AN-1389: リード・フレーム・チップ・スケール・パッケージ(LFCSP)のリワーク推奨手順
はじめに
このアプリケーション・ノートでは、リード・フレーム・チップ・スケール・パッケージ(LFCSP)をプリント基板(PCB)から取りはずすための推奨方法について説明します。LFCSP は、JEDEC MO-220 および MO-229 の概要に準拠しています。このアプリケーション・ノートは、AN-772 アプリケーション・ノート(リード・フレーム・チップ・スケール・パッケージ(LFCSP)の設計および製造ガイド)の補足版です。
パッケージの説明
LFCSP は、リード・フレーム・ベースのプラスチック密封パッケージで、フットプリントはチップまたはダイのサイズに近いため、チップ・スケールに分類されています(図 1 を参照)。通常、パッケージ内部の接続は、ワイヤ・ボンディングで実現されています。
図 1. LFCSP のカット断面図(等角図)
外部への電気的接続は、周囲のリードを PCB にハンダ付けして行います。LFCSP は、リードの他に大きな露出サーマル・パドルを備えています。このサーマル・パドルを PCB にハンダ付けすれば、放熱効果を高めることができます。
LFCSP 部品のリワーク
LFCSP 部品を PCB に取り付けた後に欠陥があることが判明した場合は、リワークを行って欠陥部品を取りはずし、機能するデバイスで置き換えます。デバイスを取りはずす前に、リードと露出サーマル・パドル(これもハンダ付けされている場合)の下側のハンダが液化するまで欠陥部品を加熱する必要があります。これにより、部品を基板から取りはずしやすくなります。
一般的なリワークには、以下の手順が含まれます。
- 基板の準備
- 部品の取りはずし
- PCB ランドの清掃
- ハンダ・ペーストの塗布
- 部品のアライメントと配置
- 部品の取り付け
- リワークの検査
手順 3 ~ 7 の詳細については、AN-772 アプリケーション・ノートを参照してください。
部品の取りはずしと層剥離
部品の取りはずし作業は LFCSP や PCB に機械的ストレスを与えることがあります。欠陥デバイスを取りはずす際は、PCB や近くの部品を損傷しないように注意してください。特に故障解析を行う予定がある場合は、取りはずすデバイス自体も損傷しないように注意してください。LFCSP 部品に過度のストレス(規定のピーク温度を超えて部品を加熱したり、熱源に過度に晒すなど)を加えると、パッケージの層剥離や外部の物理的損傷が生じることがあります(図 2 ~ 図 4 を参照)。詳細な解析が必要になる部品の場合、不適切な取りはずしによって層剥離が生じると、真の故障メカニズムを特定するのが困難になります。効果的な故障解析を行うには、欠陥部品を正しく取りはずす必要があります。
図 2. 不適切な取りはずしによる LFCSP ダイ・パッドの層剥離(走査型超音波顕微鏡による観察結果)
図 3. 過度なリワーク設定による損傷を示す LFCSP の低倍率の側面図(膨れた成形化合物)
図 4. 過度なリワーク設定による損傷を示している LFCSP の X 線画像(リフトアップしたダイ)
基板の準備
残留水分を取り除くために、リワーク作業前に PCB アセンブリをドライ・ベークすることを強くお勧めします。残留水分を取り除かないと、リフロー時にポップコーン・クラッキングによって部品が損傷することがあります。PCB アセンブリを 125 °C で 4 時間以上ベークします(ただし、これらの条件が PCB 上の他の部品の規定値を超えないことを前提とする)。この条件が他の部品の仕様を超える場合は、Joint Industry Standard IPC/JEDEC J-STD-033 で仕様規定されている別のベーク条件を使用してください。
部品の取りはずし
部品の取りはずし用に各種のツールを用意しています。部品の取りはずしには、ハンダがリフロー状態になるまで部品を加熱し、ハンダが液状に保たれている間に部品を機械的に取りはずすことが含まれています。プログラマブルな温風リワーク・システムは、温度と時間設定の制御機能を提供します。
リワークを行う場合は、部品の取り付けに使用する温度プロファイルに従います。リワーク温度は、耐湿レベル(MSL)ラベルに仕様規定されているピーク温度を超えてはいけません。完全にハンダがリフロー状態になる限り、(液相線範囲などの)加熱時間を短くしてもかまいません。パッケージ温度がハンダ・リフロー範囲になっている時間を 60 秒未満に抑えます。ピックアップ・ツールの真空圧を 0.5 kg/cm2 未満に維持して、完全なリフロー状態になる前に、部品やパッドが持ち上がらないようにします。PCBから取りはずした部品は再使用しないでください。
LFCSP 部品と PCB が損傷しないようにリワーク温度を制御してください。部品の周囲の領域をサーマル・テープでカバーすることで、保護性能が向上します。さらに、PCB を下側から加熱して、PCB の両面の温度差を小さくしてボードの反りを最小限に抑えることをお勧めします。
リワーク・ツールの設定を定義する場合は、温度プロファイルの特性評価を実行します。この特性評価は、特定の部品で初めてリワークを行う場合に特に重要です。また、ボディ・サイズや PCBの材質、構成、厚さなどが異なる LFCSP 部品は熱質量が異なるため、これらの部品にも特性評価を実行する必要があります。特性評価には、温度と時間、およびその他の機器ツールの設定の監視を含める必要があります(図 5 を参照)。LFCSP 部品の上部やPCB の上部など、基板アセンブリのさまざまな部分に熱電対を取り付けることができます(図 6 を参照)。温度-時間プロファイル・データを解析して、評価結果から部品取りはずしの作業パラメータを取得します。
図 5. 部品取りはずし評価の簡易フローチャート
図 6. 部品取りはずし特性評価セットアップの例