した絶縁DC/DCコンバージョン

LT®1425は絶縁アンプ、リモート・センサ、テレコム・インタフェースのような、十分な安定化と絶縁電圧が要求されるアプリケーションのために設計されています。他に例のない帰還アンプは絶縁バリアを2回交差する必要がなく、結果として簡単で部品数が少なくなります。LT1425は16ピンSOパッケージで、1.5Aのスイッチを内蔵した275kHzの電流モード・コントローラで、3V~20Vの入力から十分な安定化と絶縁を第一に提供します。

図1は標準的なLAN用のフライバック電源で、完全なPCMCIAタイプIIの高さへの対処のための補助トランスを含んでいます。負荷安定性は0~250mAの出力電流に対して±1%です。帰還はT1の1次側のフライバック電圧を平均化することによって行われます。内部スイッチはVSWとPGNDピンの間に位置します。RFBピンは内部でVINにバイアスされています。スイッチがオフしている間は、VOUT/n(nはトランスの巻線比)に比例した帰還電流がR4を経由してRFBピンに現れます。T1のフライバック電圧はスイッチがオンの間、または2次電流がゼロに減衰した時(不連続フライバックモード)には現れません。減衰検知及びブランキング回路は、帰還アンプがこれらの時間の間の情報を無視することを確実にします。

図1. 5Vから-9V/250mAの絶縁LAN用電源

図1. 5Vから-9V/250mAの絶縁LAN用電源

抵抗R3は追加の負荷補償で、巻線抵抗と出力ダイオードの降下電圧関して必要な補償を提供します。これはスイッチ電流の平均に(ゆえに負荷電流にも)比例した電流を発生させます。この電流は帰還信号から差し引かれ、負荷の増加にともない出力電圧を低下させる寄生電圧降下を補償します。

この帰還手法によって、似たような絶縁フライバック回路には見られない、最良の安定化と高速でダイナミックな応答が得られます。もう一度図1について触れますが、この-9V出力は50mAから250mAの負荷過渡においてわずか300mVしか変動しません。

図2は1.5kVの絶縁を持つ±5V電源です。入力、負荷、相互安定性の合計は±3%より良好です。全負荷時の効率は72%(VIN=5V)から80%(VIN=15V)の間でです。絶縁電圧は究極的にはボビンの選択とトランスの構造だけによって制限されます。

図2. 完全絶縁の±5V/±250mA電源

図2. 完全絶縁の±5V/±250mA電源

トランス T1

LPRI Ratio Isolation (L · W · H) IOUT Efficiency R1, R2 C5, C6 R3
DALE LPE-4841-A307
36μH
1:1:1 500VAC 10.7 · 11.5 · 6.3mm 250mA 76% 47Ω 330pF 13.3k
COILTRONICS CTX02-13483 27μH
1:1 500VAC 14 · 14 · 2.2mm 200mA 70% 75Ω 330pF 5.9k

図3には外付のカスケード接続された200VのMOSFETが、LT1425の35Vのスイッチ電圧の制限を拡張するために使用されています。入力電圧範囲(36V~72V)もLT1425の20Vの最大入力電圧を越えており、そのためにブーストラップ巻線が使用されています。D1、D2、Q2、Q3と関連する部品は、必要とされるヒステリシスをともなった起動回路を構成しています。C1が15Vに充電されると、スイッチングが開始しブートストラップ巻線がC1が11Vに放電する前に電力を供給し始めます。帰還電圧は直接抵抗分割器を通ってRREFピンに与えられます。負荷補償回路はバイパスされて、負荷安定性は±5%以内になります。

図3. 5V/2Aのテレコム用電源

図3. 5V/2Aのテレコム用電源

著者

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Kurk Mathews

Kurk Mathewsは、アナログ・デバイセズのパワー製品グループに所属するシニア・アプリケーション・マネージャです。1994年にLinear Technology(現在はアナログ・デバイセズに統合)に入社。アプリケーション・エンジニアとして、絶縁コンバータ製品や大電力製品のサポートに従事しました。パワー製品グループでは、パワー・アプリケーションのサポートと、コントローラ/モノリシック・コンバータ/ゲート・ドライバ製品の開発を担当。アナログ回路の設計や、様々な試験装置を使用したトラブルシューティングに注力しています。アリゾナ大学で電気工学の学士号を取得しました。