設定自由度の高い複数出力のカスケード接続降圧コンバータによる60Vから0.8Vへの降圧

はじめに

LTC3372は、最大60Vの入力電圧から複数の低電圧レールを生成する必要のある、オートモーティブ用、電気通信用、工業用など、各種アプリケーションに適した高集積のDC/DCコンバータ・ソリューションです。LTC3372の熱的に強化された48ピン7mm × 7mmパッケージには、高電圧コンバータ・システムと低電圧コンバータ・システムの両方が組み込まれています。高電圧(HV)降圧コントローラは、最大60Vの入力電圧をピン設定により5Vまたは3.3Vに降圧することができます。この5Vまたは3.3Vの出力は、LTC3372に内蔵されている降圧レギュレータに電源を供給するために使われます。このレギュレータは、設定変更が可能な複数出力のマルチフェーズ低電圧(LV)モノリシック・レギュレータです。

LTC3372のこの低電圧部分は、並列接続可能な8個の1A電力段で構成されています。これらの電力段を様々な方法で組み合わせることにより、2個、3個、または4個のチャンネルを構成することができます。各チャンネルは、チャンネルあたりの負荷条件に応じて、1個から4個までの電力段で構成されます。図1に示すように、C3、C2、およびC1の各ビットを設定することにより、最大で8種類の異なる構成が可能です。このような高い柔軟性により、設計者は1つのICで様々な設計を行うことができ、同時に外付け部品を最小限に抑えて、全体的なフットプリントを小さくすることが可能です。更に、各チャンネルの出力を0.8V~LVINに設定することができます。スイッチング周波数の範囲は1MHz~3MHzです。

図1. LTC3372コンバータのブロック図

図1. LTC3372コンバータのブロック図

HVコントローラは外付けのNチャンネルMOSFETを駆動し、4.5V~60Vの入力電圧範囲で動作します。部品の選択とレイアウトに応じて、HVコンバータは20Aを超える負荷電流に対応できます。これは、HV出力のシステム負荷に加えて、LVレギュレータの要求を満たすのに十分な値です。HVコントローラだけをオンにして5Vを加えた場合、無負荷時のBurst Mode® IQは15µAで、軽負荷時にも高い効率が得られます。内部クロック分周器は、HVコンバータのスイッチング周波数をLV周波数の1/6に設定します。

6V~60V入力、45W、5出力のコンパクトなコンバータ

LTC3372をベースとしたソリューションのブロック図を図1に、回路図を図2に示します。LVレギュレータは、2MHzのスイッチング周波数で、HVコンバータの5V出力(VOUT(HV)と表示)から1.0V/3A、3.3V/1A、1.8V/2A、および2.5V/2Aの出力を生成します。5VのHVレールは、330kHzのスイッチング周波数でシステムに6.5Aを、LVレギュレータ入力に3.5Aを供給します。HVコンバータの入力電圧範囲は6V~60Vです。このコンバータには、最大サージ60Vの12Vオートモーティブ用バッテリ、48Vの電気通信用またはオートモーティブ用バッテリ、またはオフライン電源などを含め、広範な電源から電力を供給することができます。2MHzのスイッチング周波数を使用する高集積のLVレギュレータは、フットプリント2.2in2のソリューションを実現します。

図2. LVレギュレータを「ABC-D-EF-GH」構成にセットアップしたLTC3372コンバータ。ブロック図を図1に示します。

図2. LVレギュレータを「ABC-D-EF-GH」構成にセットアップしたLTC3372コンバータ。ブロック図を図1に示します。

図1と図2に示すように、ピンC3とC2をロー、ピンC1をハイに設定して、該当するSWノード同士を接続することにより、LVレギュレータは「ABC-D-EF-GH」構成でセットアップされます。最大負荷条件を満たすために十分な1A電力段を並列にすることによって(それ以上の電力段は使用しない)効率は50%負荷付近でピークに達し、典型的な持続負荷となります。更に多くの電力段を追加すれば全負荷時の効率は向上しますが、中間負荷時の効率が低下します。例えば、2つではなく4つの電力段を並列にして1.8V/2AのLVレールを構成した場合、FCMでは負荷が50%以下になると効率が低下します。図3を参照してください。バースト・モード動作を選択すると、広い負荷範囲にわたって高い効率が保たれます。負荷電流が1mA以上の場合、1.8V/2Aレールの効率は82.2%以上です。

図3. 図2に示すLVレギュレータの効率

図3. 図2に示すLVレギュレータの効率

LTC3372 HVの強力なゲート・ドライバは、12V入力で全負荷時効率94.6%、48V入力で効率90.9%のHV 5Vレールを提供します。図4を参照してください。バースト・モード動作を選択した場合、12V入力、1mA負荷における効率は90.1%です。

図4. 図2に示すHVコンバータの効率

図4. 図2に示すHVコンバータの効率

高集積度の小型パッケージ

LTC3372は、熱的に強化された48ピンの7mm × 7mmパッケージを採用しています。LTC3372は以上の他にも、外部クロックへのコントローラ同期や強制連続モード/バースト・モード動作/不連続モード(HVのみ)の各種軽負荷時動作モード設定に使用できるPLL/MODEピン、ウォッチドッグ入出力、ダイ温度モニタ用のTEMPピン、HVコンバータ用のPGOODピン、LVレギュレータ用のRSTBピンなど、様々な機能を備えています。

まとめ

LTC3372は、高い入力電圧から複数の出力を生成することのできる、柔軟な高集積のソリューションを設計者に提供します。そのHVコンバータは、最大60Vの入力から5Vまたは3.3Vの出力を生成します。更に、モノリシックLVレギュレータは、この中間レールから電流1A~4A、最小電圧0.8Vの出力を4つまで生成することができます。

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Mike Shriver

アナログ・デバイセズのシニア・アプリケーション・エンジニア。リニアテクノロジー(現在はアナログ・デバイセズの一部門)で17年以上の経験を有し、パワー・アプリケーションを担当。リニアテクノロジー入社前には、Artesyn TechnologiesとBest Power Technologyに勤務。