MAX149xシグマデルタパネルメータADCに外部リファレンスを実装したときに得られる利得に対する効果

要約

シグマデルタパネルメータADCのMAX149xファミリでは、500mV~3.6Vの範囲に対して外部リファレンスを使用して正確な変換結果を得ることができます。このアプリケーションノートでは、外部電圧リファレンスを使用して出力を分圧し、可変リファレンス電圧を生成する方法について説明します。この可変リファレンス電圧が、MAX149xファミリを駆動してADC利得を調整します。

ADCに対するリファレンス電圧の影響

MAX1447、MAX1491、MAX1493、MAX1495、MAX1496、MAX1498のシグマデルタパネルメータICは、2.048Vの内部リファレンスソースか、または500mV~3.6Vの外部リファレンスソースのいずれかを選択することができます。最も基本的な構成では、これらのデバイスはAIN+とAIN-間の入力端に2.048Vのリファレンスを想定しており、その結果を変換してLED/LCDディスプレイに表示しています。出力数は4.5桁バージョンで有効であり、以下の伝達関数によって得られます。3.5桁バージョンでは、これらの式の20,000を2000に変更します。

AIN+ - AIN- > 0、RANGE = GNDの場合

AIN+ - AIN- < 0、RANGE = GNDの場合

AIN+ - AIN- > 0、RANGE = DVDDの場合

AIN+ - AIN- < 0、RANGE = DVDDの場合

電圧分圧器を使用して簡単な可変リファレンスを生成

リファレンス電圧を変更すると、デバイスの利得を変更することができます。特定のアプリケーションではこれを利用し、可変外部リファレンスソースを使用して可変利得を得ています。

式1の分子にある差動リファレンス電圧の項(VREF+ - VREF-)を調整することによって、伝達関数の利得の変化を簡単に確認することができます。利得を増加するには、単にリファレンス電圧を下げるだけです。逆に、利得を減少するには、リファレンス電圧を上げます。可変リファレンスを生成するにはいくつかの方法がありますが、最も簡単な方法は2.5Vリファレンスの可変電圧分圧器を使用してVAIN+を変更する方法です。

図1. MAX6126と、REF+ = VOUTでREF- = GNDの分圧器。VOUTの想定範囲 = 1.5V~2.5V
図1. MAX6126と、REF+ = VOUTでREF- = GNDの分圧器。VOUTの想定範囲 = 1.5V~2.5V

図1に示す調整可能なリファレンス回路は、2.5Vのリファレンス(MAX6126)とリファレンス出力(OUTF)とGND間に直列に接続された固定抵抗器と可変抵抗器で構成されています。この回路の出力REF+はADCのREF+に接続し、REF-はGNDに接続します。差動リファレンス電圧VREFは次式で得られます。

REF+上のADCへの入力インピーダンスは、通常220MΩであるため、(RVAR + R) < 1MΩである限り、式2には影響しません。

MAX149xファミリで外部リファレンスを使用するときの実際的な問題

MAX1447、MAX1491、MAX1493、MAX1495、MAX1496、MAX1498は、正確な変換を行うためにリファレンス入力ピンを絶対電圧±2.2Vに制限していることに、留意する必要があります。したがって、図1の回路を使用するときには、REF+が2.2Vを超えないようにすることが重要となります。また、抵抗器は温度によってドリフトするため、温度によって抵抗分圧器の比率が変動する可能性があります。薄膜チップ抵抗器のような低温度係数の抵抗器を使用し、炭素抵抗器やポテンショメータは使用しないでください。固定の利得が必要な場合は、MAX5490などの高精度マッチングの抵抗ネットワークを使用すると、比率が±1ppm/°Cのドリフトを実現することが可能です(図2を参照)。

図2. MAX1447、MAX1491、MAX1493、MAX1495、MAX1496、MAX1498のADCとともに、MAX5490高精度電圧分圧器を使用
図2. MAX1447、MAX1491、MAX1493、MAX1495、MAX1496、MAX1498のADCとともに、MAX5490高精度電圧分圧器を使用

REF+とREF-は±2.2Vを超えてはならないため、2.2Vを超えるリファレンス電圧を使用するときには、GNDを基準として外部リファレンス電圧を調整する必要があります。これを実現するため、図3には、2つの外部リファレンスソースを使用してREF-とREF+の電圧を生成する方法を示しています。外部リファレンスは、0.5Vの低電圧から3.6Vの高電圧まで使用することが可能で、性能は維持されます。図4は、500mVの入力と500mV~4.2Vのリファレンス電圧を備えた標準的なデバイスの精度を示しています。

図3. 2つのリファレンスソースを使用してREF+とREF-を生成するMAX1498/MAX1499/MAX1477ベースのパネルメータの説明図
図3. 2つのリファレンスソースを使用してREF+とREF-を生成するMAX1498/MAX1499/MAX1477ベースのパネルメータの説明図

図4. 図3の回路における相対誤差対リファレンス電圧
図4. 図3の回路における相対誤差対リファレンス電圧