電源ラインの遮断/接続に向けたステップ・バイ・ステップの設計手法

本稿では、電気/電子システムの電源ラインを遮断/接続する方法について解説します。遮断/接続の処理は、一見すると単純なものであるかのように感じられるかもしれません。しかし、そのための回路を適切に設計するには、いくつもの事柄について考慮しなければなりません。

電気/電子システムの中には、必要に応じて電源ラインを遮断できるようにしなければならないものがあります。その一例としては、充電された電荷を維持するためにバッテリの電源を遮断する必要があるというケースが挙げられます。あるいは、活線から負荷を切り離せるようにしなければならないシステムも存在するでしょう。この種の処理は、メカニカル(機械式)スイッチを使用して実現するのが理想です。しかし、電気信号を使って遮断/接続の切り替えを行いたい場合には、電子スイッチを使用する方が都合が良いことが多いでしょう。そうした電子スイッチとしては、MOSFETを利用することができます。つまり、MOSFETをスイッチング素子として使用することで、スイッチ回路を構成するということです。実際、MOSFETを使用したディスクリートのソリューションに加え、電子スイッチ回路を容易に実現するための数多くのIC製品が提供されています。

図1. 電源ライン用のスイッチ回路。NチャンネルのMOSFETとドライバIC(LTC7003)を組み合わせて構成しています。

図1に示したのは、MOSFETとドライバICを組み合わせて構成した電源ライン用のスイッチ回路です。この種の回路を構成する場合、最初のステップとして、NチャンネルのMOSFETとPチャンネルのMOSFETのうちどちらをスイッチング素子として使用するのかを決定します。どちらのタイプのMOSFETでも使用できるのですが、NチャンネルのMOSFETにはPチャンネルのMOSFETと比べてオン抵抗が小さいという特徴があります。そのため、MOSFETがオンになっているときに生じる損失を小さく抑えることができます。その半面、NチャンネルのMOSFETを使う場合、駆動用の回路がやや複雑になります。なぜなら、NチャンネルのMOSFETのゲートには、電源ラインの電圧よりも高い電圧を印加しなければならないからです。つまり、ドライバIC(図では「LTC7003」)としては、チャージ・ポンプのような昇圧回路を内蔵しているものを使う必要があります。一方、PチャンネルのMOSFETを使用するのであれば、昇圧用のメカニズムは必要ありません。とはいえ、損失の問題は重要なので、NチャンネルのMOSFETが選択されるケースの方が多いはずです。実際、ドライバICとしてもNチャンネルのMOSFETに対応する製品が数多く提供されています。

2つ目のステップでは、1チップのソリューションを採用するのか、2チップのソリューションを採用するのかを決定します。前者の場合、1つのパッケージ内にMOSFETとドライバ回路が含まれる製品を使用します。後者では、単体のMOSFET製品とドライバIC製品を組み合わせて回路を構成します。1チップのソリューションであれば、MOSFETとドライバ回路があらかじめ最適な組み合わせで実装されています。通常、MOSFETの保護機能も集積されているので、使用時に過負荷の問題が生じることはありません。ただし、市場で入手できる1チップのソリューションの種類は限られています。そのため、コストが高くなりがちです。

3つ目のステップでは、単一のMOSFETにより、メカニカル・スイッチを使う場合と同等の十分な性能が得られるのか否かを判断します。MOSFETには、その構造に依存して必ずボディ・ダイオードが存在することになります。つまり、一方向の電流の遮断にしか対応できません。アプリケーションによっては、電源ラインを遮断する際、どちらの方向にも電流が流れないようにすることが求められるでしょう。つまり、電源ラインを完全に遮断しなければならないケースがあり得ます。その場合、図2に示すように、2個のMOSFETを直列かつ逆向きに接続(バック・ツー・バック接続)したソリューションが必要になります。

図2. 両方向の電流を完全に遮断することが可能な回路。バック・ツー・バック接続した2個のNチャンネルMOSFETを使用しています。

最後のステップでは、適切なICを選定します。つまり、MOSFET用のドライバIC、あるいはMOSFETとドライバを集積したICの中から適切なものを選ぶということです。ICの選定というのは単純なことのようにも思えますが、実際にはかなり煩雑な作業になります。この用途向けのIC(ロード・スイッチとも呼ばれます)が必要とされるケースは多々ありますが、様々な状況を想定した多くの種類の製品が提供されているとは言えません。多くの場合、アプリケーションに応じて、ホット・スワップ・コントローラ、電気ヒューズ、サージ・プロテクタ、理想ダイオード、電源パス・コントローラといったカテゴリの製品を組み合わせて最適な回路を構成することになります。また、モニタリング機能が必要になるケースも多いはずです。そうした製品の大半は、必要に応じて電流を遮断する(オン/オフ)ためのピンを備えています。アナログ・デバイセズの回路シミュレーション・ツールであるLTspice®を使用すれば、この種のソリューションの詳細な動作を確認することができます。そのシミュレーション結果によって、アプリケーションの仕様を満たしているか否かを判断することが可能です。

図3. LTspiceによるシミュレーション用の回路。この例では、低損失のPowerPathコントローラ「LTC4414」をロード・スイッチとして使用しています。

アプリケーションによっては、電源ラインを遮断するにあたって複雑な機能が必要になることがあります。オン/オフ制御用のピンを備えたドライバICを適切に選択すれば、その種の回路の設計を簡素化することが可能になります。

Frederik Dostal

Frederik Dostal

Frederik Dostalはドイツのエアランゲン大学でマイクロエレクトロニクスを専攻しました。2001年にパワー・マネージメント分野の仕事に就き、アリゾナ州フェニックスでの4年間にわたるスイッチモード電源業務への従事を含め、様々なアプリケーション分野を担当しています。2009年にアナログ・デバイセズに入社し、現在はミュンヘンにあるアナログ・デバイセズのパワー・マネージメント担当フィールド・アプリケーション・エンジニアです。