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閉じる複雑化する5G/6Gの無線機器設計への対応
6G(第6世代移動通信システム)に向けた競争は加速しています。しかし、その進歩を阻害したり遅らせたりする可能性のある課題も生じています。それは、無線機器設計が大幅に複雑化しているというものです。現在、モバイル事業を展開する通信事業者は、コストと消費電力を削減しつつ、より高速で柔軟性に優れるネットワークを提供しなければならないというプレッシャーにさらされています。また、インフラの共有と帯域の拡大によって、業界には大きな変化が訪れています。その結果、より少ないリソースで、より優れた機能/性能を提供可能な無線技術が求められるようになりました。
現在は、複雑さの増大が常態化している状況にあります。通信事業者や機器メーカーは、どうすれば設計を簡素化し、導入を加速することができるのでしょう。言い換えれば、求められるモバイル・ネットワークの未来を実現するにはどうすればよいのでしょうか。
なぜ、複雑さが爆発的に増大しているのか?
5Gから6Gに移行すれば通信速度が向上します。しかし、そのためにはより性能の高い無線ユニット(RU:Radio Unit)を開発しなければなりません。結果として、より高度な設計が求められることになります。現在、通信事業者は6GHz以下のレベルから、より高い周波数まで、様々な帯域を活用するようになっています。それに伴い、マクロ・サイトやスモール・セル、分散アンテナ・システム(DAS:Distributed Antenna System)を対象として無線ネットワークが展開されています。それらの多くは、複数の通信事業者が同じハードウェアを共有する形で運用されています。インフラの共有が効率的な手法であることは間違いありません。しかし、複数の帯域に対応する機能を単一のRUに統合しなければならないことから、無線機器設計の複雑さが増大します。
従来、新たな無線システムの開発には18~24ヵ月もの期間が必要でした。使用される帯域が増加し、システム構成の多様化が進んだことで、開発期間は更に長くなっています。機器メーカーにとって、開発が長期化するということは、開発コストが増加すると共に、製品を市場に投入するまでの時間(TTM:Time to Market)が長くなるということを意味します。通信事業者も、ネットワークを展開し、収益を得るまでにより長い時間を要することになります。このように、複雑さはより重大なボトルネックになりました。そのため、通信業界は実効性の高い解決策を必要としています。
次世代の無線の課題を解決する方法
通信事業者と機器メーカーは、将来の6Gに対するニーズを満たすために無線機器設計を見直す必要があります。例えば、以下のような事柄について検討しなければなりません。
- 設計の簡素化:システムに必要な要素を統合するのは、ハードルの高い作業だと言えます。従来は、そのことが開発期間が長くなる原因になっていました。したがって、今後は統合のプロセスを簡素化することが不可欠になります。
- 開発期間の短縮:競争が激化しているなか、通信事業者はネットワークを刷新する準備を進めています。その刷新に向けては、TTMを短縮することが極めて重要になります。
- 柔軟性とプログラマビリティの実現:新たな無線機としては、複数の周波数帯、構成(コンフィギュレーション)、アプリケーションをサポートするものを開発する必要があります。それらのバリエーションについては、設計に柔軟性とプログラマビリティを盛り込むことで、新たなハードウェアを使用することなく対応できるようにしなければなりません。
- ユニバーサルな無線:小信号に対応する単一のプラットフォームにより、中核となる無線システムを複数設計しなくても済むようにする必要があります。つまり、そのプラットフォームによって、マクロ・サイトからDASまでを含む多様なアプリケーションに対応できるようにしなければなりません。
- エネルギー効率の向上:消費電力を抑えることは、もはやオプションではありません。サステナビリティの面でも、コストの管理の面でも、エネルギー効率の向上は必須の要件になっています。
- セキュリティ機能の組み込み:ゼロ・トラストへの対応とセキュア・ブート機能の導入は、満たすべき業界標準です。
- 市場の多様性とO-RAN(Open Radio Access Network)への対応:オープンなアーキテクチャを採用することは、機器メーカーのエコシステムの拡大とイノベーションの醸成の鍵になります。
- 将来性の保証:6Gが現実のものに近づくにつれ、無線システムについては、より複雑な要件に対応するための準備が必要になります。例えば、AIを利用して実現される機能や高度なネットワーク・アウェアネスの機能に対応しなければならなくなるでしょう。
鍵になるのは、コラボレーションとイノベーション
上述したようなニーズを満たすには、小規模な改善や段階的な改善だけでは不十分です。まずは、通信事業者、機器メーカーに加え、半導体分野を牽引する企業が連携する必要があります。RANのオープン化は、業界が柔軟性の向上と市場の多様化の方向へ進んでいることを表しています。O-RANは、ネットワーク全体にわたって標準化されたインターフェースが使用されるようになることを目指しています。これが実現されれば、通信事業者はより広範なエコシステムから無線機器を調達できるようになります。またネットワークで、より多様なRUを利用することが可能になります。
5Gを導入した多くの企業では、旧来のパートナーシップからMORAN(Multi-operator Radio Access Network)のモデルへの移行が進みました。このモデルは、各通信事業者が個々の周波数帯を維持しつつ、インフラを共有するというものです。このアプローチは目覚ましい成果をもたらしています。このモデルを採用した2つの通信事業者は、スタンドアロンのネットワークを構築する場合と比べて、資本コストを30~35%、運用コストを25~30%削減できたと報告しています。最も重要なのは、同モデルによって人口の75%以上を5Gでカバーすることが可能になり、次世代の無線接続の利用が加速されることです1、2。
コラボレーションと共に重要になるのは、コンポーネントのレベルのイノベーションです。AIを利用して動作するデジタル・プリディストーション(DPD:Digital Predistortion)機能やパッシブ相互変調(PIM:Passive Intermodulation)のキャンセル機能などは、無線機が複数の帯域でより優れた性能を発揮することに役立っています。しかし、これらの機能は複雑さを増大させたり、消費電力を増加させたりする可能性があります。そのような事態を避けるには、よりインテリジェントな統合を実現しなければなりません。
統合の簡素化を実現する「Samana」
アナログ・デバイセズは、「Samana」と呼ばれるICを展開しています。このICは、必要な機能を犠牲にすることなく、複雑さの問題を解決可能な統合方法を提示する例だと言えます。Samanaは、トランシーバーの機能、デジタル・フロント・エンド処理の機能、ネットワーク接続の機能を1つのICに統合したものです。この統合により、FPGA(一般的に30~40Wの電力を消費するプロセッサ)が不要になります。このような統合を図ることにより、消費電力だけでなく、コストも削減されます。また、プリント回路基板のレイアウトや、ネットワークの統合方法を簡素化できます。更に、開発期間が長期化する原因になり得るタイミングに関する問題も解消することが可能です。これらの効果によって設計が容易になります。
Samanaが解決するのは統合に関する問題だけではありません。Samanaはゼロ・トラストやMACSecに関連するセキュリティ機能や、通信事業者の事業運営費(OPEX)/コスト/複雑さに対してメリットをもたらす省電力機能も備えています。そうした様々な特質を有するSamanaを採用すれば、TTMの短縮といった市場が抱える課題に対処することが可能になります。Samanaは、市場で唯一の実行可能な選択肢だというわけではありません。しかし、業界が求めるイノベーションを具現化した、複雑さを軽減しつつ柔軟性と拡張性を高めることが可能なソリューションであることは間違いありません。
6Gに備える
業界が6Gに向けて前進するにつれ、複雑さはますます増大していきます。マルチバンド、マルチオペレータの無線ネットワークが標準になり、AIを利用した機能は性能とネットワーク容量の最適化のために不可欠な要素になるはずです。加えて、サステナビリティに関する目標を達成するためには消費電力も削減しなければなりません。更に、セキュリティに関する要件はますます厳しくなります。
通信事業者と機器メーカーは、より少ないリソースで、より多くの成果を上げる方法を見いださなければなりません。つまり、より容易に設計でき、より短時間で製造可能で、より容易に導入できる無線ネットワークを実現する必要があります。そのためには、複雑さを増大させることなく柔軟性をもたらすアーキテクチャを活用する必要があるでしょう。また、サステナブルな地球環境の実現に貢献するために、早い段階からエネルギー効率とセキュリティについて優先的に配慮しておくことも重要です。
シンプルさは究極の長所
モバイル業界にとって、複雑さを軽減しつつ柔軟性を高めることは戦略的な面で必須の要件です。設計プロセスの簡素化は、導入の加速、コストの削減、そして更なるイノベーションの実現につながります。柔軟性が高くプログラマブルな無線技術により、通信事業者は異なる周波数帯やサービスに対する要件に迅速に対応できるようになります。そうしたあらゆる能力を活用することは、5Gから6Gに移行する時代での成功の決め手となります。
アナログ・デバイセズのSamanaのようなソリューションは、統合とイノベーションを融合することによって何が可能になるのかを提示してくれます。但し、モバイル・ネットワークの未来は、コラボレーション、創造性に加え、シンプルさへの妥協のない追求にも依存します。複雑さがニューノーマルになった業界では、シンプルさこそが競争における究極の優位性になり得るでしょう。
参考資料
1 「Managed Service Model for a MORAN Shared Network(MORANによるネットワーク共有に向けたマネージド・サービス・モデル)」Omnitele
2 「Operators View Cost Saving and Coverage as the Two Main Drivers for Network Sharing(通信事業者によるネットワークの共有、それを促す2つの要因はコストの削減とカバレッジの向上)」Analysys Mason、2023年5月