DN-247: サイズと熱ストレスを最小化する2フェーズ高効率モバイルCPU電源

はじめに

ノート・パソコンの計算能力に対する要求が増え、CPUのクロック周波数と消費電流が大幅に増加しました。これから登場するモバイルCPUは、複雑なコンピューティング・タスクを処理するために、25Aものコア電流を必要とします。従来の1フェーズ・ソリューションでは、このような高電流を供給するのは困難です。高電圧(最大21V)のアダプタ入力を直接CPU電源電圧(0.7V~1.8V)に変換する場合、1フェーズMOSFETドライバはdV/dtシュートスルー問題なしで高電流MOSFETを効率的にドライブできるほど強力ではありません。

MOSFETに過大な電力損失が生じるため、CPU付近の熱ストレスが増大し、バッテリ動作時間も短くなります。高電流(25A)インダクタの物理的サイズが許容できないほど大きくなり、大きな負荷ステップを処理するために、さらに多くの低ESR出力コンデンサが必要になります。また、インダクタ・パッド付近のPCBトレースに電流が集中し、信頼性の問題が発生します。このように、1フェーズ・ソリューションは効率が悪く、大型で、長期信頼性問題の原因となることがあります。

このアプリケーションに対しては、2フェーズ・スイッチングが最良のソリューションです。LTC®1709-7は、2つの同期式降圧段を180°の位相差でドライブする2フェーズ・コントローラで、スイッチング周波数を高くすることなく入出力コンデンサを低減します。比較的低いスイッチング周波数と内蔵の高電流MOSFETドライバにより、高い電源変換効率を達成し、バッテリ動作時間を最大限に延長します。出力リップル電流がキャンセルされるため、小さな値の低プロフィール・インダクタを使用して、高速負荷過渡応答と低い部品高さを実現できます。LTC1709-7は不連続導通モードおよびバースト・モード動作も備えており、CPUが「スリープ」モードにあるときの電力損失を最小限に抑えます。電流が2つの同一チャネル間で等しく分けられるため、熱が一様に分散され、PCBの長期信頼性が改善されます。

設計例

図1に25AモバイルCPUコア電源の回路図を示します。1個のIC、6個の小型SO-8 MOSFET、そして2個の1μH低プロフィール表面実装インダクタを使用するだけで、15V入力、1.6V/25Aの出力で約85%の効率を達成します。5A~25Aの負荷範囲にわたって、80%以上の効率を維持できます。

図1. 25AモバイルVRMの回路図

図1. 25AモバイルVRMの回路図

図2に測定された負荷過渡波形を示します。負荷電流は0Aから25Aまで変化します。スルーレートは30A/µsです。出力に4個のSPコンデンサ(270µF/2V)を接続するだけで、負荷過渡中の最大出力電圧変動が190mVP-P以下になります。抵抗R4およびR6により、効率を損なうことなくアクティブ電圧ポジショニングを実現します。アクティブ電圧ポジショニングを行わない場合は、さらに3個のSPコンデンサが必要です。

図2. 25Aの負荷および30A/µsのスルーレートでの負荷過渡波形

図2. 25Aの負荷および30A/µsのスルーレートでの負荷過渡波形

表1では、1フェーズ設計と2フェーズ設計の性能と主な部品選択を比較します。2フェーズ技術により、2個の270µFSP出力コンデンサと2個の10µFセラミック入力コンデンサを節約します。MOSFETの個数が同じで、スイッチング周波数が同じ場合、2フェーズ・ソリューションにより、はるかに高い効率が達成されます。2フェーズ回路の効率が高くなるほど、電流分布がより均一になり、MOSFETおよびインダクタでの温度上昇が大幅に低減されます。

表1. 1フェーズ・ソリューションと2フェーズ・ソリューションの比較(スイッチング周波数=200kHz)

1フェーズ 2フェーズ
MOSFET:IRF7811 6個(トップに2個、ボトムに4個) 6個(1フェーズにつき、トップに1個、ボトムに2個)
インダクタの個数およびサイズ(L×W×H、単位:mm) 1個、1μH/25A(14.6×14.6×9) 2個、1μH/13A(それぞれ、12.5×12.5×4.9)
入力コンデンサ 6個、10μF/35V、Y5Vコンデンサ 4個、10μF/35V、Y5Vコンデンサ
出力コンデンサ 6個のSPコンデンサ、270μF/2V 4個のSPコンデンサ、270μF/2V
効率:VIN=20V、VOUT=1.6V、IOUT=25A 80% 83%
最高温度*:
VIN=21V、
IOUT=25A、
VOUT=1.6V
インダクタ 110°C
70°C
MOSFET 104°C 70°C
 * 筐体なし、最大負荷動作から20分後。温度は部品の最上面にて測定。

まとめ

従来の1フェーズ・ソリューションと比較して、LTC1709-7ベースの2フェーズ・モバイルVRMは、より高い効率、小型サイズ、低ソリューション・コストを実現します。2フェーズ・ソリューションにより、バッテリ寿命を延長し、熱ストレスを抑え、長期信頼性を改善します。

著者

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Wei Chen