よくある質問(FAQ):無線デバイス用 RFディテクタ

著者:Louis E. Frenzel (通信/試験エディタ)

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  1.  RFディテクタとはどのようなものですか。
  2.  RFディテクタで何をするのでしょうか。
  3.  パワーの測定や制御はなぜそれほど重要なのでしょうか。
  4.  RFアプリケーションのパワーを測定する単位は何になるのでしょうか。
  5.  RFディテクタには主にどのような用途があるのでしょうか。
  6.  RFディテクタには他にどのような用途があるのでしょうか。
  7.  RFディテクタには、いろいろな種類があるのでしょうか。
  8.  ログRFディテクタの出力応答はどのようになるのでしょうか。
  9.  どちらのタイプのRFディテクタにするか決めるときの一般的な判断基準は何でしょうか。
  10.  温度安定度はどうでしょうか。
  11.  0dBクロスオーバー・ポイントを設計にどのように利用できるでしょうか。


Q. RFディテクタとはどのようなものですか?
A. RFディテクタはRF回路の出力の監視やサンプリングを行い、その時点のパワーに比例したDC出力電圧を発生します。


Q. RFディテクタで何をするのでしょうか?
A. RFディテクタは、主として無線システムにおけるRFパワーの測定と制御を行います。

Q. パワーの測定や制御はなぜそれほど重要なのでしょうか?
A. 無線信号を測定する場合に重要なものは、電圧レベルよりも直接RFパワーを測定することです。レシーバでは、信頼性の高い通信を実現するには信号強度が大切になります。トランスミッタでは、どのくらいのパワーが送信されるかが規格のガイドラインとして不可欠です。また、無線リンクのレンジや信頼性を維持するためにも重要です。

Q. RFアプリケーションのパワーを測定する単位は何になるのでしょうか。
A. 電力の単位はワット[W]ですが、ほとんどのRF/無線アプリケーションではパワーを[dBm](1mWを基準とするデシベル)で表します。

DBM = 10LOG [電力値(mW) / 1 mW]

絶対電力とdBmの関係を上記の数式に示します。この単位は、一般に50Ωのインピーダンスを基準にしています。


Q. RFディテクタには主にどのような用途があるのでしょうか。
A. RFディテクタは、主にトランスミッタの出力パワーの測定に使用されます。トランスミッタは多くの場合、法規的な仕様で規定されているため、RF出力パワーを測定する必要があります。また、FCC(米国連邦通信委員会)の規定により所定の最大パワー値を上回らないようにしなければなりません。トランスミッタのパワーは、ほとんどの場合自動的に制御されます。測定された出力パワーは帰還制御回路の設定レベルと比較され、必要に応じて調整することができます。

レシーバの場合、パワー測定値は一般にレシーバ信号強度インジケータ(RSSI)として利用されます。RSSI信号は、自動ゲイン制御(AGC)/自動レベル制御(ALC)回路でRF/IF信号チェーンの全体のゲインを制御するために使用されます。これによって、アナログ/デジタル変換および変調に最適な一定レベルの信号を維持することができます。

Q. RFディテクタには他にどのような用途があるのでしょうか。
A. 高出力RFアンプにおける電圧定在波比(VSWR)の測定や制御においても、よく利用されます。アンテナにインピーダンス不整合(高VSWR)が生じると、反射波が発生し、送信パワーが失われてしまいます。また、高VSWRによってアンプや送信ラインが損傷することもあります。

2個のログ・ディテクタを使用することで、出力信号の測定値から入力信号の測定値を引いて回路のパワー・ゲインを求めることができます。通常、ゲイン値を求めるときは出力パワーの測定値を入力測定値で割ります。しかし、除算はアナログ回路においては難しい算術演算です。値を対数で求めるようにすれば、単純な減算によって除算を行うことができます。パワーアンプのリニアライゼーションも一般的な用途の1つです。

Q. RFディテクタには、いろいろな種類があるのでしょうか。
A.基本的に2種類あります。ログ・タイプとRMSタイプです。ログ・タイプのディテクタは入力RFパワーを入力の対数に比例するDC電圧に変換し、出力を直接デシベルに換算します。RMSディテクタは、信号のRMS値に比例するDC出力を生成します。

Q. ログRFディテクタの出力応答はどのようになるのでしょうか。
A. ログ・ディテクタの代表的な応答曲線では、出力が対数デシベル入力範囲で直線性を示します(図1) 。曲線の傾きは、一般に20~25 mV/dBの範囲になります。

RF_Detectors_1

図1. 入力レベル(dBm

ログRFディテクタの代表的な出力曲線 (出力が対数デシベル入力範囲で直線性を示します。)


Q. どちらのタイプのRFディテクタにするか決めるときの一般的な判断基準は何でしょうか。
A. ディテクタを選択するときは、測定するRF信号の種類が最も重要な判断基準となります。一般的なパワー測定/制御アプリケーションでは、ログ・タイプが一番有効です。パルスRF信号の場合も、高速応答時間が得られるためログ・タイプが最適です。信号のクレスト・ファクタが高い、あるいは変動幅が広いアプリケーションでは、一般的にRMSタイプの方が良いでしょう。


クレスト・ファクタは、信号波形のRMS値に対するピーク値の比です。たとえば、高次の直交振幅変調(QAM)信号(16QAM、64QAM、256QAMなど)には高いクレスト・ファクタがあります。CDMAやWCDMAセルラ・システムなどで使用するスペクトル拡散信号や、WiMAXやWiBroなどの直交周波数分割多重(OFDM)信号では、高いクレスト・ファクタ(一般に10~13dB)がダイナミックに変化します。このようなアプリケーションでは、一般にRMSディテクタが有効です。



Q. 温度安定度はどうでしょうか。
A. 温度安定性は、温度に対する測定精度の変動によって表されます。温度安定性は一般にdB単位で表され、ディテクタ出力の電圧変動がそのままdBに変換されます。デバイスによっては温度安定度が全パワー範囲において最大±0.5dBになりますが、入力範囲のリニアな特性の上限付近にて0dBの安定した温度安定性が得られるものもあります。図2に、デュアル・ディテクタの代表的な温度誤差グラフを示します。この場合、0dBクロスオーバー・ポイントが-13dBmの入力振幅の位置にあります。

 

RF_Detectors_2

図2. 入力振幅(dBm)
デュアル・ログRFパワー・ディテクタの出力電圧の温度特性誤差曲線では、(at 2.2GHz、-40~+85°C)で変化が見られます。


Q. 0dBクロスオーバー・ポイントを設計にどのように利用できるでしょうか。
A. パワーアンプ(PA)の出力をモニタするには通常ディレクショナル・カプラを用いてサンプリングを行います。PAの最大出力パワーにおいて、カプラの出力レベルがRFディテクタの0dBクロスオーバー・ポイントと同じになる様にカップリング量(減衰量)を設定します。また、ディテクタの出力はA/Dコンバータ(ADC)でデジタル変換し、組込みコントローラに送信します。コントローラは、保存済みのキャリブレーション係数に基づいてパワー・レベルを計算します。

このパワーレベルは設定値と比較され、測定値が設定値より高かったり低かったりすると、コントローラはD/Aコンバータ(DAC)を使って可変ゲイン・アンプ(VGA)のゲインを制御します。これによって、PAの出力パワーが変化します。クロスオーバー・ポイントにおけるディテクタの温度ドリフトは、ほぼ0dBですので、ALCループによってPA出力パワーを極めて正確に制御できるようになります。

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図3. パワー・レベルとそのdBm値



これはElectric Design Magazineに掲載された記事を翻訳したものです。