DN-258: モバイルPentium IIIマイクロプロセッサ用の高効率I/O電源

高性能ノートブック・コンピュータの需要は、さらに高速で高電力を消費するマイクロプロセッサの開発を加速しています。これらのマイクロプロセッサは高速の入力/出力(I/O)バスと高速クロックも必要とします。電源管理の観点からは、このことはコア用、I/O用、さらにクロック用の電源がさらに大きな電力を扱うことができなければならいことを意味します。このため、コアおよびI/O用のDC/DCコンバータはもっと効率よく動作し、できるだけ小さなものである必要があります。リニアテクノロジー社は、次世代Pentium® IIIマイクロプロセッサのI/O電力供給にLTC®1778を推奨します。I/O入力の電圧条件は1.25Vです。過渡(AC)許容差は±9%で、静的(DC)許容差は±5%です。負荷電流条件は次のとおりです。

プロセッサVTT:2.7A
830MチップセットVTT:0.7A

830Mチップセット・コアには次の2つの可能性があります。

1. 830Mエンジンを使った内部グラフィックス:3.6A
2. 外部AGPグラフィックス:1.6A
全最大I/O電流:7.0A

LTC1778は同期式降圧スイッチング・レギュレータ・コントローラで、2個の外部NチャネルMOSFETスイッチを同期ドライブします。本来の電流モード・コントローラ・アーキテクチャは可変電流制限を備えており、容易に補償することができ、セラミック出力コンデンサで安定し、電力を食うセンス抵抗は不要です。オプションの不連続モード動作は、軽負荷で効率を上げます。LTC1778は4V~36Vの広い入力範囲で動作し、0.8 • VIN~0.9 • VINの出力電圧を供給します。2MHzに近いスイッチング周波数まで選択することができるので、広い範囲で効率と部品サイズの間のトレードオフを図ることができます。フォールト保護機能にはパワーグッド出力、電流制限フォールドバック、オプションの短絡回路シャットダウン・タイマ、および過電圧ソフト・ラッチが含まれています。LTC1778は16ピンSSOPパッケージで供給されます。

モバイルPentium III I/O電源用の代表的なLTC1778アプリケーション回路を図1に示します。この回路は、5V~24Vの範囲の入力電源で動作し、小型で高効率になるように最適化されています。ボード・スペースを減らすため、デュアルNチャネルFDS6982S MOSFETを1個と、180µFの(パナソニックSP)出力コンデンサを1個だけ使用しています。標準立上り時間20nsの超高速内部ゲート・ドライバはスイッチング損失を減らすのに役立ち、強力なゲート・ドライバは導通損失を減らすのに役立ちます。

図1.LTC1778モバイルPentium III I/O電源

図1.LTC1778モバイルPentium III I/O電源

0Aから5.5Aへの負荷ステップに対する過渡応答を図2に示します。LTC1778は出力コンデンサ1個だけでI/O過渡仕様と静的仕様を容易に満たすことができることが分ります。フィードバック・ループを外部補償できるOPTI-LOOP補償により、LTC1778 には、アルミ電解、タンタル、POSCAP、NEOCAP、SP、およびセラミックなどの多種類の出力コンデンサを使うことができます。

図2.IL = 0A~5.5Aで、SP出力コンデンサ1個の場合の出力電圧過渡応答

図2.IL = 0A~5.5Aで、SP出力コンデンサ1個の場合の出力電圧過渡応答

150µFのPOSCAP出力コンデンサを2個使った場合の同じ出力過渡電圧を図3に示します。POSCAPの等価直列抵抗(ESR)は40mΩで、SPコンデンサの約2倍であることに注意してください。したがって、1個のSPコンデンサと同じ出力電圧過渡応答を達成するには2個のPOSCAPが必要です。

図3.IL = 0A~5.5Aで、POSCAP出力コンデンサ2個の場合の出力電圧過渡応答

図3.IL = 0A~5.5Aで、POSCAP出力コンデンサ2個の場合の出力電圧過渡応答

VIN =5VおよびVIN = 15V、VOUT = 1.25V、ILOAD = 10mA~7Aの場合の標準的効率曲線を図4に示します。5Aまでの負荷電流に対して効率は85%より高いことが分ります。VIN =12VでILOAD = 7Aの場合、MOSFETの測定されたケース温度はわずか70°Cです。この回路は0.5インチ×1インチのボード面積に実装することができます。

図4.図1の効率曲線

図4.図1の効率曲線

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Wei Chen