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閉じる先進的なBMSテクノロジーを開発したHoneywell、古いビルのエネルギー効率を高めるための新たな手段を実現
現在、商業ビル業界の至るところで“巨大な嵐”が吹き荒れています。商業ビルの管理者/所有者に対して、エネルギー効率に関する厳しい要求が突き付けられているのです。しかしながら、商業ビルの大半は2000年よりも前に建設されたものです。そのような古いビルの場合、エネルギー効率が低くても全く不思議ではありません1。1つの原因は、そうしたビルで使われている旧来型のビル管理システム(BMS:Building Management System)にあります。BMSは、エネルギー消費量の多いHVAC(暖房、換気、空調)システム、照明、エレベータ、防火システムなどの制御を担います。
Honeywellは、従来のBMSが抱える課題を解決したいと考えていました。そのために、同社はアナログ・デバイセズと連携を図ることにしました。具体的には、アナログ・デバイセズが提供するシングルペア・イーサネット(10BASE-T1L)対応の製品やソフトウェアによる構成が可能な入出力製品(SWIO:Software Configurable Input/Output)をBMS向けに採用することにしました。それらのソリューションを活用することにより、BMSに関連するエネルギー効率、柔軟性、レジリエンスを高めようと考えたのです。
「Honeywellは、アナログ・デバイセズと連携することにより、BMSの改革に取り組みました。その結果、ビルの所有者はネットワーク配線のアップグレードと強化を図ることが可能になりました。しかも、多額の先行投資を行うことなく、労力と環境への影響を抑えながらそれを実現できるのです。」Suresh Venkatarayalu氏
最高技術責任者 | Honeywell
アナログ・デバイセズのシングルペア・イーサネット製品を採用すれば、最長1kmにわたるデータ伝送に対応できる高度な接続性が得られます。しかも、既存のシングルツイスト・ペア・ケーブルを再利用することが可能です。つまり、設置時間、コスト、廃棄物の量を抑えられます。これは、古いビルにとって理想的な後付け型のソリューションだと言えます。
加えて、古いビルのシステムに接続されたデバイスを10BASE-T1Lに対応するフィールド計測器に置き換える必要もありません。SWIOによって実現した入出力モジュールに各デバイスを接続する方法により、システムをアップデートすることができます。この手法により、更なる節約が可能になります。
本事例の概要
Honeywellの概要
Honeywellは、広範な産業分野/地域に向けて事業を展開する世界的企業。特に、オペレーティング・システムの「Honeywell Accelerator」とソフトウェア・プラットフォームの「Honeywell Connected Enterprise」は、極めて複雑な課題の解決に貢献している。それらが対象とする分野としては、航空宇宙、産業用オートメーション、ビル・オートメーション、エネルギー、サステナブル・ソリューションなどが挙げられる。
目標
新規または既存のビルの管理者/設計者が、費用対効果が高くエネルギー効率に優れるBMSテクノロジーを実装し、ビル管理システムを強化することで、厳しい規制を満たせるよう支援する。
課題
古い商業ビルの管理者は、エネルギー効率に関する厳しい要求に直面している。予算上の制約とのバランスをとりながら、より高度な要求に応えるためには、BMSをアップデートする必要がある。
アナログ・デバイセズのソリューション
アナログ・デバイセズのシングルペア・イーサネット(10BASE-T1L)対応製品とSWIO製品を活用し、BMS向けのソリューションを実現する。
エネルギー効率に優れるビルの実現 - 共通の目標が築いた2社の関係
Honeywellとアナログ・デバイセズは、数十年にわたり産業分野向けのソリューションを共同で開発してきました。その例としては、プロセス制御用のフィールド計測器/ガス・センサー・システム向けのミックスドシグナル・マイクロコントローラ、分散制御システム用のASICソリューションなどが挙げられます。
両社は、商業ビルの業界が抱える課題を認識し、新たなBMSの実現に向けて協力することにしました。その結果、BMS向けの先進的なソリューションが生み出されました。Honeywellは、多用途に対応する単一バージョンの製品を構築できるだけの柔軟性を手にしました。また、それは製品の複雑さが軽減されるということも意味します。このことは、ビルの管理者が改築を実施する際や要件の変更に対応する際に非常に役立ちます。将来も見据えた形で制御と自動化のニーズを満たせるようになるからです。
先進的なBMSがもたらす主なメリット2
エネルギー効率の向上
HVAC、照明、廃棄物/水、セキュリティなどを扱うシステムを適切に制御できます。占有率や環境に関連する条件に基づいてエネルギーの使用量を最適化することが可能になります。
ビルの入居環境の改善
HVAC、セキュリティ、照明などを最適化することにより、ビルの入居者に対してより快適な作業環境を提供できます。その結果、生産性が向上します。
予知保全による稼働時間の改善
設備に関するデータの高度な分析をリアルタイムで実施できるようになります。それにより、大きな問題が発生する前にプロアクティブな保守を適用することが可能になります。このような手法によって、長期にわたるダウンタイムを減らします。
集中制御/可視化による優れた意思決定
複数の重要なシステムを中央から監視できるようになります(オンサイトとリモートの両方で可視化)。その結果、より包括的な観測/分析が可能になり、より迅速な対応を図れるようになります。
10BASE-T1Lにより、計測器のテストからエネルギー効率の高いBMSの設計までをサポート
10BASE-T1Lは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)が策定した産業向けのイーサネット規格です。これを採用することにより、最長1kmも離れた場所への接続を実現することが可能になります。これは、エッジまでイーサネットを拡張できるということを意味します。当初、アナログ・デバイセズはフィールド計測器向けのソリューションを構築するために10BASE-T1Lを利用していました。ただ、Honeywellはその範囲を超えて、BMSソリューションの実現に向けた中核的な技術として10BASE-T1Lを活用したいと考えていました。
10BASE-T1Lを追加する形でBMS(ビル用のコントローラ)を構築すれば、消費電力が多く複雑なゲートウェイが不要になります。それによりエネルギー効率が向上します。また、シングルツイスト・ペア・ケーブルを使って離れた場所を対象としたリアルタイム制御を行えるようになることから、BMSに柔軟性が加わります。10BASE-T1Lに対応するビル用コントローラを構築すれば、HVAC、照明、セキュリティなどを扱う多様な機器をサポートできます。それだけでなく、障害の検出機能や診断機能によってネットワークの障害やケーブルの問題を検出できるようにすればレジリエンスが高まります。
10BASE-T1Lがもたらすアプリケーション・レベルの価値
低コストのシングルツイスト・ペア・ケーブルを使用できる
標準的なCATxのケーブルよりも軽量、低コスト、小型です。また、多くの場合、敷設も容易です。10BASE-T1Lを採用すれば、シングルツイスト・ペア・ケーブルを使用していた既存のインフラを再利用できます。ツイスト・ペアを使用する方が性能は向上しますが、ペア線であればツイスト・ペアでなくても構いません。
最長1kmの通信距離
フィールド・センサーは、遠隔地に設置されることが少なくありません。しかし、旧来のイーサネットでは、物理層の仕様として通信距離が100mまでに制限されています。10BASE-T1Lでは、より長い距離に対応してデバイスを接続することが可能です。
10Mbpsの転送レートがもたらす新たな知見
10BASE-T1Lでは、4~20mAの電流ループやフィールド・バスなどの技術を使用する場合と比べて帯域幅が大きく広がります。そのため、リモートのノードから新たなレベルの知見を得られるようになります。
2本のワイヤによる電力/データ伝送
10BASE-T1Lを採用した場合、本質的安全(Intrinsic Safety)に対応するアプリケーションでは最大500mWの電力を伝送可能になります。また、10BASE-T1Lでは、同じ2本のデータ用ケーブルを使って最大52Wの電力を伝送できると規定されています。
10BASE-T1LとSWIOの併用により、古いビルのエネルギー効率を更に改善
BMSなどを活用した商業ビルのデジタル化は、特に古くて時代遅れのビルを、エネルギー効率の向上を目指してインテリジェント・ビル化する場合に有用です。しかしながら、10BASE-T1Lによる接続に対応していないレガシー・システムもあることから、インテリジェント・ビルへの移行は依然として課題となっています。
そこで、10BASE-T1Lによる接続にアナログ・デバイセズのSWIOソリューションを組み合わせれば、ビルの管理者に以下に挙げる成果がもたらされ、課題の改善につながります。
- 古いビルの柔軟性が高まる
- 将来にわたってBMSを使用できる
- 障害の検出機能と診断機能を実現可能
- エネルギー効率の向上につながる
SWIOがもたらすメリットと節減
「アナログ・デバイセズの技術が、ファクトリ・オートメーションの枠を超えてHoneywellのBMSに導入されることは、私達にとって大きな喜びです。それにより、お客様はエネルギーの消費量を削減できるようになると共に、コストの低減とレジリエンスの向上にも役立ちます。加えて、温室効果ガス排出量の削減目標を達成することにも貢献します。」Martin Cotter
インダストリアル/マルチマーケット事業部門担当 シニア・バイス・プレジデント | アナログ・デバイセズ
希望をもたらす連携 - 古いビルのエネルギー効率を改善する目標が達成可能に
Honeywellとアナログ・デバイセズの連携により、BMSの用途に向けた業界初のソリューションが誕生しました。このソリューションは、Honeywellのビル向けプラットフォーム「Advance Control for Buildings」の重要なコンポーネントになっています。Honeywellは、同ソリューションを「ビル制御の分野でこれまでに生み出されたイノベーションの中でも、特に大きな飛躍をもたらしたもの」と位置づけています。つまり、同ソリューションは真に画期的なものだということです。
繰り返しになりますが、エネルギー効率の低い古いビルの所有者/管理者は大きな課題に直面しています。しかし、Honeywellとアナログ・デバイセズが共同開発したBMSソリューションによって楽観的な見通しが得られたとも言えます。このソリューションによる接続性の向上は、エネルギー効率を大幅に高めるための大きな可能性を秘めています。