測定誤差を最小限にするためのDS27xx残量計の基板レイアウト技術

要約

ダラスセミコンダクタの残量計デバイスのDS27xxファミリは、バッテリへ、またはこれから流れる電流を高精度で測定するように設計されています。しかし、精度のレベルは、部品のレイアウトが注意深く設計されていないと、外付けセンス抵抗を使うときに低下してしまうことがあります。このアプリケーションノートは、外付けセンス抵抗を使用してダラスセミコンダクタの残量計デバイスを使う回路基板を設計するときに考慮しなければならない、いくつかの基板レイアウト技術を読者に説明しています。それは、考えられる誤差原因と、それらの効果をいかにして様々なレイアウト技術で減少させるかの両方について説明します。

イントロダクション

ダラスセミコンダクタの残量計は、アプリケーションを通じて電流の流れを測定してかつ積算する、非常に正確な方法を提供します。この測定技術の精度は、外付けセンス抵抗両端の電圧降下を正確に測定することに頼っています。このアプリケーションノートが説明しますように、抵抗の配置およびパターン配線の引き回しは、精度が得られるようにするために非常に重要です。

誤差原因

図1. DS27xx 測定システムの誤差原因
図1. DS27xx 測定システムの誤差原因

図1は、外付けセンス抵抗を使用した残量計で考えられる測定誤差の原因を示しています。他の接続は簡略化のために除外しています。残量計は、SNSとGNDのセンスラインがアプリケーションの電流経路のIHANDSETと接触するポイント間の電圧降下を測定することによって、電流を積算します。これらの接触ポイントは、理想的には直接センス抵抗にあるべきです。接触ポイントとセンス抵抗間のすべての配線パターンの抵抗、および回路内に表示されたTRACES/RとTRACEG/Rは、次式のように測定の利得誤差に影響を及ぼします。

配線パターンの抵抗は、通常、センス抵抗と比べても比較的小さいのですが、標準的なビアは、問題となる誤差を生じる数ミリオームの抵抗を持ちます。回路内に表示されたTRACEPACK-やTRACEBAT-の測定点外のあらゆる配線パターンの抵抗は、電流測定精度に関しては影響を及ぼしません。

第2の考え得る測定誤差の原因は、前述したグランドセンスポイントとデバイスの実際のGND端子との電圧差によって引き起こされます。この電圧降下は、GND端子と回路内でTRACEGNDと表示されたグランドセンスポイント間のすべての配線の抵抗を通して流れる、デバイスの動作電流IDD27XXによって生じます。この電流の流れは常に同じ方向ですので、次式のように残量計の測定でオフセット誤差を生じます。

測定オフセットは、残量計の精度を決定する場合に最も重要なタイプの誤差ですので、回路では接地抵抗の大きさを小さくすることが非常に重要になります。センス配線の抵抗TRACESNSは、このセンス経路を通じての電流の流れがありませんので、重要ではありません。

回路レイアウト

図2. DS27xx 回路レイアウトの注意事項
図2. DS27xx 回路レイアウトの注意事項

図2は、上述の設計方法を取り入れたDS27xxの残量計の参考レイアウトを示しています。図2に表示されたレイアウトのキーポイントは、次のとおりです。

(1) GND端子からセンス抵抗のBAT‐側までのパターン配線における抵抗は、パターン配線を短く保ち、またビアをまったく使用しないことで最小にしています。
(2) 両方のセンスラインは、センス抵抗でメイン電流経路と直接接触しています。メイン電流経路で占有されたごく短い基板配線パターンはありますが、ビアはありません。
(3) SNS端子接続の抵抗は重要ではありません。この配線パターンは長くても良く、測定精度に影響を及ぼすことなくビアを含むことができます。
(4) メイン電流経路におけるビアとすべての他の抵抗は、センスポイントがセンス抵抗と接触する外側にありますので、測定精度に影響を及ぼしません。

まとめ

基板のレイアウトは、外付けセンス抵抗を使用した残量計のデータシート精度を維持するために非常に重要です。このデバイスの測定におけるオフセット、あるいは利得誤差を生じるパターン配線の抵抗を最小限にするように注意しなければなりません。これらのレイアウト方法は、外付け抵抗を使用するデバイスにのみ適用されます。この回路は、内部に抵抗を持ったデバイスでは内蔵されていますので、ここで説明した誤差の原因による影響を受けません。