4KbプラスタイムメモリiButton® DS1994Lの代替製品
要約
DS1994Lはマキシムの6インチウェハ工場で製造されていた製品であり、使用されている製造プロセスは最終的に旧式化して継続不能になりました。そのため、旧式のデバイスを新しい製造プロセスに移行するための極めて高い開発コストを考慮した結果、マキシムはDS1994Lの最終的な製造を行い、このデバイスを使用しているすべてのお客様に対して代替製品への移行を計画するようお願いしています。
はじめに
独自の機能セットを備えた4KbプラスタイムメモリiButtonのDS1994Lは、様々なアプリケーションで使用することができます。このアプリケーションノートでは、最初にDS1994Lの機能とアプリケーションを列挙した後、それらに適合可能な代替デバイスを提示します。その後、代替製品についてさらに詳細に解説します。
DS1994Lの機能
DS1994Lは、NV SRAM、RTCカウンタ、インターバルタイムカウンタ、サイクルカウンタに加えて、RTC、インターバルタイムカウンタ、およびサイクルカウンタ用のアラームレジスタを内蔵しています。インターバルタイムカウンタは、手動モードまたは自動モードで動作させることができます。手動モードの場合、ソフトウェアの制御下でカウンタの始動と停止を行います。自動モードの場合、1-Wire®ポートに電圧が印加されている限りカウンタが動作を継続します。サイクルカウンタは、1-Wireポートの電圧が除去されたときにインクリメントされます。それによって、DS1994Lは自動的に電源オン/オフのサイクル数および実装されている機器の動作時間を計測します。DS1994Lは、いずれかのカウンタがそれに対応するアラームレジスタ内の値に達したときにアラームを生成することができます。
3つのカウンタとそのアラームレジスタに対する不可逆な個別の書込み保護を備えているため、DS1994Lは、ソフトウェアライセンスの期限切れタイマーや時間制限のあるアクセストークンなどのアプリケーションに適しています。これら2つのアプリケーションでは、アラーム発生後にメモリへのアクセスをブロックすることができるユーザープログラマブル機能が有効です。この機能の組み合わせによって、表1に示すように多数のアプリケーションでDS1994Lが使用可能になっています。一部のアプリケーションについては、ソフトウェアに多少の更新を加えることで代替製品として機能させることが可能なデバイスが存在します。
Alternative Devices | ||||
DS1994 Application | DS1904L | DS1904L with DS1993L | DS1921G | DS1922L |
RTC module/token | ![]() |
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RTC with memory module/token | — | ![]() |
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Data token (NV SRAM) | — | ![]() |
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Equipment on/off cycle counter with service alarm | — | Extra SW1 | Extra SW1 | Extra SW1 |
Equipment operating time counter with service alarm | Extra SW2 | Extra SW3 | — | — |
Equipment scheduled service timer with alarm | — | Extra SW4 | ![]() |
Extra SW4 |
Secure time-limited access token | — | — | — | Extra SW5 |
Secure software license token with expiration timer | — | — | — | — |
凡例/注
代替デバイスは機能的代替物ですが、多少のソフトウェアの対応が必要です。
— 代替デバイスは機能的代替物ではありません。
- 代替デバイスは、ソフトウェアの制御下でメモリ内にカウンタを作成する必要があります。
- ソフトウェアの制御下でRTCカウンタを始動/停止する場合、代替デバイスは機能的代替物です。サービスアラームはリファレンス値のための空きメモリを必要とします。RTCカウンタ値とメモリ内に格納されたリファレンス値の比較によってアラームが生成されます。
- ソフトウェアの制御下でRTCカウンタを始動/停止する場合、代替デバイスは機能的代替物です。RTCカウンタ値とメモリ内に格納されたリファレンス値の比較によってアラームが生成されます。
- ソフトウェアの制御下でRTCカウンタを始動/停止する場合、代替デバイスは機能的代替物です。このアプローチは何もセキュリティ方式を使用しません。
- ソフトウェアの制御下でRTCカウンタを始動/停止する場合、代替デバイスは機能的代替物です。このアプローチはパスワードセキュリティを使用します。
代替製品
残念ながら、DS1994Lの機能をすべて含んだ単一の代替デバイスは存在しません。しかし、一部の機能がDS1994Lと共通するデバイスはあります。さらに、DS1994Lのアプリケーションの多くは、異なる機能セットをサポートするためのファームウェアの変更を行った場合、代替デバイスによって要求を満たすことが可能です。表2に、これらの代替デバイスとDS1994Lの機能の比較を示します。
Alternative Devices | |||||
Characteristic | DS1994L | DS1904L | DS1904L with DS1993L | DS1921G | DS1922L |
RTC format | 40b binary counter | 32b binary counter | 32b binary counter | BCD: seconds, minutes, hours | BCD: seconds, minutes, hours |
RTC resolution | 1/256 second | 1 second | 1 second | 1 second | 1 second |
Calendar | Software algorithm | Software algorithm | Software algorithm | BCD: day of week, date, month, year | BCD: date, month, year |
Interval timer | 40b binary counter, resolution 1/256 second | — | — | — | — |
Cycle counter | 32b binary | — | — | — | — |
RTC alarm | Yes, using conditional search ROM | — | — | Yes, using conditional search ROM | — |
Interval timer alarm | Yes | — | — | — | — |
Cycle counter alarm | Yes | — | — | — | — |
User memory | 512B | — | 512B | 512B | 512B |
Security | Irreversible write protection of RTC counter and alarm register, interval timer and alarm register, cycle counter and alarm register | — | — | — | Two 64b passwords (one for read, one for full access) |
Extras | • User-programmable memory access blocking upon alarm
![]() • Interrupt signaling upon alarm (an uncommon feature) |
— | — | • Temperature logger with 2KB logging memory, temperature histogram, and temperature alarm recording
![]() • Temperature alarm |
• Temperature logger with 8KB logging memory
![]() • Temperature alarm |
DS1904L
RTC iButtonのDS1904Lは、RTCカウンタをiButtonパッケージに収容した製品です。毎秒256回インクリメントする5バイトのカウンタの代わりに、DS1904Lは毎秒1回インクリメントする4バイトのカウンタを備えています。この時間の分解能以外は、DS1904LはDS1994LのRTCカウンタと機能的に互換性があります。カウンタの読み値と伝統的な時刻/日付フォーマットの間の変換を行うアルゴリズムは、DS1994Lの場合と同一です(アプリケーションノート517 「DS1371/DS1372/DS1374 32-Bit Binary Counter Time Conversion」を参照)。最も基本的なアプリケーションであるリアルタイムカウンタに関して、DS1904LはDS1994Lの約半分のコストで代替製品の役割を果たします。DS1904Lで機器の動作時間を計測するには、マイクロコントローラによる補助が必要です。マイクロコントローラによって、機器の電源オンごとにRTCの発振器を始動させ、機器の電源オフごとに発振器を停止させます。しかし、このアプローチを採用した場合、RTCカウンタは正しい時間を示すことができなくなります。
DS1904LとDS1993Lのモジュール
DS1904Lと4KbメモリiButtonのDS1993Lを組み合わせて1つの1-Wireデバイスクラスタにしたモジュールによって、DS1994LのRTCカウンタ機能とメモリを実現することができます。不足する主な機能としては、インターバルタイマー、サイクルタイマー、および3つのアラーム機能があります。アプリケーション環境によっては、これらの機能をソフトウェアで実装することも可能です。DS1904L単体の場合と同様、このモジュール式アプローチでもRTCカウンタは正しい時間を示すことができなくなります。このモジュールには、2つのiButtonの他に2つの表面実装iButtonクリップDS9094-SM5と1つのiButtonポートDS9092Rが含まれ、それらがプリント基板上に実装されます。電気機械的部品が追加されるため、DS1904L/DS1993LモジュールのコストはDS1994Lよりも高くなります。
DS1921G
Thermochron® iButtonのDS1921Gは、メモリ、RTC、およびRTCアラームがDS1994Lと共通しています。しかし、RTCおよび関連するアラームはBCDフォーマットを使用しており、秒、分、時間、日、月、および年をカウントするようになっています。このフォーマットは、秒のカウントから伝統的な時刻/日付フォーマットへの変換が必要ないため、RTCアラームアプリケーションの場合に便利です。逆に、DS1921GのRTCを機器の動作時間のカウンタとして使用しようとする場合は、このフォーマットは実用的ではありません。
DS1994Lと共通する機能の他に、DS1921Gは温度ヒストグラムと温度アラーム機能を備えたスタンドアロンの温度ロガーを実装しています。これらの機能が追加されているため、DS1921GのコストはDS1994Lよりも高くなっています。したがって、コストとメリットの比率が適切な場合に、DS1921Gが代替製品になる可能性があります。さらに、温度ロガー機能をアプリケーションで使用することが可能です。
DS1922L
8KBのデータログメモリを内蔵した温度ロガーiButtonのDS1922Lは、メモリおよびRTC (アラームなし)がDS1994Lと共通しています。しかし、RTCはBCDフォーマットを使用しており、秒、分、時間、日、月、および年をカウントするようになっています。これは、秒のカウントから伝統的な時刻/日付フォーマットへの変換が必要ないため、RTCアラームアプリケーションの場合に便利です。逆に、DS1922LのRTCを機器の動作時間のカウンタとして使用しようとする場合は、このフォーマットは実用的ではありません。
DS1994Lと共通する機能の他に、DS1922Lは温度アラーム機能を備えたスタンドアロンの温度ロガーとパスワードセキュリティを実装しています。これらの機能が追加され、大容量のデータロギングメモリを内蔵しているため、DS1922LのコストはDS1994Lよりも高くなっています。したがって、コストとメリットの比率が適切な場合に、DS1922Lが代替製品になる可能性があります。さらに、温度ロガーやパスワードセキュリティの機能をアプリケーションで使用することが可能です。
まとめ
DS1994Lには、ドロップインコンパチブルな代替デバイスは存在しません。それにもかかわらず、DS1994Lの標準的アプリケーションの多くについては、妥当な代替製品として機能することが可能なデバイスが存在します。いずれの場合も、ソフトウェアの対応が必要になります。最も基本的な代替製品はDS1904Lですが、4Kbのメモリを備えていません。DS1904L、DS1993L、2つのDS9094-SM5クリップ、およびiButtonポートのDS9092Rで構成されるモジュールは、RTC機能と4Kbのメモリを提供しますが、DS1994Lよりも多少コストが高くなります。DS1921GおよびDS1922Lは、DS1904L/DS1993Lモジュールとほとんど同じ汎用性を提供しますが、さらに温度ロギング機能を内蔵しているため、より高コストの代替製品になっています。