DN-200: CompactPCIバスのホットスワップ
CompactPCI™バスが好評を得ている理由の1つに、バックプレーンが通電中のままシステム電源を切らずに挿入、引き抜きが可能なホットスワップ(活線挿抜)があります。CompactPCIボードのホットスワップを行うのに必要な主要要素のひとつは、電源アイソレーション・コントローラです。
LTC®1643Lは、CompactPCIホットスワップ™規格PICMG™2.1の電源アイソレーション条件に適合するように設計されています。このチップは管理された方法でボードの電源電圧をオン/オフし、電源にグリッチを発生させたりシステムの他のボードをリセットしたりすることなく、安全にボードの挿入、引き抜きを行うことができます。また回路短絡に対する保護も行い、HEALTHY#信号により電源電圧の状態をレポートします。.
LTC1643の機能の概要
LTC1643の機能の概要は以下のとおりです。
- -12V、12V、3.3V、および5Vの4種類のCompactPCI電源をすべて制御します。
- プログラム可能なフォルドバック電流制限:出力電圧に応じた値でプログラム可能なアナログ電流制限。出力がグランドに短絡した場合は電流制限を下げて、電力消費や電源グリッチを最小限にを抑えます。
- プログラム可能な回路ブレーカ: 電源の電流制限状態が長く続くと回路ブレーカがトリップし、電源がターンオフしてFAULT#ピンは“L”になります。
- 電流制限電源立上げ:電源は電流制限状態で立ち上げることができます。これにより、大容量負荷が装荷されたボードを回路ブレーカをトリップさせないで立ち上げることができます。最大電源立上げ時間はTIMERピンでプログラム可能です。
- チップ内蔵の-12Vおよび12Vパワー・スイッチ
- BD_SEL#およびHEALTHY#信号
- 省スペースの16ピンSSOPパッケージ
標準的応用例
図1はLTC1643Lを使用した標準応用例です。
この電源は、5Vと3.3Vの電源経路にある外付けNチャネル・パス・トランジスタQ1、Q2によって制御されます。内部パス・トランジスタは12Vおよび-12Vの電源経路を制御します。抵抗R1、R2は過電流状態を検出し、R5とC1は電流制御ループ補償を行います。抵抗R3、R4はQ1とQ2での高周波数発振を防止します。コンデンサC2は電源立上げタイミングを決め、C6とC7は12Vおよび-12V入力をチップでバイパスします。ダイオードD2は、-12V電源上の-15Vより低い電圧サージからデバイスを保護します。
LTC1643の3.3V、5V、12V、-12V入力は、CompactPCIコネクタの中間長の電源ピンから供給されます。長い3.3V、5V、および(I/O)ピンは、バス・プリチャージ回路、PCIブリッジ・チップ、およびLOCAL_PCI_RESET#ロジックに電源供給します。BD_SEL#信号はONピンに、HEALTHY#信号はPWRGDピンに接続されています。HEALTHY#信号は PCI_RESET#信号と一緒になってLOCAL_PCI_RESET#信号が生成されます。
データ・バス・ラインの1Vのプリ・チャージ電圧は、LT®1117低ドロップアウト・レギュレータで生成されます。LT1117の出力は1.8Vに設定され、ダイオード1N4148によって電圧を降下させて1.0Vを生成します。プリ・チャージ回路は、40mAをソースおよびシンク可能です。
電源立上げシーケンス
図2に標準的な電源立上げシーケンスを示します。
BD_SEL#が“L”になるとパス・トランジスタがターンオンし、20μAの電流源がTIMERピンに接続されます。各パス・トランジスタの電流は電源の電流制限に達するまで増加します。各電源は、dv/dt=50µA/C1または電流制限と負荷容量によって決まる速度のいずれか遅いほうで立ち上がります。TIMERピンの電圧が上昇している間、電流制限フォールトは無視されます。4種類の電源電圧がすべて許容範囲内になると、HEALTHY#信号が“L”になります。
まとめ
LTC1643Lを使用したCompactPCIボードは、システムを通電したままボードを挿入したり引き抜くことができるホットスワップが可能です。LTC1643Lを使用した安全なホットスワップによって、IC、パワーFET、抵抗およびコンデンサの結線が非常に簡単になります。