不連続なパルスを使用する スイッチング・レギュレータ

スイッチング・レギュレータ製品の中には、スイッチング周波数が固定のものがあります。しかし、そうした製品でも常に連続したパルスのパターンが使われるとは限りません。条件によっては、パルスを停止することで不連続な制御が行われることがあるのです。出力リップル電圧やEMI(電磁干渉)について検討する際には、この点に注意する必要があります。

一般に、スイッチング・レギュレータは固定のスイッチング周波数か、調整が可能(可変)なスイッチング周波数を使用することによって電圧変換を行います。スイッチング・レギュレータ用のIC(コントローラICやレギュレータIC)のデータシートを見ると、スイッチング周波数の値が最初のページに記載されていることがほとんどです。このことは、スイッチング周波数の選択が非常に重要な意味を持つということを表しています。例えば、スイッチング周波数の値は、外付け受動部品の寸法やコストに影響を及ぼします。また、達成できる変換効率もスイッチング周波数の影響を受けます。スイッチング・レギュレータを構成する回路だけでなく、システム内の数多くの回路にとっても、スイッチング周波数の値は重要な意味を持ちます。通常、その値としては、システム全体の性能に最も影響が及びにくい周波数範囲の中から選択されます。選択した値に対応する周波数信号は、プリント基板の寄生効果の影響を受け、容量性/誘導性のカップリングによって回路の多くの部分に結合します。

回路設計者は、何らかの検討を経てスイッチング周波数を選択します。その選択が適切であったとしても、実際に回路を構築して評価を行った結果、その動作に驚かされるケースは少なくありません。設計した回路が、選択した周波数で想定どおりにスイッチングしないからです。そのような状況に遭遇する理由は2つ考えられます。それは、スイッチング・レギュレータ用のICが、バースト・モードまたはパルス・スキッピング・モードで動作しているというものです。以下、それぞれのモードについて説明します。

バースト・モード

多くのアプリケーションでは、出力の負荷が軽い場合でも非常に高い変換効率が求められます。必要な出力電力がわずか数mWである場合、スイッチング・レギュレータ自体で消費される電流との釣り合いを欠くことになります。効率を百分率で表してみると、その問題をより明示的に把握することができます。そうしたケースにおける効率を高めるために、スイッチング・レギュレータ用の多くのICはバースト・モードを備えています。アナログ・デバイセズの製品の場合、独自のBurst Mode®を採用しています。図1は、Burst Modeに対応するスイッチング・レギュレータの動作を示したものです。出力電圧、インダクタに流れる電流、スイッチング・ノードの電圧をプロットしています。スイッチング・ノードの動作を見ると、通常のスイッチング動作を経た後に長い休止フェーズに移ることがわかります。この休止フェーズの間、スイッチング・レギュレータ用のICが内蔵する多くの回路は、わずかな電力しか消費しないスリープ・モードで動作します。

図1. Burst Modeにおける電圧/電流波形

図1. Burst Modeにおける電圧/電流波形

Burst Modeで動作している際、出力電圧のリップルは通常より大きくなります。このリップルの周波数は、通常動作時にスイッチング周波数に応じて生じるリップルの周波数よりもかなり低くなります。バースト動作のフェーズでは、レギュレータ用のICや回路の状況に応じ、非常に少数のパルス(例えば1パルス)で動作したり、より多くのパルスで動作したりすることになります。通常は、設定した上側の閾値に出力電圧が達するまで、必要な数のパルスが生成されます。その次のフェーズでは、出力電圧が下側の閾値を下回るまで動作は休止します。その後、本来のスイッチング周波数でパルスが生成されてスイッチング動作が行われますが、周波数軸で見ると、バーストのフェーズと休止のフェーズによって決まるかなり低い周波数のスペクトルも現れることになります。

図2. Burst Modeの動作シミュレーションの結果。降圧レギュレータ(LT8620)を対象とし、LTspice®によって取得しました。

図2. Burst Modeの動作シミュレーションの結果。降圧レギュレータ(LT8620)を対象とし、LTspice®によって取得しました。

パルス・スキッピング・モード

パルス・スキッピング・モードにおいても、固定周波数のスイッチング動作とは異なる挙動が現れます。このモードは、様々なスイッチング・レギュレータで採用されています。多くのレギュレータでは、スイッチング・ノードにパルスが現れる度に、通常のタイミングで正常な最小値に基づく一定の量のエネルギーが、レギュレータの入力側から出力側に移動します。但し、その時点で負荷がエネルギーを必要としていなかったり、必要な量がほんのわずかであったりすると、出力電圧が過剰に上昇してしまいます。その状態を回避するために、一部のパルスをスキップするという制御が行われるのです。このパルス・スキッピング・モードで動作している際にも、出力には大きな電圧リップルが現れます。通常、パルス・スキッピング・モードは、フィードバック・ノードに配置された過電圧を検出するためのコンパレータの動作に応じて起動します。同モードで動作する際、常に2番目のパルスがスキップされるとすると、本来のスイッチング周波数の1/2に相当する周波数スペクトルが生成されることになります。

図3. パルス・スキッピング・モードの動作シミュレーションの結果。絶縁型フライバック・コンバータ(LT3573)の軽負荷時の動作を表しています。

図3. パルス・スキッピング・モードの動作シミュレーションの結果。絶縁型フライバック・コンバータ(LT3573)の軽負荷時の動作を表しています。

パルス・スキッピング・モードの目的は、出力電圧を一定の範囲内に保つことです。そのため、Burst Modeのように、多くのエネルギーを節約できるわけではありません。つまり、変換効率はわずかに向上するだけです。

他の要因で、パルスが不連続になることも

ここまでに説明したように、スイッチング・レギュレータが、設定したスイッチング周波数で動作していない場合には、バースト・モードまたはパルス・スキッピング・モードが働いている可能性があります。

ただ、それ以外の理由で不連続なパルスが発生しているケースも考えられます。例えば、制御ループが不安定になっている、電流量が制限値に達している、サーマル・シャットダウンの制限値を超えて発熱しているといった場合です。不連続なパルスが発生している場合には、そうした何らかの不具合が発生していることを疑ってみる必要があるでしょう。

まとめ

本稿で説明したように、スイッチング・レギュレータは、設定したスイッチング周波数とは異なる不連続なパルスによって動作することがあります。その種の動作は、一般的には軽負荷時に発生します。このような動作について理解しておけば、スイッチング・レギュレータの評価を行う際に戸惑うこともなくなります。たとえ不連続なパルスに基づいて動作していたとしても、そのレギュレータ回路は適切かつ確実に動作しているとの確信を持つことができるでしょう。

Frederik Dostal

Frederik Dostal

Frederik Dostalは、アナログ・デバイセズのパワー・マネージメント・グループ(ミュンヘン)に所属するフィールド・アプリケーション・エンジニアです。2009年に入社しました。ドイツのエアランゲン・ニュルンベルク大学でマイクロエレクトロニクスについて学び、2001年からパワー・マネージメント分野の業務に携わっています。アリゾナ州フェニックスで4年間にわたってスイッチング電源を担当。それ以外にも、多様なアプリケーション分野の業務に従事してきました。