LC フィルタを追加し、スイッチング・レギュレータのノイズを削減する

スイッチング・レギュレータのノイズは、さまざまなフィルタ技術を利用することで削減することができます。特に有効なものとしては、LC フィルタが挙げられます。レギュレータの出力ラインに直列に挿入したインダクタ(L)と、フィルタリング後の電圧のノードとグラウンドの間に接続されるコンデンサ(C)で構成されるフィルタです。このタイプの LC フィルタは、周波数領域に 2 つの極を持ちます。インダクタとコンデンサの値によって、スイッチング・レギュレータ(スイッチモード電源)のスイッチング周波数とスイッチング遷移周波数によるノイズを削減するようにコーナー周波数(この例では 2 つの極)を設定することができます。追加した LC 回路は、ローパス・フィルタとして機能します。

スイッチング・レギュレータの給電先となる電子機器がノイズの影響を受けやすいものである場合、追加のフィルタとして、図 1 の L2 と C3 で構成されるような LC フィルタがよく使われます。レギュレータの出力電圧には LC フィルタによるフィルタ処理が適用されます。通常、500 kHz ~ 3 MHz のスイッチング周波数に依存して生じる周波数の高いノイズと、50 MHz ~ 200MHzのスイッチング遷移周波数に依存して生じる周波数の高いノイズが同フィルタによって低減されます。

図 1. 出力側に LC フィルタを追加した降圧レギュレータ。ノイズの影響を受けやすい負荷に対して給電します。

ノイズの影響を受けやすい回路に降圧レギュレータから給電する場合、効果的にノイズを除去するためには、フィルタを追加する位置が非常に重要です。直感的には、図 1 のように、スイッチング・レギュレータの出力とノイズの影響を受けやすい負荷の間にフィルタを追加するのが適切だと思えるでしょう。ノイズの影響を受けやすい負荷としては、分解能の高い A/D コンバータ(ADC)、D/A コンバータ(DAC)、小信号を扱うオペアンプ、RF 回路用の電圧制御発振器(VCO)やフェーズ・ロック・ループ(PLL)が挙げられます。降圧レギュレータの出力に現れるリップル電圧は、追加したフィルタによって低減されます。ノード A にはリップル電圧が現れますが、ノード B では大きく減衰します。

実は、スイッチング・レギュレータが降圧型のものである場合、スイッチング・レギュレータの出力側ではなく入力側に LCフィルタを追加すれば、さらにノイズを削減することができます(図 2)。その理由は、降圧トポロジーの場合、出力側のノイズはさほど大きくないからです。インダクタ(図 2 の L1)はレギュレータの出力パスに直列に挿入されています(ノード A)。このノードには多少のリップル電圧が現れますが、通常、その振幅はわずか数 mV 程度です。正確な値は、使用するスイッチング周波数、入力電圧と出力電圧の値に加え、選択した L1 と C2 の値に大きく依存します。

図 2. LC フィルタを入力側に追加した回路。多くの場合、出力側にフィルタを追加するよりも、システムのノイズを大きく低減することができます。

一方、降圧トポロジーの入力側には非常に大きなノイズが存在します。スイッチ S1 がオフのとき、降圧レギュレータには電流は流れません。それに対し、スイッチ S1 がオンのときには大きな電流が流れます。入力コンデンサ C1 には、このような急激な電流の変化をやや緩和する効果があります。それでもなお、入力側にはかなり大きなノイズが存在すると言えるのです。

降圧レギュレータの入力側は負荷と直接的に接続されているわけではありません。したがって、入力側のノイズは、負荷に対して直接的に影響を及ぼすわけではありません。しかし、現実の回路では、入力側のノイズが負荷に結合してしまうということがよくあります。そうした結合を生じさせるメカニズムが、一般的な回路には数多く存在するということです。入力側の高速な交流電流の影響が、回路基板上の離れた位置まで及ぶということはよくあります。電流の変化は、回路の他の部品に対する誘導性のカップリングを生じさせます。最終的に、負荷回路にノイズの影響が及んでしまうということが起こりうるのです。

出力側よりも入力側にフィルタを追加した方がノイズの削減効果が高くなるというのは、降圧トポロジーに特有の現象です。昇圧やフライバックのトポロジーでは、出力側のノイズの方が大きくなります。そのため、ノイズを効果的に削減するには出力側に追加する LC フィルタが重要になります。

ノイズの影響を受けやすい負荷に給電する場合、スイッチング・レギュレータにフィルタ処理を追加するというのは有効な手段となります。このことは、技術者であれば誰もが知っている事実です。実際、そうしたフィルタ処理によってノイズを効果的に削減できます。ただ、多くの設計者は、降圧レギュレータをはじめとする特定の状況下では、入力側にフィルタを追加することで最高の性能が得られるという事実を認識していません。そのため、ほとんどの人は、直感的に降圧レギュレータと負荷の間のノードに注目します。

本稿で取り上げたのは、直感が最適なソリューションに結びつかない例の 1 つです。交流電流が生じるノードはホット・ループとも呼ばれています。常にホット・ループに注目し、その部分にフィルタを追加することが重要です。それにより、スイッチング・ノイズを効果的に削減することが可能になります。

Frederik Dostal

Frederik Dostal

Frederik Dostalは、ドイツのエアランゲン・ニュルンベルク大学でマイクロエレクトロニクスについて学びました。2001年にパワー・マネージメント事業の分野で働き始め、アリゾナ州フェニックスで4年間にわたってスイッチング電源を担当したほか、さまざまなアプリケーション分野の業務に携わってきました。2009年にADIに入社し、ミュンヘンのアナログ・デバイセズでパワー・マネージメントのフィールド・アプリケーション・エンジニアとして従事しています。