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Customer Case Study

世界初、空気圧を用いて「力覚」を伝える手術支援ロボット ~アナログ回路の約100%にADI製品を採用~

logo 2014年に発足した、東京工業大学、東京医科歯科大学発の医療ベンチャー。高度医療ロボット各種の開発・販売を手掛けている。
https://www.riverfieldinc.com/

顧客課題: クラスⅢの手術支援ロボット開発と、そのための部品調達
導入製品: オペアンプ、ADコンバータ、DAコンバータ、電源IC、DC/DCコンバータ
キーワード: ヘルステック, 手術支援ロボット,クラスⅢ,小型軽量化,スタートアップ,ソフトロボット

ロボットで日本の医療課題を解決

高齢化が進む一方、外科医の人数は減少傾向。人生100年時代を迎えた日本の大きな社会課題となっている。

外科医不足を補う手段として手術支援ロボットに期待が寄せられているが、既存の欧米製品は高価な上に、比較的小さな日本の手術室には収まりにくい。また、安全性の観点からも、高剛性な電気駆動ロボットは、柔らかな動きが求められる手術現場に不向きという声もある。

理想のロボット実現を目指して設立されたのが、リバーフィールド社である。東京工業大学、東京医科歯科大学発のベンチャーとして2014年に発足。いま、同社が手掛けるロボットが多くの注目を集めている。

前例のない開発だからこそ、厳しい困難に直面した。そこで、挑戦を支えたのがアナログ・デバイセズによる部品供給と、販売代理店・三共社のエンジニアサポートであった。

 

 

独自の空気圧制御技術で実現した、力覚フィードバックと小型軽量化

リバーフィールド社のコアテクノロジーは、空気圧の精密制御だ。空気圧変動による、しなやかな動きを駆動に採り入れることで、安全性に優れたソフトロボットが実現する。手術支援ロボットではこれを応用し、ロボットの手先の感触を執刀医に伝達する「力覚フィードバック」を実装した。

患者体内を肉眼で観察できない腹腔鏡手術では、これまでモニターに映し出される内視鏡画像だけが頼りであった。力覚フィードバックによって、臓器や血管をつかむ力覚を得られると、力加減がコントロールでき、それらの損傷リスクが軽減できる。経験の浅い医師でも安心して手術が行えるようになることが、外科医不足問題の一助になると考えられている。

 

空気圧駆動によって、小型軽量化、並びに低価格化も実現した。「電気駆動の欧米製ロボットは高さ200cm以上、重量も800kgくらいありますが、当社製品は高さ約150cm・重量約450kg。価格も約半額を目指しています。人手の少ない地方病院での導入が進むことで、医療の地域格差改善を目指せる」と、代表取締役社長の只野 耕太郎氏は話す。

エンジニアサポートによって乗り越えた「クラスⅢ」の壁

開発の行く手を阻んだのが、クラスⅢの壁であった。医療機器は、法律で4つのクラスに分類され、クラスが高いほど、人体へのリスクが高くなる。手術支援ロボットは、上から2つ目の「不具合が生じた場合、人体へのリスクが比較的高い」クラスⅢ(高度管理医療機器)だ。「クラスⅢとなると、万一のリスクが高いためサプライヤーさんも二の足を踏むことが多い。実際、数社に断られました」と、只野氏は振り返る。

そこで頼ったのが、同社の内視鏡ホルダロボットEMARO(エマロ)の開発時に協力を仰いだ三共社。アナログ・デバイセズの販売代理店である。営業部の佐藤 純一氏とは、EMARO開発以来の縁だ。

「お話を伺うと、アナログ回路が肝とのこと。まさにアナログ・デバイセズが得意とする領域なので相談したところ、規定に則り契約を交わせば、部品供給に問題はないとのことでした。弊社が得意とする分野でしたので、しっかりサポートできる自信がありました」と佐藤氏。

アナログ回路の約100%にアナログ・デバイセズを採用

アナログ・デバイセズからの部品供給に目途はついた。では、どの部品を選ぶべきか。

「アナログ・デバイセズさんの製品カテゴリーは幅広い。リニアテクノロジー社、マキシム社と統合されたことで、アナログ回路はアナログ・デバイセズ製品でほぼ賄えます」と設計開発部の叶野 聡氏。最終的には、オペアンプ、ADC、DAC、電源ICの他、DC/DCコンバータ、RS-422ラインドライバーなどにアナログ・デバイセズが採用された。アナログ回路の実に約100%を占める。

「部品選定を行ってみたものの、本当にベストなのかと問われれば自信がない。そこで、三共社さんには、設計の割と早い段階から相談しました。またブロックごとのバグ出しや改善のためのサポートも行ってもらえたことで、トラブルを未然に防ぎ、後戻りのない設計ができたんです」と叶野氏。

設計段階から量産段階を視野に入れたサポートを行うことで、信頼性を高め、上市後のクレームを防げると前出の佐藤氏は話す。「弊社が一番注力しているのが、ロバスト設計です。設計段階からお手伝いさせていただくことで、量産段階での問題を防げると考えています」

人命にかかわる医療機器。だからこそ、開発においても密接な信頼関係が大切だと只野氏は話す。「ドライなビジネス関係ではなく、対話を重ね、ビジョンを共有することで、お互い信頼できる関係を築けたことが、良い製品開発に繋がったと思います」

リバーフィールド社の挑戦、どこにいても安心して手術を受けられる社会

すでに次の製品開発を進めているリバーフィールド社。次の課題は、力覚フィードバックのさらなる向上と、周辺機材の完全内製化だ。「新たに内製化を進めているアームでも、三共社さんに部品選定の相談に乗ってもらっています。次は、マイコンもアナログ・デバイセズさんの製品を採用する予定です。アナログ・デバイセズさんが取り扱う製品カテゴリーにおいては、すべて同社製品を採用。IC部品全体で見ても、約90%がアナログ・デバイセズ製となります」と、開発部の鎌田 和明氏は話す。

同社が目指すのは、人とロボットが共生し、共創していく社会だ。「遠隔手術機能などの社会実装を進めることで、外科医不足や地域格差に貢献したいです。また、医療分野以外での展開も考えています。新たな挑戦を行うためには、試作の制作と評価をスピーディーに行い、素早く改良のサイクルを回す必要がある。私たちには、医療機器に対する理解と情熱を持つ三共社がいるので、新しい挑戦も心強いです」と只野社長。