LDO設計とアプリケーションの基礎
LDO設計とアプリケーションの基礎
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低ドロップアウト・レギュレータ(LDO)は、図1に示すように、電圧リファレンス、誤差アンプ、帰還分圧器、および直列パス・エレメント(通常はバイポーラまたはCMOSトランジスタ)から構成されます。出力電流はPMOSトランジスタによって制御され、PMOSトランジスタは誤差アンプによって同様に制御されます。このアンプは、出力からの帰還電圧をリファレンス電圧と比較し、その差を増幅します。帰還電圧がリファレンス電圧より低い場合は、PMOSデバイスのゲートがローに制御され、より多くの電流が流れて出力電圧が増大します。帰還電圧がリファレンス電圧より高い場合は、PMOSデバイスのゲートがハイに制御され、より少ない電流が流れて出力電圧が減少します。これは、誤差アンプ/パス・トランジスタの内部ポールと、出力コンデンサの等価直列抵抗(ESR)の外部ポールという、2つの主ポールをベースにしたクローズド・ループ・システムです。
アナログ・デバイセズのLDOは、推奨コンデンサの使用時に、仕様規定された動作温度と電圧範囲にわたって安定であるように設計されています。出力コンデンサのESRは、LDO制御ループの安定性に影響を与えます。安定性のためには、1Ω以下の最小ESRを推奨します。負荷電流の急激な変化に対するLDOの応答(つまり過渡応答)も、出力容量の影響を受けます。大きな値の出力コンデンサを使用すると、LDOの過渡応答は改善されますが、起動時間は増えることがあります。
図1:LDOは、入力電圧から必要な出力電圧レギュレーションを、低ドロップアウト(VinとVoutの差が小さい)で実現します。
LDOレギュレータは、主電源またはバッテリから低い出力電圧を得るために使用されます。この出力電圧は、理論上はライン/負荷変動に対して安定であり、周囲温度の変化に影響されず、時間に対して安定です。LDOでは、入力電圧と出力電圧の差(ドロップアウト電圧)をできるだけ低く抑える必要があります。たとえば、2.8VのLDOに接続されたリチウムイオン電池を使用するバッテリ駆動の設計では、バッテリ電圧が4.2V(完全充電)から3.0V(放電状態)まで降下します。一定の2.8V出力を提供するためには、LDOのドロップアウト電圧は200mV以下が必要です。システムによっては、LDOはポストレギュレーションに使用されます。LDOは、高効率スイッチング・レギュレータの出力に接続され、安定した一定の出力電圧を提供するだけでなく、ノイズ・フィルタ機能も提供します。
図2:ADP1740 ブロック図内部
選択基準は設計によって異なることがあります。しかし一般には、下記の順に選んでください。
- 入力電圧範囲
- 出力電圧:固定または調整可能
- ライン、負荷、温度に対する出力精度
- 負荷電流の条件
- ドロップアウト電圧
- 電源電圧変動除去比(PSRR)
- 出力ノイズ
- 静止電流とシャットダウン電流
LDOの設計は、一般に特定の負荷バイパス・コンデンサ値に対して最適化されています。負荷容量を推奨値よりも増やすと、負荷過渡応答は向上することがあります。しかし、大きな出力コンデンサを選択する場合は、入力バイパス・コンデンサもそれに合わせて増やす必要があります。注:入出力コンデンサは、LDOにできるだけ近づけて配置する必要があります。
高品質であればどんなセラミック・コンデンサでも使用できますが、LDOのデータシートに記載された最小容量と最大有効直列抵抗(ESR)の仕様を満たす必要があります。X5RまたはX7R誘電体を使用するセラミック・コンデンサは、温度安定性に優れ、電圧係数が低いため、特に推奨します。
パス・エレメントにバイポーラ・トランジスタを使用するLDOでは、出力負荷の増大とともにグラウンド電流も大きく増大し、負荷電流の~5%に達します。MOSFETベースのLDOは、負荷によるグラウンド電流の増大が最小限に抑えられるため、エネルギー効率に優れています。MOSFETベースのLDOのグラウンド電流は、一般的に定格負荷の0.1%を下回ります。
電源電圧変動除去比とは、入力電圧が変動するときに、LDOが出力電圧の変動を防ぐ能力を示します。通常、PSRRは特定の周波数で規定されます(例:120Hzで60dBの除去)。バッテリ・ベースのシステムでは、低いバッテリ電圧で高いPSRRを維持するLDOを使用する必要があります。
LDOは、パス・エレメントと出力コンデンサ回路によりインピーダンス・デバイダを形成しています。パス・エレメントの制御ループは、数十(あるいは数百)kHzまでの入力ノイズを除去します。高周波(1MHz以上)スイッチング・ノイズの除去は、主に出力バイパス・コンデンサが効果を発揮します。
出力ノイズの主な原因は、LDOの内部電圧リファレンスであり、通常は特定の帯域幅に対するμV rmsで指定されます(例:1~100kHzで25μV rms)。この低レベル・ノイズは、スイッチング・レギュレータからの高調波やスイッチング・トランジェントに比べてきわめて低いものです。一部のLDOは、グラウンドに接続されたコンデンサによってリファレンス電圧ノイズをフィルタ処理するバイパス・ピンを備えています。データシートに仕様規定された入力、出力、バイパス・コンデンサを使用する限り、通常、ノイズ・レベルが問題になることはありません。
アナログ・デバイセズのLDOは最小負荷電流を必要としません。しかし市場には、最小負荷(場合によっては数mA)を必要とするLDOも多数出回っています。
- LDOのターンオン/ターンオフを制御してシステム節電の効果が得られるイネーブル入力
- 突入電流を制限し、スタートアップ時に出力電圧の立上がり時間を制御し、電圧シーケンス制御を可能にするプログラマブルなソフト・スタート
- LDO出力が外部電圧レールまたは外部リファレンスに従うためのトラッキング機能
- 出力電圧ノイズを低減して電源電圧変動除去比を改善するために、外付けコンデンサを接続するバイパス・ピン
- 出力がレギュレーション中であることを知らせるパワーグッド出力
- LDOの温度が指定のレベルを超えた場合にLDOをターンオフするサーマル・シャットダウン
- LDOの出力電流と消費電力を制御する電流制限機能