Thought Leadership

Brendan O'Dowd
Brendan O'Dowd,

産業用オートメーション担当ゼネラル・マネージャ

著者について
Brendan O'Dowd
Brendan O'Dowdは、工場の設備編成において実際に生じる状況の検出、通信、解釈、分析に焦点を合わせたアナログ・デバイセズの産業用オートメーション・ビジネス部門のゼネラル・マネージャです。Brendanは工場環境における人間と機械の連携作業に関するエキスパートであると共に、劇的な変化を実現する技術革新がどのように未来の工場を創造していくのかを見通すエキスパートでもあります。技術産業分野で30年以上の経験を有しており、アナログ・デバイセズ入社前はTellabsとAppleに勤務していました。コーク工科大学で工学士号を、リムリック大学でコンピュータ工学の修士号を取得しています。
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リアルタイム制御、安全性、セキュリティが、工場に次の技術革新をもたらす


現在は、世界中に繁栄が広がっている状況にあります。そのことに、センサーの急増、クラウドへの接続性の拡大が組み合わさることで、工場のシステムや装置に急速な変化がもたらされています。

工場の運用方法は、強力な経済力と技術力の後押しを受けると急速に変化します。そうした状況においては、工場で使用される装置を供給するメーカーの中でも最も機敏なところが成功を収めます。そうしたメーカーは、工場の柔軟性を高め、安全性をより向上させるために、ネットワークに接続可能でよりインテリジェントなシステムを開発します。同時に、システムの接続性を強化しつつ、セキュリティを確保できるよう取り組みを行います。自動化システムや自律型システムを増強することにより、単純作業はもちろん、複雑な手作業についても、工場の労働者に頼らなくて済むようになります。

そうした新世代の産業用オートメーション装置の中核にあるのがICです。最先端のICは、ネットワーク環境における効率的なオペレーションに必要な処理、制御、センシングの機能を提供します。

アナログ・デバイセズは、アナログの世界とデジタルの世界の交点で常に成功を収めてきました。当社は、新たなFA装置に求められる技術的な変化に注目しています。そして、センシング、シグナル・コンディショニング、デジタル信号処理、有線/無線接続、ソフトウェアといった分野における当社の専門知識を、産業分野のお客様が直面する課題の解決に適用しています。それにより、お客様であるメーカーが、市場投入までの期間を短縮可能なアプリケーション指向のソリューションを開発できるように努めています。当社の目標は、産業用途向け製品の長期的な供給を保証することによって、レガシー・システムをサポートし続けながら、お客様が新たな技術を導入し、将来的に生じる変化にも備えられるようにすることです。

ここで注意すべきことが1つあります。それは、歓迎されるべき流れである世界的な繁栄の拡大を根源とし、近い将来、大規模な混乱がもたらされるということです。

繁栄の広がり

今世紀になって、それまで開発途上国だと見なされていた世界の国/地域で、可処分所得が著しく増加しました。その結果、工業製品の需要が世界的に拡大し、メーカーにはより一層の生産拡大を果たすよう圧力がかかるようになりました。それと同時に、各国/地域の需要の違いに対応するために、より多様な製品が求められるようになっています。

また、世界的に繁栄が広がったことから、人件費の安い単純労働者を確保することが難しくなりました。以前は、中国をはじめとする人件費の安い国/地域に製造拠点を移すということが盛んに行われていました。それから30年が経過し、製造企業が手にした1回限りの好況は、終焉を迎えつつあります。そうした国/地域でも人件費が向上し、高い水準の教育を受けた労働者は、低賃金の単純な作業には興味を示さなくなったからです。その結果、製造企業は、人件費が安い別の国/地域を探すのではなく、オートメーション装置を工場に配備することによって、競争力を高めようとしています。

スマートでコネクテッドな工場

新しい技術を利用することで、製造企業がFA機器に投じた費用から、追加の価値が得られるようになります。

小型かつ高性能の半導体センサーが急増すると共に接続性が高まることによって、マシン上では有用な大量のデータが生成され、製造プロセスの効率が向上しました。現在では、マシンのヘルス・モニタリングや予防保全といった、高度かつ新たなデータ分析アプリケーションに対するニーズがこれまでになく高まっています。同時に、プログラムが可能なハードウェアやソフトウェア定義型の電子機器が増えて、工場の製造プロセスやツールを迅速に構成(コンフィギュレーション)できるようになります。

将来の工場は、需要に対して素早く反応できるだけの敏捷性を備えるようになります。また、より自律的な運用が可能になり、より高い信頼性を確保できるようになります。必要なオペレータの数は減り、計画外のメンテナンスによって混乱するケースも減少します。

では、アナログICやデジタルICのうち、どのような製品によって、そうしたFAの新たなモデルが実現されるようになるのでしょうか。

センサーがヘルス・モニタリングの鍵に

MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術が進化したことにより、小型かつ堅牢で、振動や動きを正確に測定できる新たな種類のセンサーを開発することが可能になりました。例えば、ノイズが少なく、より広い帯域に対応する加速度センサーが開発されたことから、マシンにおけるわずかな振動の変化を捉えるために必要な、高い精度/確度が得られるようになりました。そのようなセンサーと解析用のソフトウェアを組み合わせることで、各種装置のオペレータは、故障が発生するかなり前の段階で潜在的な原因を特定し、予防的なメンテナンスを早めに実施できるようになります。

マシンのヘルス・モニタリングは、従来の工場のセッティングから制約を受けることのないアプリケーションです。モバイル機能やリモート機能を備える産業用装置の中には、診断の情報や動作の状態を中央のコントローラに報告するために、ワイヤレス接続を利用するものがあります。また、この種のアプリケーションは、バッテリや太陽エネルギーのような間欠的な電力源によって動作するものも少なくありません。その種のアプリケーションには、非常に消費電力が少ないセンサー・ソリューションが求められます。

製造フロアにおける高速なネットワーク接続

現在では、工場やプラントのあらゆる場所にセンサーが設置されるようになりました。その結果、リアルタイム性を備える大量のデータ・フローが構築されています。4~20mAの電流制御ループなど、センサー・ノードとPLC(Programmable Logic Controller)の間で使われてきた旧来の通信プロトコルは、超高速な産業用イーサネット・プロトコルに置き換えられつつあります。それにより、工場におけるOT(Operational Technology)インフラと、IT(Information Technology)を活用したエンタープライズ・システムの融合が進んでいます。

工場における新たな高速データ伝送に対する需要を受けて、メーカーは、現在使用している産業用イーサネット・プロトコルだけでなく、将来を見越して、IEEE 802.1 TSN(Time Sensitive Networking)もサポートできるシステムを構築する必要があります。TSNは、産業用リアルタイム通信向けの標準的な有線ネットワーク技術になると目されているからです。この課題に対応するために、アナログ・デバイセズは、システムのハードウェアを再設計することなく、ある1つのイーサネット・プロトコルから別のイーサネット・プロトコルへの移行を可能にするイーサネット・プラットフォームを提供しています。

ワイヤによる接続が困難な場所に設置されたセンサー・ノードに対応するためには、堅牢なワイヤレス・センサー・ネットワーク技術が必要です。堅牢なIoT(Internet of Things)アプリケーション向けに設計されたSmartMesh®やWirelessHARTなどのワイヤレス・ネットワーク技術は、ワイヤを使うことなく産業用オートメーション装置を接続するための確実かつ高性能な方法を提供します。

自律型マシンに向けた安全システム

自動運転車やコボット(協働ロボット)は、工場や倉庫におけるオートメーション・アプリケーションの進化に大きく貢献することでしょう。ただ、それらを活用するためには、安全性を保証することが1つの課題になります。そのためには、自律型マシンが自身の周辺について完全に認識できていることを確実に保証しなければなりません。これについては、高度なレーダー技術やライダー技術が役立ちます。それらの技術によって、物体の検出や近接検出、3Dマッピングのアプリケーションにおける確度や精度の基準が引き上げられています。

オンラインの攻撃から工場を守る

接続性が拡大すると、工場の責任者から金銭をゆすり取ろうとするハッカー(クラッカー)や、価値の高い産業用システムに混乱をもたらすことを任務とする国家主導の攻撃者による攻撃のリスクが高まります。

工場の責任者がより多くのノードをクラウドに接続するということは、ハッカーの侵入を許す新たなポイントが増えるということを意味します。ICを使用した接続システムには、組み込みシステム用に最適化した堅牢なセキュリティ対策が必要です。アナログ・デバイセズは、産業用システムに対する新たなセキュリティの脅威に対処可能なソリューションを開発しています。それにより、お客様の産業用インフラを将来も利用できるようにすることを目指しています。

構成が可能な製造プロセス

工場は、将来的には新たな需要や新たなワークフローに迅速に適応できるものにならなければなりません。それに向けて鍵になるのは、産業用オートメーション製品に対し、アーキテクチャのレベルで柔軟性を盛り込むことです。柔軟性に対するニーズに応えることが可能なアプローチの1つが、ソフトウェア定義型のI/Oです。すなわち、配線を変更することなく、アナログまたはデジタル、入力または出力として構成することが可能なI/Oは非常に有用です。

アナログ・デバイセズは、現在の技術を発展させて、堅牢性と柔軟性に優れる産業用の出力ソリューションを既に提供しています。そのソリューションでは、ソフトウェアによってあらゆるアナログ出力の構成を行うことが可能であり、様々な産業用規格に対応することができます。

アナログ、デジタル、ソフトウェアの融合

産業用オートメーション装置の開発/製造には、より高度な技術が適用されるようになっています。それを牽引しているのは、スループット、コンフィギュラビリティ、安全性、クラウドとの統合性をより高めたいというエンド・ユーザーのニーズです。同時に、より高度な設計の新製品を迅速に市場に投入しなければならないという圧力がより高まっています。

このような状況に対し、アナログ・デバイセズは、お客様に総合的なソリューションを提供することで対処したいと考えています。市場のニーズを念頭に置き、マシンのヘルス・モニタリングや、高速な接続、安全性/セキュリティを確保するためのシステムを備えるソリューションを提供するべく取り組みを進めています。そうしたソリューションは、アナログ、ミックスド・シグナル、デジタルの各コンポーネントとファームウェア/ソフトウェアを組み合わせることによって実現します。それにより、お客様が近く直面するであろう設計/開発上の問題を解決し、現在/未来の技術的な課題や経済的な課題に対して迅速かつ効果的に対処できるように尽力します。