USBバッテリ充電ガイド

2023年02月14日

Figure 1

   

USBインタフェースの仕様にはデバイスへの電源供給能力があります。従来のシリアル・ポートやパラレル・ポートからのこの大きな変化により、PCに手軽に接続できるデバイスの種類が劇的に増加しました。

USB電源の使用方法の1つにバッテリ充電があります。MP3プレーヤやPDAなど多くのポータブル機器は、PCと情報交換を行うため、バッテリの充電とデータ交換を1本のケーブルを通して同時に行うことができれば装置の利便性は著しく高まります。USBとバッテリ給電機能を組み合わせると、PCに接続していてもしていなくても動作する、例えば取り外し可能なウェブ・カメラなどの、広範な「束縛されない」装置群が生み出されます。多くの場合、扱いに困るACアダプタ、すなわち「壁のこぶ」を含める必要はなくなります。

USBからのバッテリの充電は、USBデバイスからの要求に応じて複雑にも簡単にもなり得ます。これによって設計に影響が出てくる範囲は、一般的に語られる「コスト」、「大きさ」、および「重さ」にとどまりません。その他に考慮すべき重要なことは、1) 機器のバッテリが放電してしまっている場合、USBポートにプラグインすると、どれくらい早く全機能を動作させることができるか、2) バッテリの充電に許容される時間、3) USBの制限内でのパワー配分、および4) ACアダプタ充電を含める必要性です。これらに対する問題と解決法は、USBについて電源の観点から議論した後で述べます。

USB電源

PCやノートブックなどすべてのホストUSBホスト装置は、USBソケットごとにで最低500mA、つまり5「単位負荷」を供給することができます。USBの用語では、「1単位負荷」は100mAです。自己給電USBハブも5単位負荷を給電できます。バス給電でのUSBは、1単位負荷(100mA)の供給しか保証されていません。USBの仕様に従うと、図1に示すとおり、USBホストまたは給電されたハブから得られる最低電圧はケーブルのペリフェラル端で4.5Vであり、他方、USBバス給電のハブからの最低電圧は4.35Vです。リチウム電池を充電する場合は、通常4.2Vを要するため、これらの電圧にはほとんどヘッドルームがなく、充電器のドロップアウト電圧が極めて重要となります。

図1. USBの電圧降下(Universal Serial Bus仕様Rev 2.0より)

図1. USBの電圧降下(Universal Serial Bus仕様Rev 2.0より)

USBポートにプラグインされるすべての装置はわずか100mAで動作を開始しなければなりません。ホストと通信した後、その装置は500mAすべてを使うことが可能であるかを決めることができます。

USB周辺装置は2種類のコネクタのうちいずれか1つを使います。どちらもPCや他のUSBホストに使われるソケットよりも小型です。「シリーズB」およびそれより小型の「シリーズ・ミニB」コネクタを図2に示します。シリーズBでは、電源はピン1 (+5V)および4(GND)に、シリーズミニBではピン1 (+5V)および5(GND)に割り当てられています。

図2. USB周辺装置のこれらのコネクタは、ホストやハブに見られる大型の4端子ソケットとは異なる。電源及びデータ接続用の端子は図の通り。

図2. USBペリフェラルのこれらのコネクタは、ホストやハブに見られる大型の4端子ソケットとは異なります。図には、電源およびデータ接続用の端子が示されています。

すべてのUSB装置は、接続されると、ホストに対して自身を識別させる必要があります。これを「エニュメレーション」と呼びます。このルールには実際上例外があり、この記事の最後で説明します。識別のプロセスにおいて、ホストはUSB装置の電源のニーズを判断し、装置が負荷電流を100mA(最大)から500mA(最大)に増加するにあたりOKを与えるか、拒否するかのいずれかを行います。

シンプルなUSB/ACアダプタによる充電

非常に基本的な装置では、使用可能なUSB電源を判別し最適化するのに必要なソフトウエアオーバヘッドが不要な場合があります。装置の負荷電流が100mA(USBの用語で「1単位負荷」)に制限されている場合は、いずれのUSBホスト、自己給電ハブ、またはバス給電ハブにおいても装置への給電が可能です。そのような設計に対して、非常に基本的な充電器とレギュレータの構成を図3に示します。

図3. USBから100mA、及びACアダプタから350mAを供給する簡単な充電器では充電器に「エニュメレーション」は必要ではない。それはUSBの充電電流が「1単位負荷」(100mA)を越えないからである。この図では、3.3Vのシステム負荷は常にバッテリから給電される

図3. USBから100mA、およびACアダプタから350mAを供給する簡単な充電器では、USBの充電電流が「1単位負荷」(100mA)を超えないため、充電器に「エニュメレーション」は不要です。この図では、3.3Vのシステム負荷は常にバッテリから給電されます。

この回路では、装置がUSBに接続されるか、またはACアダプタにプラグインされるとバッテリを充電します。同時に、システム負荷が(この場合ではシンプルなリニア・レギュレータ(U2)を通して)常にバッテリに接続され、最大200mAの電源を供給できます。USBから100mAでバッテリを充電している間、システムが連続的にその電流量を引き出している場合、負荷電流が充電電流よりも大きいため、バッテリは放電し続けます。ほとんどの小型システムでは、ピーク負荷は全体の動作時間のほんのわずかな間にのみ発生するため、平均負荷電流が充電電流よりも小さい限り、バッテリは充電されます。ACアダプタを接続すると、充電器(U1)の最大電流は350mAまで増加します。USBとACアダプタが同時に接続された場合は、ACアダプタが自動的に優先されます。

USBの仕様によって要求される(しかし、一般的な充電器についてもこれを備えることが賢明である)U1の1つの特性は、電源入力にバッテリまたは他の電源入力から電流が逆流することは許されないという点です。従来の充電器では、この特性は入力ダイオードによって確保できましたが、USBの最低電圧(4.35V)と要求されるリチウム電池の電圧(4.2V)の電圧差が小さいため、ショットキー・ダイオードでさえ不適切です。そのため、すべての逆電流経路はU1のIC内で阻止されます。

図3の回路には、いくつかの充電式USB装置にとってはこの回路が不適切となるような制限があります。最も明白な制限は、充電電流が比較的小さいことであり、そのため、リチウム電池の容量が数百mAHを超える場合は、充電に長時間を要することになります。2つ目の制限は、負荷(リニア・レギュレータの入力)が常にバッテリに接続されているために生じます。この場合、バッテリが過放電しているとシステムはプラグインしても即座には動作できないことがあります。バッテリがシステムの動作に必要な十分な電圧に達するまでに遅延が生じる可能性があるためです。

負荷のスイッチングおよび他の改良点

高度なシステムでは、充電器内またはその周辺で多数の機能強化が要求されることが多くあります。例えば、電源(USBまたはACアダプタ)またはバッテリの電流能力に合わせて選択できる充電電流、電源がプラグインされたときの負荷、過電圧保護などです。図4に示す回路は、充電用ICの電圧ディテクタで駆動される外部MOSFETによって、これらの機能のいくつかが追加されています。

図4. 外部から電源が印加されたとき、SOT-23型のMOSFETが過電圧保護及びバッテリの遮断などの有用な機能を実現する。アクティブな電源が、バッテリの充電を止めることなくシステムを直接駆動する。

図4. 外部から電源が印加された場合、SOT-23型のパワーMOSFETは過電圧保護およびバッテリの遮断などの有用な機能を追加します。アクティブな電源がシステムを直接駆動し、その間、バッテリは無負荷状態で充電されます。

MOSFETのQ1とQ2、およびダイオードのD1とD2は、バッテリをバイパスしてアクティブな(USBまたはACアダプタ)電源入力を負荷に直接接続します。ある電源入力が有効である場合、そのモニタ出力(UOK\またはDCOK\)はローとなり、適切なMOSFETをオンにします。両方の入力が有効である場合は、DC入力が優先されます。両方の入力が同時にアクティブとなることはU1によって防がれます。D1とD2のダイオードは「システム負荷」の電源経路を通して両方の電源間で逆電流が流れるのを防ぎます。一方、充電器には充電経路を通して流れる逆電流を防ぐ回路が内蔵されています(BATTの位置)。

MOSFETのQ2は、同様に18VまでのACアダプタの過電圧保護も行います。(直流の)低電圧/過電圧モニタによって、ACアダプタの電圧が4V~6.25Vの場合にのみ充電が可能になります。

最後のMOSFETであるQ3は、外部に有効な電源がない場合にオンになり、バッテリを負荷に接続します。USBまたはDC電源が接続されると、パワーオン(PON)出力が直ちにQ3をオフにしてバッテリを負荷から切り離します。このため、バッテリが過放電したり、損傷したりしている場合でも、外部電源を印加すると、システムをすぐに動作させることができます。

USBが接続されると、USB装置はホストと通信して負荷電流を増やすかどうかを決定します。負荷は1単位負荷で動作を開始し、ホストが許可すれば5単位負荷まで増加します。この5対1の電流範囲は(USB用に設計されていない)従来型の充電器では問題となる可能性があります。問題は、従来型の充電器の電流精度は、大電流に対しては十分ですが、電流検出回路にオフセットが存在するため、通常は小電流設定の場合に影響が生じることです。この結果、(1単位負荷に対して)低レンジの充電電流が100mAの制限を決して超えることがないようにするために、それを低く設定しなければならず、役に立たなくなる可能性があります。例えば、500mAで10%の精度であるとすると、出力は500mAを超えないように450mAに設定しなければなりません。それだけであれば許容できますが、低レンジでの電流が100mAを超えないようにするためには、公称電流をは50mAに設定しなくてはならず、この場合の最小値は0mAとなる可能性があります。これは明らかに容認できません。USBによる充電が両方のレンジにおいて有効であるためには、USBの制限を超えない範囲で、できるだけ大きな標準充電電流を流すことができるような十分な精度が必要となります。

設計によっては、システム電源の要求ゆえに、USBの500mA以内の能力で負荷への給電とバッテリの充電を別々に行うのは実際的ではない場合がありますが、ACアダプタから給電すれば問題はありません。図5の接続図は図4を単純化したサブセットですが、非常に高い費用対効果でこれを実現します。USB電源は負荷に直接給電していません。充電とシステム動作はUSB電源で行われますが、システムはバッテリに接続されたままです。制限は図3と同じです。USBが接続されたときにバッテリが過放電していると、システムが動作可能となるまでに遅延が生じる可能性があります。しかし、DC電源が接続されると、図5は、バッテリの状態に関係なく、直ちに図4と同様の動作をします。Q2がオフとなり、D1を通してシステムの負荷をバッテリからDC入力に切り替えるためです。

図5. 簡略化した設計では、USB電源を負荷へ直接接続するのではなく、DC入力を接続します。USBが接続されると、システムはまだ給電されているが、それは充電されているバッテリから行われている。

図5. 簡略化した設計では、USB電源を負荷へ直接接続するのではなく、DC入力を接続します。USBが接続されても、システムはまだ給電されていますが、それは充電されているバッテリから行われています。

ニッケル水素電池の充電

リチウムイオン電池は大部分のポータブル情報機器に最高の性能を提供しますが、ニッケル水素(NiMH)電池も依然として最小コストで設計可能な選択肢です。負荷の要求がそれほど厳しくない場合にコストを低く抑えるには、1個のNiMH電池を使うのが良い方法となります。このためには、DC/DCコンバータを使って、標準1.3Vの電池電圧を、機器が使うことができる値(標準的には3.3V)に昇圧する必要があります。どのようなバッテリ駆動機器にも、何らかのレギュレータが必要であるため、DC/DCコンバータは実際には、追加のレギュレータというわけではなく、異なるタイプのレギュレータであるというだけのことです。

図6の接続図は、NiMH電池を充電し、システム負荷をUSB入力とバッテリの間で外部FETを使わないで切り替えるという独特の方法を用いています。「充電器」は実際には降圧DC/DCコンバータ(U1)であり、電流制限機能を備えて動作します。この充電器はバッテリを300~400mAの電流で充電します。それは精度の高い電流源ではありませんが、その目的に対しては十分な電流制御を行い、短絡された電池にさえ電流制御を維持できます。より一般的なリニア方式に対してDC/DCによる充電方式が持つ大きな利点は、制限のあるUSB電源を有効に使うことができる点である。1個のNiMH電池を400mAで充電する場合、回路はUSB入力から150mAしか取り込みません。このため、充電しながら、システム用に350mAを残すことができます。

図6. シンプルなNiMH充電/電源構成で、複雑なMOSFETスイッチアレイなしで電源をUSBに自動切替え

図6. シンプルなNiMH充電/電源構成で、複雑なMOSFETスイッチ・アレイを用いずに電源をUSBに自動的に切り替え

バッテリからUSBへの負荷の自動切り替えは、昇圧コンバータの出力を使ってダイオード(D1)でUSB電源をOR接続することによって行われます。USBを切り離すと、昇圧コンバータが出力に3.3Vを発生します。USBを接続すると、D1はDC/DC昇圧コンバータ(U2)出力をおよそ4.7Vまで引き上げます。U2の出力がこのような方法で引き上げられると、それは自動的にオフとなり、バッテリからは1µA以下の電流しか引き出されません。USBが接続されているときに、出力が3.3Vから4.7V出力にシフトすることが許容できない場合は、リニア・レギュレータをD1と直列に挿入することができます。

この回路の限界は、充電終了の制御がシステムに依存することです。U1は電流源としてのみ動作し、そのままずっと放置しておくと電池を過充電します。R1およびR2は安全限界としてU1の最大出力電圧を2Vに設定します。「充電イネーブル(Charge Enable)」入力は、システムが充電を止める手段、および必要に応じてエニュメレーションの前にUSBの負荷電流を減らす方法として機能します。充電器の入力電流150mAは1単位負荷を超えているためです。

親の教えにない現実世界の苦労

どのような規格でも、実際に行われていることが印刷された仕様からどれほどかけ離れているか、または仕様の中で規定されていない部分がどのようにして形を成すようになるのかに注目するのは興味深いことです。USBは、近年において極めてよく吟味された、信頼性の高い、有用な規格であることは間違いありませんが、現実世界の影響を受けなかったわけではありません。目立つわけではないものの、電源設計に影響を及ぼす可能性があるUSBの特性として以下を挙げることができます。

  • USBポートは電流を制限しません。USBの仕様には、USBポートが供給しなければならない電流値の詳細を規定していますが、供給しても良い電流値に関する制限には大きな幅があります。電流の上限は5Aを超えてはならないことになっていますが、賢明な設計者はそれに頼るべきではありません。どのような場合でも、出力電流を500mAまたはその近傍に制限するのに決してUSBポートを当てにすることはできません。事実、ポートからの出力電流は数アンペアを超えることが多くあります。それは、PCのようなマルチポートシステムは、システム内のすべてのポートに対してわずか1個の保護装置しか持たないことが多いからです。保護装置はすべてのポートの合計電力定格を超える値に設定されます。したがって、4ポートを持つシステムは他のポートに負荷が接続されていなければ、1つのポートから2Aを超える電流を供給できます。更に、PCの中には10~20%の精度を持つICを使った保護回路を使っているものがある一方で、もっと精度が低いポリヒューズ(自己リセット可能なヒューズ)を使っているものもあります。その場合は負荷が定格の100%を超えるまでトリップされません。
  • USBポートはめったに(決して)電源をオフしません。USBの仕様はこの点に関して特に規定していませんが、エニュメレーションに失敗した結果として、または他のソフトウェアやファームウェアの問題として、USB電源が切断されることがあると、多くの場合考えられています。実際には、USBホストは(短絡のような)電気的なフォルト以外にはUSB電源をシャットオフすることはありません。これには例外があるかもしれないが、少なくとも筆者はそれを見たことがありません。ノートブックやマザーボードのメーカーはフォルト保護に対してコストをかけるのを嫌います。ましてや、高性能な電源スイッチングについては言うまでもありません。したがって、USB周辺装置とホストとの間でどのような対話が行われようとも、5V(500mAまたは100mA、場合によっては2A以上)は利用可能です。このことは、USB電源による読書灯、コーヒーのマグカップウォーマー、および通信手段を持っていない他の同様な製品が市場に現れてきていることによって裏づけられます。それらの製品は「規格に準拠」してはいませんが、機能しています。
myAnalogに追加

myAnalog のリソース セクション、既存のプロジェクト、または新しいプロジェクトに記事を追加します。

新規プロジェクトを作成

この記事に関して