高輝度LEDのための高効率電流駆動
要約
この記事では、高輝度LEDを流れる電流を安定させるための簡単な回路について説明します。市販されている高度に統合されたステップダウンスイッチングレギュレータ(MAX5035)を設計に用いて、LED電流を正確に制御することができます。MAX5035 DC-DCコンバータは、125kHzの固定周波数と、7.5V~76Vの幅広い入力電圧範囲で動作するため、特に自動車アプリケーションに最適です。MAX5035コンバータは、アナログ(リニア調光)または低周波のデューティサイクル変調(PWM調光)を用いて輝度制御を実現します。
高輝度LEDの背景
近年、さまざまなアプリケーションの光源として高輝度(HB) LEDが注目を集めています。HB LEDは、数万サイクル(最大10万時間)の動作が可能な堅牢で信頼性の高い半導体デバイスです。その性能は、従来の白熱ランプやハロゲンランプよりも数桁長い動作寿命に現われています。このため、HB-LEDは、車載用の照明、公共標識や商用の看板、建築用の照明などのアプリケーションで使用することができます。
HB LEDはPN接合デバイスで、順方向にバイアスをかけたときに、白、赤、緑、および青色光(その他にも黄色などいくつかの色が可能)を発光するよう特別に製造されています。LEDは、PN接合デバイスとして、従来型のダイオードと同様のV-I特性を示しますが、接合間でより大きな電圧降下を示します。順方向電圧がVF値に達するまでLEDには電流がほとんど流れません。このVF値は、赤色LEDの2.5Vから青色LEDの約4.5Vまでさまざまです。VFに達すると、電流の量は急増します(従来型のダイオードと同様)。したがって、設計者は電流制限を設けて破損のおそれを回避する必要があります。電流を制限するには、3つの基本的な方法がありますが、それぞれに長所と短所があります(表1)。
表1. 電流制限方法の比較
Current-Limit Method | Advantages | Disadvantages | Power Loss in Series Device¹ |
Resistor | 2.8W | ||
Active Linear Control | 2.8W | ||
Switching Regulator Control | <0.8W |
¹VF = 4V、ILED = 350mA、およびVIN = 12Vの白色LEDの場合
HB LEDの電源スイッチング
HB-LED電源(図1)は、高度に統合された定格出力電流が1Aの、固定周波数PWMスイッチングコンバータ(MAX5035)を使用しています。定格出力電流が500mAの同様のデバイス(MAX5033)もあります。これらのインダクタベースのステップダウンレギュレータICは、単一のLED、または合計電圧が12V以下の直列接続された複数LEDを流れる電流を正確に制御します。MAX5035のスイッチング周波数は125kHzで、その入力電圧範囲は76Vまで対応できます。(入力電圧が高ければ入力コンデンサやダイオードの定格も高くする必要があります)。このため、回路は幅広い入力電圧範囲にわたってLED電流を一定に保ちます。表2はこの回路設計の仕様の一覧を示しています。
図1. 制御電圧を0V~3.9Vで変化させることによって、MAX5035 LED電流ドライバは、LED_AとLED_K端子間に350mA~0mA (概算)の出力電流を生成します。
表2. 図1の回路の各パラメータ
Parameter | Value |
Minimum Input Voltage (V) | 7.5 (with most single LEDs) |
Maximum Input Voltage (V) | 30 (limited by D1, C8, and C9) |
Maximum Output Current (mA) | 350 (VCONTROL= 0V) |
Maximum Output Voltage (V) | 12 (350mA output, internally limited by MAX5035) |
Control Voltage Range (VCONTROL) (V) | 0 (full current) to 3.9 (fully dimmed) |
LED電流の制御は、図1の回路の制御端子に電圧を印加することによって実現されます(図2)。図3はこの制御手法の効率を示しています。
図2. 図1の回路におけるLED電流対制御電圧(回路のLED_AとLED_K端子間にじかに電流計を接続して測定)
図3. 図1の回路における効率対LED電流(直列の1~3個の350mA緑色LEDを駆動)
制御電圧は、並列接続された3個の電流検出抵抗の両端に生じる電流検出電圧と合計されて、ICのフィードバック(FB)端子に印加されます。次に、ICの内部制御ループがFBピンの電圧をおよそ1.22Vで一定に保ちます。制御電圧と電流検出電圧(R1とR5で調整)の合計は常に1.22Vに等しくなければならないので制御電圧が高ければ電流は少なくなります。
以下の式を用いて、上記の例以外の出力電流と制御電流を設計することができます。
ここで、VREF = 1.22V、およびRSENSE (並列のR2、R3、およびR4に相当) = 5Ω。
多くの場合、低周波数(50Hz~200Hz)で電流のパルスを出力し、パルスの幅を制御することによってLEDを調光すると効果的です(図4)。LEDはパルスごとに同じ輝度で点灯しますが、人間の目はパルス幅が狭くなると輝度の低下を感知します。さらに、LED電流の変動に伴って光スペクトルが偏移する振幅変調による調光とは違い、この方法では光スペクトルが一定に保たれます。
図4. データは図1の回路における低周波PWM調光の制御とLED電流波形を示します。CH1:VCONTROL; Ch3:ILED。負荷電圧(直列の3個の緑色LED)はおよそ9.5Vです。より小さい出力コンデンサを代用することによって、ターンオフ時のテール電流を軽減することができます。
図4は、0V~約3.9V範囲の方形波の制御波形に応じて100Hzでパルス出力されるLED電流を示しています。このような低周波PWM調光では、図2に示したリニア電流方式よりも標準効率が高くなります。
図5. 図1の回路のPCBレイアウト
結論
図1のIC(MAX5035またはMAX5033)は、高輝度LEDを駆動するための効率的で費用効果の高い定電流源の生成方法を提供します。この回路設計の利点をいくつか以下にまとめています。
- 高周波スイッチング(125kHz)によって小型リアクタンス部品(L1とC2)が使用可能
- 広い入力電圧範囲にわたって高効率を実現
- 最大12Vの出力電圧は3個もの直列接続された緑色HB LEDに対応
- ヒートシンクが不要
- 最大76Vの入力電圧は車載HB-LEDアプリケーションに対応可能
- 24Vの看板や建築用の照明アプリケーションに使用可能
- 電流検出抵抗R2、R3、およびR4の値を変更することによって出力電流を1Aまで拡大可能
- スイッチング用MOSFETを搭載する高度に統合された電源IC
- 制御入力によるLED電流のリニア振幅変調(リニア調光)
- 制御入力による低周波PWM調光