Silent Switcherを採用したμModuleレギュレータ、40V入力/3.5A出力で車載用途や産業用途に最適

低ノイズのSilent SwitcherアーキテクチャによるEMI設計の簡素化

車載、輸送、産業といった分野のアプリケーションは、ノイズの影響を受けやすいため、EMI(電磁妨害)を低く抑えた電源ソリューションが求められます。従来は、スイッチング信号の立上がり/立下がりエッジ(スイッチング・エッジ)が急峻にならないようにしたり、スイッチング周波数を下げたりすることで、EMIを制御していました。どちらの方法も、効率が低下する、最小オン/オフ時間が長くなる、サイズが大きくなるといった、望ましくない影響を伴います。EMIを抑制するためのフィルタ(EMIフィルタ)や金属シールドなどの代替手段を使用すると、基板上の実装面積の増加、コンポーネントの数の増加、組み立ての煩雑さの増大といった理由で、コストが大幅に増加します。また、熱管理やテストが複雑になるというデメリットも加わります。

アナログ・デバイセズは、そうしたスイッチング・レギュレータの課題を解決するために、µModule®製品を提供しています。µModuleは、ノイズの低減にも貢献するSiP(System inPackage)技術です。「LTM8003」は、このµModuleを適用したレギュレータ製品です。当社独自のSilent Switcher®アーキテクチャを採用しており、EMIを最小限に抑えつつ、高いスイッチング周波数と高い効率を両立します。Silent SwitcherのアーキテクチャとµModuleの内部レイアウトは、レギュレータの入力ループを最小化するように設計されています。そのため、スイッチング・エッジが非常に急峻な場合でも、スイッチングするノードのリンギングと、それに伴ってホット・ループに蓄積されるエネルギーが大きく低減されます。このような低ノイズのスイッチングが可能であることから、優れたEMI性能を実現しつつ、ACスイッチング損失を最小限に抑えることができます。つまり、効率を大きく損なうことなく、高いスイッチング周波数で動作させることが可能です。

このアーキテクチャとスペクトラム拡散周波数変調(SSFM)を組み合わせることによって、EMIフィルタの設計とレイアウトが大幅に簡素化されます。したがって、LTM8003は、ノイズの影響を受けやすい環境に最適な選択肢となります。図1は、LTM8003を使用したデモ用の回路です(評価用ボード「DC2416A」に実装されています)。入力側には、シンプルなEMIフィルタが配置されています。図2に示すように、この回路はCISPR 25のクラス5で求められる性能を、余裕を持って満たすことができます。

図1. LTM8003を使用したデモ用の回路。入力部にはシンプルなEMIフィルタを配置しています。この5V出力のレギュレータは、CISPR 25のクラス5で求められる性能を十分に満たします。
図1. LTM8003を使用したデモ用の回路。入力部にはシンプルなEMIフィルタを配置しています。この5V出力のレギュレータは、CISPR 25のクラス5で求められる性能を十分に満たします。
図2. 図1の回路を使用した評価結果。この回路は、CISPR 25のクラス5で定められた放射性EMIの規格を十分に満たします。
図2. 図1の回路を使用した評価結果。この回路は、CISPR 25のクラス5で定められた放射性EMIの規格を十分に満たします。

3.5Aの連続電流、6Aのピーク電流に対応可能な供給能力

LTM8003の内部レギュレータは、最大6Aのピーク出力電流を安全な状態で供給することができます。また、同ICを使用し、12Vの公称入力を基に、負荷に対して連続的に3.3Vまたは5Vの電圧、3.5Aの電流を供給する場合、熱管理の仕組み(気流やヒートシンク)を追加する必要はありません。そのままの状態で、産業用ロボット、FA(Factory Automation)機器、車載システムのバッテリ駆動といったアプリケーションのニーズを満たすことが可能です。

-40°C~150°Cの広い動作温度範囲

車載、産業、防衛といった分野のアプリケーションでは、周囲温度が105°Cを超える条件下で、連続的に安全に動作する電源回路を用意しなければなりません。あるいは、温度上昇に備えてかなりのヘッドルームを設けておくことが必要になります。LTM8003H(Hグレード・バージョン)は、-40°C~150°Cの内部動作温度範囲で仕様を満たすように設計されています。内部過熱保護(OTP:Over Temperature Protection)機能によってジャンクション温度を監視し、あまりにも高い場合にはスイッチングを停止します。

図3(a)に示したのは、7V~40Vという広範な入力電圧を基に、5V/3.5Aを出力するソリューションです。12Vの公称入力電圧における熱性能は、図3(b)のようになります。入力が12Vで、負荷に供給する電流が2Aの場合、標準的な効率は92%を超えます。

図3. LTM8003Hを使用したソリューション(a)。7V~40Vの入力を基に、5V/3.5Aの出力を得ることができます。(b)に示すように、熱性能を高めるために実装スペースを浪費する冷却用の部品を使用する必要がないことがわかります。
図3. LTM8003Hを使用したソリューション(a)。7V~40Vの入力を基に、5V/3.5Aの出力を得ることができます。(b)に示すように、熱性能を高めるために実装スペースを浪費する冷却用の部品を使用する必要がないことがわかります。

3.5V~35Vの入力から-5Vの負出力を生成

図4に示したのは、入力が公称12V、最大35Vで、出力が-5V/4Aのソリューションです。この場合、BIASピンはグラウンドに接続する必要があります。

図4. 5V~35V入力、-5V出力の電源回路とその効率。最大4Aの電流を供給できます。
図4. 5V~35V入力、-5V出力の電源回路とその効率。最大4Aの電流を供給できます。

まとめ

LTM8003は、Silent SwitcherのアーキテクチャとµModule技術を採用した降圧レギュレータです。入出力範囲が広く、低ノイズであり、3.5Aの電流を供給することができます。3.4V~40Vの入力から0.97V~18Vの出力を生成できるので、バッテリや工業用電源との間に他のレギュレータを追加する必要はありません。ピン配置は故障モード影響解析(FMEA:Failure Mode andEffect Analysis)に対応するように特別に設計されています。そのため、離接するピン同士が短絡していたり、1つのピンがグラウンドに短絡していたり、ピンがフローティングの状態にあったりしても、出力はレギュレーション電圧またはそれ以下に維持されます。各ピンは冗長構成になっており、電気的な接続が強化されています。つまり、車載、輸送などの分野のアプリケーションにおいて、振動、経年劣化、大きな温度変化により、ハンダ付けされた部分の強度が低下したり、外れたりしても、正常な動作が妨げられる可能性が低減されています。

LTM8003のパッケージはBGAで、そのサイズは 6.25mm × 9mm× 3.32mmです。入力側/出力側のコンデンサを含めたソリューション全体でも、LTM8003単体と比べて、それほど大きくないスペースに収まります。静止電流は25µA(標準値)で、-40°C~150°Cの広い動作温度範囲(Hグレードの場合)に対応しています。以上のような特徴を備えることから、同製品は、実装スペースに制約があり、動作環境が過酷で、静止電流が少ないことと信頼性が高いことが必須のアプリケーションに最適です。この製品を使用することにより、設計にかかる労力を最小限に抑えつつ、産業用ロボット、FA機器、航空用電子機器、車載システム向けの最も厳しい規格を満たすことができます。

図5. LTM8003を採用したソリューション。6.25mm × 9mmという同製品のフットプリントよりもわずかに広いスペースで、完全な降圧ソリューションを実装できます。
図5. LTM8003を採用したソリューション。6.25mm × 9mmという同製品のフットプリントよりもわずかに広いスペースで、完全な降圧ソリューションを実装できます。

Zhongming Ye

Zhongming Ye

Zhongming Yeは、アナログ・デバイセズ(カリフォルニア州ミルピタス)でパワー製品を担当するシニア・アプリケーション・エンジニアです。2009年にLinear Technology(現在はアナログ・デバイセズの傘下)に入社して以来、降圧/昇圧/フライバック/フォワード型コンバータを含む様々な製品のアプリケーション・サポートを担当しています。車載、医療、産業の各分野を対象とし、効率/出力密度/EMI性能に優れるパワー・コンバータやレギュレータなどのパワー・マネージメント製品に取り組んでいます。それ以前は、Intersilに3年間勤務し、絶縁型パワー製品向けのPWMコントローラを担当していました。カナダのキングストンにあるクイーンズ大学で電気工学の博士号を取得しています。IEEE Power ElectronicsSocietyのシニア・メンバーを務めていました。