DN-101: LCDバックライト測定のための高精度広帯域電流プローブ

冷陰極蛍光管(CCFL)の評価と最適化には高い精度のAC電流の測定が要求されます。LCDディスプレーのバックライトに使われるCCFLは、測定可能な低いMHz領域の高調波を含み通常30kHzから70kHzで動作しています1。動作電流の実行値の正確な測定は電気的及び放射率効率算定とランプの長寿命を確保するために重要です。加えて1000VRMS以上という高いコモンモード電圧に対して、電流測定を実施できることが望まれます。この能力によってランプドライブ回路が原因であったとしても、ディスプレイと配線誘導損失の調査と認証が可能になります。

電流プローブ回路

図1の回路は前述の要求を満たします。この回路は10MHzまでの1%測定精度を提供する高精度アンプで、一般に入手できるクリップ型の電流プローブの信号調整をします。クリップ型のプローブは前述の驚Z「コモンモード電圧に対しても便利です。電流プローブは約3.75のゲインで動作しているA1をバイアスします。プローブが低出力インピーダンスのためインピーダンス整合の必要はありません。追加のアンプは全体で約200のゲインで広い帯域を維持するためにゲイン配分をしています。単体アンプでの構成はモノリシックのクワッド・アンプで誘発される可能性がある、クロストークが原因の如何なるエラーも回避します。D1とRxはアンプ全体のオフセットを調整するために、極性と値が選択されます。100Ωのトリマーはスケール・ファクタを決定するためのゲインを設定します。出力は熱変換型の広帯域RMS電圧メータをドライブします。実際にはこの回路はBNCの付いた5.7cm×2.5cm×2.5cmのケースに内蔵され電圧計に直接接続されます。ケーブルは使用しません。結果は1%精度で20kHzから10MHzのバンド幅の、クリップ型電流プローブになります。図2はヒューレット・パッカード社のHP-4195Aネットワーク・アナライザーで測定した、このプローブアンプの応答特性を示しています。

図1. 1%精度で20kHzから10MHzのバンド幅のCCFL測定用高精度クリップ型電流プローブ

図1. 1%精度で20kHzから10MHzのバンド幅のCCFL測定用高精度クリップ型電流プローブ

図2. HP4195Aの振幅 vs 周波数出力。20kHzか10MHzのバンド幅で1%(0.1dB)のエラー。10MHzから20MHz間の小さな乱れはテスト冶具に起因するもの。

図2. HP4195Aの振幅 vs 周波数出力。20kHzか10MHzのバンド幅で1%(0.1dB)のエラー。10MHzから20MHz間の小さな乱れはテスト冶具に起因するもの。

電流キャリブレータ

図3の回路は電流キャリブレータです。プローブアンプの較正ができ、プローブの精度を定期的に検査するために使うことができます。A1とA2はウィーンブリッジ発振器を形成します。発振器出力はA4とA5によって整流され、A3のDC基準電圧と比較されます。A3の出力はQ1を制御し、振幅安定閉ループを形成します。安定化された振幅は直列電流ループからの正確な10.00mA、60kHzの電流を供給するために、0.1%の100Ω抵抗で終端されます。調整は100Ω抵抗の両端が正確に1.000VRMSになるように、公称15kの抵抗を変えて行います。

図3. プローブ調整と精度検査のための電流キャリブレータ。60kHzで出力電流ループから10.00mA与える安定化発振器。

図3. プローブ調整と精度検査のための電流キャリブレータ。60kHzで出力電流ループから10.00mA与える安定化発振器。

使用においては、この電流プローブは1年を通じての1%の絶対精度をもった0.2%の基本安定性を示しました。精度を保つための唯一の保守要求事項は、電流プローブのクランプ部分をきれいに保ち、プローブを乱暴に、または不用意に扱うのを避けることです。2

参考資料

1 Williams、Jim、"Techniques for 92% Efficient LCD lluminatioリニアテクノロジー社 AN55、1993年8月

2 Private Communication。テクトロニクス社。

著者

Jim-Williams

Jim Williams

James M. Williams(1948年4月14日~2011年6月12日)はマサチューセッツ工科大学(1968年~1979年)、Philbrick、National Semiconductor(1979年~1982年)、Linear Technology Corporation(LTC)(1982年~2011年)でアナログ回路設計者ならびに技術文書の著者を務めていました。同氏は、書籍5冊、National Semiconductorのアプリケーション・ノート21件、Linear Technologyのアプリケーション・ノート62件、そしてEDNマガジンの記事125件など、アナログ回路設計に関する文書を350件以上執筆していました。同氏は、2011年6月10日に脳卒中を起こし、6月12日に他界しました。