破壊行為というものは、自分が親に期待するアドバイスでもないし、自分が子供にしようとするアドバイスでもありませんよね。しかし、アナログ・デバイセズの多くのエンジニアにとっては、この言葉はちょっとしたスローガンであり、55年におよぶアナログ・デバイセズの歴史の中で、こうした行為が数多くのブレークスルーを生むという結果に結びついています。この記事は、そのようなブレークスルーの1つについての話です。
最初に、簡単に背景を説明しましょう。
私たちが扱っているいわゆるデジタルの世界は、実際には、この世界を作り上げている信号を検出することから始まります。例えば、あなたの使っている電話は完全なデジタル機器でしょうか。電話による通話、画像、ビデオ、あるいはテキストの背後にあるのは、いずれも送信と受信が必要なアナログ信号です。これらのアナログ信号は、そのプロセスのある時点でデジタルに変換されます。なぜなら、プロセッサ(電話の脳にあたります)はコンピュータのようなもので、0と1しか「理解」できないからです。
特定のアナログ信号(特に温度、重量、流量、歪みなど)の場合は、正確なデジタル信号への変換が他の信号より難しくなります。工場の製造現場や試験装置など、ノイズが多く電気的に活性な環境では、問題はさらに難しくなります。これは、騒がしい人たちの中で会話を続けようとする場合に例えてみると分かりやすいでしょう。それだけでも十分に難しいことですが、他の人々がフランス語を話していて、その内容を英語に翻訳(変換)し、もう1人の人に伝えることがあなたの仕事だと考えてみましょう。このような場合は正確さが損なわれる可能性があります。では、さらにドイツ語を話す人のために同じことをするように頼まれたとしたらどうでしょう。あるいは、オランダ語やタガログ語ではどうでしょう。1人ですべての言語に対応することは難しいでしょうから、他の人に助けを求める必要があります。
では、ここでノイズの多い工場内の話に戻しましょう。高感度のセンサーで温度を読み取って、それをデジタル信号に変換する必要のある場所は、数十か所にはなるでしょう。この他、製造者が、コンベヤ・システムを駆動する一連のベルトに生じる歪みを知らなければならないスポットも数十か所以上はあるでしょう。さらに、安全のため冷却液の流量をモニタする必要のある場所も数多くあります。これらを含めた様々なモニタリング・システムや制御システムは、連携して信号を処理したりそれをデジタルに変換したりする、数多くのチップが取り付けられた複数の基板上に置かれます。
これまで、これらの異なる信号(温度、重量、歪み、圧力など)には異なる基板が必要でした。もちろん、これらの施設の所有者と運用者は、常に競走上の優位性を求めています。しかし、アップグレードするということは、膨大なコストをかけて数百枚に上る基板を交換することを意味しました。私たちが話をしたあるマーケティング・エンジニアは、制御システムのコストの約60%は、設計、設置、およびトレーニングにかかるコストだと語りました。
数年前、アナログ・デバイセズは、ある大手メーカーからこの問題について相談を受けました。アナログ・デバイセズのエンジニアはこの問題を調査し、メーカーと密接に協力することで、破壊的な着想に至りました。異なるタイプの測定をそれぞれ1枚の基板で行うのではなく、これら様々なタイプのセンサーから送られてくる様々なタイプの信号を、1枚の基板ですべて処理できるとしたらどうなるでしょうか。現状の検出に関するさらに破壊的な発想は、異なる信号を処理できるように基板をプログラムできたらどうだろうかというものです。つまり、ある日には温度の処理を行い、次の日には、簡単なソフトウェアの再設定を行うことで圧力モニタからの信号を処理できるようにする、ということです(言ってみれば、先に例を挙げたパーティに出席した通訳者が、あなたがパンチボウルから飲み物をお代わりする間に、オランダ語やタガログ語を習得するようなものです)。
このコストと時間を節約するソリューションの核となるのが、AD4110-1「汎用入力アナログ・フロント・エンド」です。「汎用入力」というのは、ソリューションが複数の信号を処理できることを言います。「アナログ・フロント・エンド」とはセンサーに接続する部分であり、そのセンサーが何を測定するかは問いません。AD4110-1を選択した会社は、さらにその会社独自の汎用信号検出ソリューションをそのお客様に提供することができます。仕入れる基板が1種類で良いということは大量購入が可能なことを意味し、これは継続的にコスト削減ができることを意味します。習得すべきハードウェアが1種類しかないので、エンド・ユーザ向けのトレーニングとサポートのコストも削減されます。
この方法の背後には数多くの詳細な事項があることは、言うまでもありません。この詳細はAD4110-1の製品ページに記載されており、データシートをダウンロードすることもできます。アナログ・デバイセズは、この破壊的概念を少し味わってみたいと思われる設計者向けに、WindowsベースのPCにプラグイン可能なキットを販売しています。
破壊は良いものを生み出すこともあります。親としては心得ておきたいところです。