TNJ-041:マッチング回路を「足し算」で計算できるようになれば スミス・チャートでマッチングをとる原理が分かる(前編)

TNJ-041:マッチング回路を「足し算」で計算できるようになれば スミス・チャートでマッチングをとる原理が分かる(前編)

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石井 聡

はじめに

このところの2回の技術ノートTNJ-039, TNJ-040では、伝送線路、特性インピーダンス、そして反射係数などの話題をご提供してきました。折角なので続いて「マッチング」について考えてみたいと思います。マッチングはSパラメータやスミス・チャートと関連して説明されますが、「なんだか良く分からない」ということが多いものと思います。そこでマッチングは通常の回路計算から見ていくと、どのように考えられるもので(TNJ-041)、さらにそこから、スミス・チャートとのつながり(TNJ-042, TNJ-043)という流れで説明したいと思います。

 

最大電力の伝達条件「マッチング」をみてみる

図1のような超単純な回路を考えます。信号源抵抗RSは50Ωで、負荷側には負荷抵抗RLが接続されています。ここで最大電力が伝送する条件をADIsimPEでシミュレーションしてみます。シミュレーションは図2のようにAC解析でRLを1Ω ~ 1kΩでスイープ(変化。本来は「掃引」と訳します)して、RLで得られる電力を表示させます。信号源の大きさはピーク2V、実効値で1/√2Vです。

図3が結果ですが、RL= 50Ωのとき、つまりRS 〖=R〗Lのときに最大電力が伝達されていることが分かります。この状態/条件のことを「マッチング(整合)」しているといいます。この条件で信号源側から負荷側に最大電力が伝送できます。

ちなみにこの「最大電力伝送」の条件(信号源抵抗=負荷抵抗)は、よく電気・通信関係の国家試験に登場する問題です。本技術ノートの話題としては「信号源抵抗=負荷抵抗」の関係(マッチングしている状態)を覚えておけばいいですが、その問題を解くためには、式を負荷抵抗で一回微分する、という数学的テクニック(回路計算では定番といえる)が必要です。

 

いやまてよ、信号源抵抗がゼロでもいいだろう

「いや、ちょっとまてよ。信号源抵抗をゼロにすれば、それこそ最大の電力が送れるのでは?」と思うでしょう。確かに私も長らくそのように感じていました。「なぜ、わざわざ『信号源抵抗』なるものを考えるのだろうか」とも。

TNJ-039, TNJ-040での説明のように、「電気信号(電圧と電流)は波動として伝送線路を伝搬していき」、「伝搬する電圧と電流との関係が特性インピーダンス」です。そのため伝送線路の出力端においては、図4のクイズ(TNJ-040の図20再掲)の答えのように、特性インピーダンスが50Ωであれば、「信号源抵抗(相当)は50Ω」になります。

つまり伝送線路の出力端で最大電力を得る条件を考える場合には、出力端における「信号源抵抗=特性インピーダンス」による等価回路を(図4のように)考える必要があるということです。そのため、「どうしても、わざわざ『信号源抵抗』なるものを考える必要がある」というのが先の疑問の答えになります。

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図1. 信号源から負荷抵抗に最大電力を伝送する条件を考える回路
(ADIsimPE)


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図2. 図1のシミュレーション・パラメータ。 負荷抵抗値を変えている


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図3. 図1の負荷抵抗値を変化させて負荷抵抗の電力を計算した

 

図4. 2015年のアナログ技術セミナーで出題した クイズ
- その2(答えは②。TNJ-040の図20再掲)


それではミスマッチのときには最大電力伝送ができないものか

さて、現実のシステム、とくに高周波・アナログ回路ではRS 〖=R〗Lにできない(なっていない)場合が多いかと思います。高周波トランジスタの入力インピーダンスが「どのトランジスタでもぴったり50Ω」だなんてありえません。

図3を見ると、RLが50Ωの場合には10mWが伝送できていますが、RLが10Ωの場合には約半分の5.5mW程度しか伝送できません。この状態をミス・マッチング、また「ミスマッチ」と呼びます。この状態で、どうすれば最大電力を伝送できるのでしょうか。

答えはRS 〖≠R〗Lの状態から無理やり(?)RS 〖=R〗Lの状態に変換すればいいのです。これを「インピーダンス変換」といいます。

 

リアクタンスを付加することでインピーダンス変換が可能になる

インダクタやコンデンサは、電圧と電流の位相が90°異なる「電流の流れを妨げる」リアクタンス要素Xになります。リアクタンスはこの位相関係により、素子自体では電力を消費しません。充電と放電のプロセスを繰り返すというイメージです。リアクタンスは「Reactance」で、Reactという動詞から来ており、Reactは「反応する、反抗する」などの意味があります。ちなみに

  • 抵抗 R:Resistance ⇒ Resist(抵抗する/反抗する)
  • インピーダンス Z:Impedance ⇒ Impede(妨げる)

という意味であり、あらためてそれぞれの用語の起源を考えてみると、とても含蓄のある…というか、意味深い表現を(英語の原語でも)選んでいるなと感じるものです。とくに電力を消費しないリアクタンスがReact(反抗する)です…。「電力を消費しない」ことにReactという単語を採用したのですね…。

 

まずは「こうなる」という答えを示す

このリアクタンス素子を信号源抵抗RSと負荷抵抗RLの間に直並列に接続することで、インピーダンス変換をおこなうことができます。

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図5. 信号源抵抗と負荷抵抗が等しくないときに
リアクタンス 素子を追加するとマッチングが実現できる

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図6. 1MHzの周波数で最大電力伝達条件と同じ10mWが
負荷抵抗で得られている(横軸は周波数)


難しい話をこねくり回す前に、ふーん、という感じでまずは答えを示してみましょう。図5のインダクタとコンデンサ(リアクタンス)を追加した回路を用いると、最大電力の伝達(つまりマッチング/整合)を実現することができます。ただしある特定の(自分の希望する)周波数でしかマッチングをとることができません。1MHzを目的の周波数とし、負荷抵抗RL = 22Ωとしていますが、図6のシミュレーション結果のように1MHzで図3のRS =RLのときと同じ10mWが負荷抵抗RLで得られています。

リアクタンスは素子自体では電力を消費しません。そのためリアクタンス回路を上手く構成することで、信号源の電力をまるでポンプ・アップ(揚水)するように、負荷抵抗に供給することができるわけです。

 

つづいて計算で求めてみる

ここで簡単なインピーダンス計算をして、リアクタンス素子によるインピーダンス変換が実現できていることを確認してみましょう。インピーダンス変換に用いる定数は図5のものです。

まず信号源抵抗RSとインダクタLの並列接続を考えます。これは図7の破線部分に相当します。信号電圧源がついている回路ですが、回路理論では電圧源は「抵抗がゼロ」となりますので、極端な話しとして「ゼロVの電圧源」だと考えてしまえば、図7の端子①から見たインピーダンスは「信号源抵抗RSとインダクタLの並列接続」と考えることができます。

 

 

図7. 信号源抵抗RSとインダクタLの並列接続


まずインダクタLのリアクタンスXL

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ここでjは虚数単位で「位相がプラス90°回転する」ということを表しています。ここにf = 1MHz、L  = 7μHを代入すると、

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このインダクタが、信号源抵抗RS  = 50Ωと並列接続されるときの合成インピーダンスは、一般的な抵抗の並列接続の式

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と同じように計算できます。なおリアクタンスが入ってくると複素数(虚数単位jをつかった)での計算になります。複素数による並列接続の計算は、関数電卓をつかってがんばってもいいのですが、EXCELも結構便利に使えます。そこで今回は図8のようにEXCELで計算させてみました。

答えはZ = 21.81 + j24.80Ωとなりました。1MHzにおいて「50Ωの純抵抗と7μHのインダクタ(+43.98 Ωのリアクタンス)の並列接続」は、「21.81Ωの純抵抗と+24.80 Ωのリアクタンス)の直列接続」になるということです。この変形を「並直列変換」と呼びます。

ところでここで「純抵抗」という用語を用いました。インピーダンスを考えていくうえで、抵抗成分(電圧と電流の位相関係がゼロになる)とリアクタンス成分(電圧と電流の位相関係が90°になる)を分けて取り扱う必要があります。「純抵抗」とは、この抵抗成分を明示的に示したいがために「純」を追加しているのです。一般的にも「純抵抗」と呼びますので、覚えておくとよいでしょう。

EXCELで活用できる複素数計算関数群のリスト[1]も、表1に掲載しておきます。これだけ関数があれば、複素数計算のかなりのところまでEXCELで対応できますね。

図8. 信号源抵抗RSとインダクタLの並列接続 (C列はB列で使用した関数)

 


表1. EXCELで活用できる複素数計算関数 [1]

計算式  エクセル関数 コメント
A+B IMSUM(A,B)  
A-B IMSUB(A,B)  
A×B IMPRODUCT(A,B)  
A/B IMDIV(A,B)  
A^(n) IMPOWER(A,n)  ※n乗
|A| IMABS(A)  ※絶対値
ln(A) IMLN(A)  ※自然対数
e^(A) IMEXP(A)  ※オイラーの公式に相当
√A IMSQRT(A)  
sin(A) IMSIN(A)  
cos(A) IMCOS(A)  
Re(A) IMREAL(A)  
Im(A) IMAGINARY(A)  

 

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図9. 並直列変換で直列接続となった 信号源抵抗とインダクタのリアクタンス

 

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図10. 直列接続となった信号源抵抗とリアクタンスに負極性のリアクタンスを
直列に挿入してインピーダンス変換を実現する


さて、あらためて、答えは

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となりました。これを図9に示します。ここに直列に負極性のリアクタンス「-24.80 Ω」を挿入すれば

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が実現できる(インピーダンス変換によるマッチングが実現できる)わけですね。図10に、図9に対してこの負極性のリアクタンスを挿入するイメージを示します。

この負極性のリアクタンス「-24.80 Ω」は何で作ることができるでしょうか。コンデンサのリアクタンスXC

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となりますから、コンデンサ(容量)で負極性のリアクタンスを作ることができるのです。1MHzでXC =-24.80 Ωとなる容量Cを上記の式から逆算すると、C = 6.4nFと計算できます。これが図5の回路になるわけです。

 

計算結果をシミュレーションで確認してみる

この図10の回路の出力側(右側)から、回路側を見たインーダンスをシミュレーションする回路を図11に示します。図8に示したXL = +j24.80は、式(1)を用いてインダクタンスを逆算し、3.947μHとしました。回路の右側にあるのは、シミュレーションを収束させるため(エラー防止のため)のダミーの抵抗です。

シミュレーションでは、回路の出力側(右側)に1Aの定電流源を挿入し、端子の電圧値(と位相)を読むことで、V=Z×(1A)=Zという関係を用いて、電圧値として得られる結果がインピーダンスZになるように構成してあります。

シミュレーション結果を図12に示します。このようにして出力側から回路をみると、22Ωの信号源抵抗が(ただし1MHzの周波数において)見かけ上見えることになります。位相もゼロとなり純抵抗成分だけが見えていることが分かります。

これでマッチングが実現できるわけです。

 

マッチングは特定の周波数でしか成立しない

繰り返しますが、図12のように、マッチングが実現できる周波数は、特定の周波数のみです(ここでは1MHz)。ここは注意してください。

リアクタンスとなるインダクタンスと容量は、周波数特性をもっており、それぞれ周波数に正比例/反比例します。そのため、特定の周波数でしかマッチングの条件が成立しないのです。

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図11. 図10の右側から見たインピーダンスを測定するシミュレーション回路。
1Aの電流源からV=Z×(1A)=Zを求める

 

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図12. 負荷抵抗RL側からは22Ωの信号源抵抗に見える
(抵抗値が電圧Vとして得られている。横軸は周波数)

 

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図13. インピーダンス直交座標は直列接続の概念 (足し算の概念)しかない

 

 

並列接続を「足し算」の計算でおこないたい

直交座標で複数素子の接続を表すには「足し算」つまり直列接続しかない

上記の式(3)は「並列接続」の計算でした。それを複素数に拡張して計算したものが図8でした。

「ある回路素子に素子を追加する」という行為を、「インピーダンス直交座標上でグラフィカルにやる」ことを考えると、図13のように「足し算」つまり「直列接続の概念」しかありません。

インピーダンス直交座標は、純抵抗に相当する軸がX軸(実数軸)となり、リアクタンスに相当する軸がY軸(虚数軸)となり、これで任意のインピーダンスを図中でグラフィカルに計算でき、プロットできることになります。

たとえば、純抵抗R = 50ΩにインダクタL  = 7μHを直列に接続することを「周波数f = 1MHz」で考えます。このときのインダクタのリアクタンスは、先の式(1, 2)のとおり、XL = +j43.98Ωですから、これらの直列接続は

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となります(これはあたりまえかもしれません)。

これをインピーダンス直交座標上でやってみます。純抵抗R = 50Ωを起点(図13中の①になります)として、ここにインダクタL  = 7μHを直列に接続することを周波数f = 1MHzで考えると、これはインピーダンス直交座標上でY軸(虚数軸)の上方向に+43.98Ωだけ移動すれば(図13中の②になります)、その位置②がさきのインピーダンスZの位置になるわけです。

しかし図7や式(3)、そして表2でみてきた「並列接続の場合」はどのように考えればいいのでしょうか?!

 

並列接続は抵抗値の逆数(コンダクタンス)で表せば「足し算」になる

ふたつの素子の並列接続を足し算の計算で実現するには、抵抗の逆数(コンダクタンス)で計算すればよいのです。並列接続の式(3)を、逆数(コンダクタンス。Gx=1/Rx)で表すと

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して「足し算」で計算できます。コンダクタンスの式とすれば

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としてホントの「足し算」になります。これをリアクタンス/インピーダンスとして複素数に拡張すればいいだけのことなのです。ということで、純抵抗Rとコンダクタンス Gは

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という逆数の関係になっています。インピーダンスZの逆数をアドミッタンス Yと呼び

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この式中で記号の上につけた「→」は「ベクトル(大きさと位相がある)」という意味です。ここにはインピーダンス角(位相と考えればよいです)θがありますが、それは逆数にすると逆位相になりますので、

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式中の|  |は「絶対値(大きさだけ)」という意味です。リアクタンスXの逆数はサセプタンスBと呼び

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ここでもインピーダンス角(位相)θがあります。ここでの±90°(±j)も逆数にすると逆位相になりますので、

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これらアドミッタンス/コンダクタンス/サセプタンスの単位は[S](ジーメンス)になります。

 

抵抗値の逆数の計算で図7を考えれば足し算になる

このように逆数で、アドミッタンス/コンダクタンス/サセプタンスとして表せば、複数の素子の並列接続を「直列接続(的な…という意味。つまり足し算)の概念」で計算できるわけです。それでは実際に、先の図7の計算をしてみると、

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これを「足し算」すればいいだけで、

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このようすをアドミッタンス直交座標で図14のように表してみます。式(16)から分かるようにリアクタンスX ⃗の逆数のサセプタンスBは、逆数をとることによりインピーダンス角(位相)が逆転します。そのため(というより、以降で説明する「イミッタンス・チャート」を説明する流れをスムースにするために)、このアドミッタンス直交座標では実数軸の右をゼロ、虚数軸の上方向をマイナスにしてあります。

アドミッタンス直交座標で、コンダクタンスG = 1/50S = 0.02Sを起点として(図14中の①になります)、ここにインダクタL  = 7μHを並列に接続することを周波数f = 1MHzで考えます。

このインダクタLのリアクタンスは、式(1, 2)のとおりXL = +j43.98Ωですから、逆数をとったサセプタンスはBL =-j/43.98=-j0.0227 になります。これはアドミッタンス直交座標上をY軸(虚数軸)方向に0.0227Ωだけ、それも

「虚数軸の上方向をマイナス」

にしてあるため、上方向に移動すれば(図14中の②になります)、その位置②が式(17)のアドミッタンスYの位置になるわけです。これは「足し算」の計算です。

 

インピーダンスとアドミッタンスを読み替えながら「足し算」していけば直並列接続素子の合成計算が実現できる

ここまでの理解をもとに、図5から図10でおこなったインピーダンス変換の手順を、インピーダンス直交座標とアドミッタンス直交座標を用いながら「すべての計算を足し算」でおこなう方法を考えてみましょう。

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図14. アドミッタンス直交座標で並列接続を 足し算の概念で表せる
(実数軸の右がゼロ、 虚数軸は上方向がマイナスなので注意)

これが実はこの一連の技術ノートの最終目的である「スミス・チャートによるインピーダンス変換を理解する」ということに直結します。ここまでの説明をまとめてみると

  1. 直列接続であれば、インピーンダンス/純抵抗/リアクタンスで考えれば、「すべての計算を足し算」でおこなえる(図13のインピーダンス直交座標が使える)

  2. 並列接続であれば、アドミッタンス/コンダクタンス/サセプタンスで考えれば、「すべての計算を足し算」でおこなえる(図14のアドミッタンス直交座標が使える)

まず図7の信号源抵抗RSとインダクタLとの並列接続は、ここまでの説明どおり(図14を再度参照)、上記②の足し算で可能です。ただしすべてをアドミッタンス/コンダクタンス/サセプタンスで考えます。

つづいて図10の「負極性のリアクタンスを直列に挿入してインピーダンス変換を実現する」をおこなうためには、上記①の足し算で計算する必要があります。そこで図15のように、図14で得られた結果を、アドミッタンス⇒インピーダンスに(逆数をとることで)変換し、その答えに①を適用すればいいのです。図13でグラフィカルに足し算すればいいのです。

もし、さらにこの先にまた並列接続の素子があったなら、図16のように、図15の結果を、またインピーダンス⇒アドミッタンスに(逆数をとることで)変換し、その答えに②を適用すればいいのです。これを順々につづければ、図17のように直並列素子が従属接続された回路網のインピーダンスを計算することができるわけです。おなじように(適切な定数を用いれば)直並列素子の従属接続によるマッチングも実現できるわけですね。

 

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図15. 図14で得られたアドミッタンスを インピーダンスに変換する


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図16. 図15で得られたインピーダンスを アドミッタンスに変換する

 

 

 

 
図17. インピーダンス/アドミッタンスを繰り返し変換していけば
直並列接続された回路網のインピーダンスを計算できる

まとめ

このようにインピーダンス⇒アドミッタンス⇒インピーダンス…と逆数をとっていくことは、実は「並直列/直並列変換」をやっていることに相当します。
この手順は、「なんだか便利そうだな」と思う反面、「毎度逆数を取っていくことは面倒だな」と思うことでしょう。

たしかにそのとおりで、インピーダンス/アドミッタンスは複素数であるため、共役複素数などをつかって面倒な計算(図8でEXCELを例にして計算したようなもの)を毎回おこなっていく必要があります。

この面倒な計算をすることなく図表上でおこなえるものが、「イミッタンス・チャート(図18)」です。これはスミス・チャートの拡張版です。

イミッタンス(Immittance)とは「Impedance + Admittance」から作られた「造語」で、インピーダンスZの軸とアドミッタンスYの軸とが一つのグラフ上に描かれたものです。以降の技術ノートTNJ-042、TNJ-043ではスミス・チャート、そしてイミッタンス・チャートとの関係を説明し、イミッタンス・チャートでマッチング設計が実現できる理由についてみていきましょう。

でも、結局はこのイミッタンス・チャートでさえも、ここまで説明してきた「インピーダンス⇒アドミッタンス⇒インピーダンス…の並直列/直並列変換を繰り返す」という、図15~図17の手順を一つの図上でやっているだけなのです。

参考・引用文献

[1] http://godfoot.world.coocan.jp/complex.htm

 

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図18. イミッタンス・チャート