要約
MAX2309のLO位相ノイズは100MHzで改善されています。PLL帯域幅、基準信号ノイズ、およびVCO部品を変更すると、10kHzオフセットで-90dBc/Hz以下の位相ノイズを達成できます。オンチップVCOは200MHz (1MHzの比較周波数)で動作するように設定しています。3種類のPLL設定に対して評価を実施し、各々にスペクトルと位相ノイズの性能グラフを作成しています。
追加情報:
このアプリケーションノートでは、MAX2309のI/Q復調器を使用して、ほぼ-90dBc/Hz (10kHzオフセット)の局部発振器(LO)の位相ノイズ性能を達成する方法について説明します。電圧制御発振器(VCO)、ループフィルタ部品、および性能グラフを含む、100MHzの中間周波数(IF)の設計ソリューション一式が用意されています。目的
MAX2309評価キットを低位相ノイズ雑音用に最適化する(LOバッファ出力で測定)。
手順
標準MAX2309評価キットにおいて、VCOタンク部品を再構成することにより、200MHz (IF周波数の2倍)およびKVCO = 6.6MHz/Vでの発振を可能にしました。各部品の位置については、MAX2309評価キットの回路図を参照してください。部品の値を表1に示します。
表1. VCO部品の変更
Reference Designator | New Value (200MHz) | Part Number | Manufacturer |
L5 | 82nH | 0805CS-820XKBC | Coilcraft |
C61 | 3.9pF | COG capacitor | Murata |
C4, C6 | 27pF | COG capacitor | Murata |
D3, D5 | Varactor | SMV1763-079 | Alpha-Industries |
ループフィルタの設計1
ループフィルタ部品の値を表2に示します。このループは、11.6kHzのユニティゲイン周波数で位相マージンが50°です。チャージポンプ電流は425µAに設定しています。
表2. ループフィルタ#1
Reference Designator | Filter Value |
C30 | 560pF |
R23 | 5.1kΩ |
C29 | 5.6nF |
R10 | 0Ω |
C31 | Open |
図1. LOバッファ出力ICP = 425µAでの100MHzのLO信号(HP8561Eを使用)
図2. 100MHzのLO信号の位相ノイズ(HP8561Eを使用)
重要:当初、位相ノイズの測定値は約-80dBc/Hzでしたが、これは13MHzの基準信号源のノイズ出力が許容値を満たさないためによるものでした。この信号源をKSS VC-TCXO-208C-13.0に変更すると、位相ノイズは約6dB改善されました。
表3. テストの主要パラメータ
Parameter | Value | Units |
VCC | 3.0 | V |
FIF | 100 | MHz |
FREF | 13 | MHz |
FOSC | 200 | MHz |
FCOMP | 1 | MHz |
KVCO | 6.6 | MHz/V |
Target Phase Noise at 10kHz | -90 | dBc/Hz |
TA | +25 | °C |
ループフィルタの設計2
修正したVCOとループフィルタを用いて位相ノイズを測定した後、2つ目のループフィルタを評価しました。このフィルタは更に狭帯域なものとされており、9kHzのユニティゲイン周波数、53°の位相マージン、チャージポンプ電流425µAです。各値を表4に示します。
表4. ループフィルタ#2
Reference Designator | Filter Value |
C30 | 1nF |
R23 | 3.9kΩ |
C29 | 10nF |
R10 | 0Ω |
C31 | Open |
位相ノイズの測定結果を、図3と図4に示します。
図3. LOバッファ出力ICP = 425µAでの100MHzのLO信号(HP8561Eを使用)
図4. 100MHzのLO信号の位相ノイズ(HP8561Eを使用)
最後に、ループ帯域幅をさらに低減するため、210µAのチャージポンプ電流を選定しました。この結果、チューニングの速度は犠牲になるものの、10kHzオフセットでの位相ノイズは大幅に改善されました。このループは、5kHzのユニティゲイン周波数ですが、それでも44°という非常に優れた位相マージンを示します。図5と図6に最終結果を示します。
図5. LOバッファ出力ICP = 210µAでの100MHzのLO信号(HP8561Eを使用)
図6. 100MHzのLO信号の位相ノイズ(HP8561Eを使用)
図7. MAX2309評価ボード(100MHzのLOで、位相ノイズを最適化)
図8. MAX2309評価ボード
図9. MAX2309評価ボード(続き)
結論
MAX2309は、10kHzオフセットで約-90dBc/Hzの位相ノイズを実現することができます。基準発振器のスペクトル純度、ループフィルタの設計、およびチャージポンプ電流にかなり依存しますが、一度最適化すれば、最終的には目的を達成することができます。