ミリ波によるイメージングとセンシング

空港からショッピング・モールに至るまで、脅威の検出を早期に、正確に、高速に行う必要性が高まっています。ミリ波(mmWave)イメージング技術は、人の流れに影響を及ぼすことなく必要とされる高い検出精度を提供できるよう、進化しています。
従来の静止型スキャナは、入り口が狭い場所ではかさばって邪魔になり、速度が遅いため多くの人を手早く処理できず、高価であるためほとんどの場所では実用性に欠けていました。対照的に、ミリ波スキャン技術を使用するウォークスルー(通り抜け)型のスキャナは、隠されている物体を高分解能で表示できるため、金属性の物を検知した場合にビープ音を発するだけの従来のウォークスルー・ゲートよりもはるかに優れています。ミリ波スキャナは、セキュリティ係員が更に検査する必要が生じた場合にどこを、そして何を探せばよいかを、高い正確さと速度でリアルタイムに示します。
ウォークスルー・システムの使用事例は増加を続け、現在では空港だけでなく、競技場、政府機関のセキュリティ部門、商業ビル、自治体ビルなどに広がっています。
ウォークスルー・イメージング・ソリューションに向けた進化
アナログ・デバイセズの業界最先端のディスクリートRF ICは、今日のシステムに比類のない性能を提供します。次世代のウォークスルー脅威検出に向けて、アナログ・デバイセズのミリ波イメージング技術は新しいチップセットを使用し、より高速のウォークスルー・ソリューションを提供します。
ウォークスルーに対応するミリ波イメージング・ソリューションに求められるもの
ミリ波ボディ・スキャン技術を公共の場所や商業スペースでより大きく展開できるよう拡張するには、3つの重要な課題があります。
ウォークスルー速度
安全性と検出精度
展開のし易さ
ウォークスルー
1人ずつ立ち止まり移動センサーの処理を待つのではなく、静止型センサーを使用することで、複数の人が通常の速度で通り抜けることができます。
安全性と検出精度
ミリ波イメージングは、感度レベルを調整して正確な検出が可能です。高分解能の空港向けスキャナは小さな物体を検出する必要がありますが、公共の場所でのスキャナの場合、必要なレベルの安全性を確保するには、火器や爆発物など大量の死傷者を出すような大型の物体を検知するだけで済みます。つまり、使用するセンサーの数は少なくて済むため、コストが削減でき展開も容易になります。また、システムが生成するデータも少ないため、人が停止することなく通り抜けることができるだけの処理速度を確保できます。
展開のし易さ
サイズとコストの両方を削減するには、ディスクリートのシグナル・チャンネルを置き換えるために、マルチチャンネルのRF ICが必要となります。RFの規制は国ごとに異なるため、センシング・ソリューションには、広い範囲の周波数およびセンシング位置に対応できる柔軟性が必要です。
アナログ・デバイセズのミリ波ボディ・スキャン・ソリューション
アナログ・デバイセズのウォークスルー用ボディ・スキャンを目的としたイメージング・チップセットは、スケーラブルで高性能の高集積化ソリューションを提供するため、設計を開発からプロトタイプ化、更には大量生産まで手早く簡潔に移行できます。
ミリ波イメージング・システムは、低消費電力のRF信号をターゲットに照射し、反射信号の振幅と位相を測定するという動作を行います。したがって、RF信号を広い周波数範囲で掃引することにより何層ものイメージを構築して、衣服の間に隠された物体を発見することができます。最終的には、空間的に配置された複数のソース(場合によっては数百個ものソース)からターゲットにシーケンシャルに信号を照射することで、詳細な3次元イメージを作成できます。
アナログ・デバイセズのミリ波チップセットは、ウォークスルー・システムで使用できるよう作製され最適化されています。アナログ・デバイセズのチップセットには以下の機能があります。
- 広い周波数範囲
- 大アレイ化のためのスケーラビリティ
- 高速スイッチング時間
- 低消費電力
シグナル・チェーン

主要製品

ADAR2001
10GHz~40GHzで動作する4チャンネル4×乗算器およびトランスミッタ。内蔵のステート・マシンにより、高速の周波数掃引、高調波フィルタの再構成、およびチャンネルの切り替えが可能です。

ADAR2004
10GHz~40GHzで動作する可変IFゲインの4チャンネル受信ミキサー。LOパスには4×乗算器があり、デバイスには高速の再構成およびスイッチングを容易にするステート・マシンも内蔵されています。

AD9083
JESD204B出力インターフェースを備えた16ビットA/Dコンバータ。ADAR2004との継ぎ目ないインターフェースが可能となるよう設計され、デジタル・ダウンコンバージョン機能および各チャンネルで3つの信号を同時に復調する機能を備えています。
大きなアレイに対しては、アナログ・デバイセズのミリ波イメージング・チップセットは、アドレス・ビット・ピンをワイヤ接続せずに単一のSPIチャンネルを使用して最大64チャンネルまで構成し順番に配列できるようにすることで、システムのスケーラビリティを促進します。
脅威検出以外の使用事例

脅威検出が使用事例の筆頭ですが、倉庫や建物内での紛失防止や、出荷工程でのパッケージ検査などのアプリケーションも増加しています。ミリ波センシング技術によれば、倉庫などの建物から退出する人をスキャンして、その人物が何も持ち出そうとしていないことを確認できます。これによって、商業ビルや公的機関のビルからの盗難による減益や知的財産の損失に対処できます。