CDMAアプリケーション用のMAX2206/MAX2208パワーディテクタ

CDMAアプリケーション用のMAX2206/MAX2208パワーディテクタ

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Roger Bremer

要約

このアーティクルでは、CDMAシステムで使用するMAX2206またはMAX2208パワーディテクタのアプリケーションをサポートするためのデータを表とグラフで紹介します。データは、836MHzと1880MHzにおける値です。MAX2206のダイナミックレンジが40dBであるのに対し、MAX2208のダイナミックレンジは25dBです。これらのパワーディテクタで、CDMA波形による出力電圧のリップルを調べています。特別なフィルタリングを使用すると、リップルは50mVP-Pまで低減し、応答時間は350µsになります。

追加情報

はじめに

セルラ電話システムは、多くの場合、トランスミッタの出力電力制御に依存して正しいシステムの動作と最大処理能力を確保しています。この傾向は、特にCDMAベースのシステムで当てはまります。マキシムは、トランスミッタの出力電力を正確に検出し、正確な制御が可能となるように設計された集積回路(IC)のファミリを提供しています。このアプリケーションノートでは、CDMAの変調入力信号を用いてMAX2206とMAX2208を使用する場合のアプリケーション回路とデータを取り上げています。データは、836MHzと1880MHzでの動作に関するものです。これらの製品のデータ収集には、MAX2206とMAX2208の評価キットを使用しました。

MAX2206とMAX2208の概要

MAX2206とMAX2208は、広帯域(800MHz~2GHz)のパワーディテクタであり、方向性カプラからRF信号を受け取って、高度に繰り返し可能な電圧を出力します。出力電圧は、入力電力とともに単調に増加し、温度およびプロセスシフトが補償されるため、変動は、最高入力電力で±1dB未満(+15dBm)、最低電力では±2.5dB未満に低減されています。どちらのパワーディテクタも省スペースの2 × 2、0.5mmピッチのウルトラチップスケールパッケージ(UCSP)で提供されます。

MAX2206とMAX2208には、2つの大きな違いがあります。1つ目は、ダイナミックレンジです。MAX2206のダイナミックレンジは40dB (-25dBm~+15dBm)です。MAX2208のダイナミックレンジは25dBm (-10dBm~+15dBm)です。これは、MAX2206よりも低い値ですが、これにより消費電流が低減されます。

MAX2208には内蔵のフィルタがあります。このフィルタにより平均電力の検出が可能で、CDMA変調信号を取り扱う場合に必要です。MAX2206はそういったフィルタがないのでこのような信号を正確に検出するには外付けフィルタが必要です。

CDMAアプリケーション

CDMAアプリケーションでパワーディテクタを使用する際に考慮すべき重要な要素は、出力電圧のリップルノイズです。このノイズが出力電圧に現れる原因は、CDMA変調によって生成される不定な振幅エンベロープです。パワーディテクタからの最大許容リップルは、システムの仕様によって決定されます。MAX2208のオンチップフィルタを使用した場合、この仕様に適合しない可能性があります。シャントコンデンサをICの出力側に配置すると、リップルノイズを低減することができます。このコンデンサは、出力フィルタの時定数を増加するため、ローパスフィルタの帯域幅を低減し、結果として出力リップル電圧を低減します。表1に、1500pFの出力コンデンサを備えたMAX2208から収集したデータを示します。

表1. 1.5nF出力コンデンサを備えたMAX2208の性能データ

836MHz 1880MHz
PIN (dBm) VOUT (mV) Ripple Noise (mVP-P VOUT (mV) Ripple Noise (mVP-P
15 1606 44 1643 49
13 1247 36 1291 35
11 965 29 997 29
9 741 23 765 24
7 562 19 577 20
5 427 16 439 17
3 325 15 335 15
1 245 14 254 13
-1 186 12 192 11
-3 141 12 146 10
-5 109 11 113 10
-7 86 11 89 10
-9 70 10 72 10
-11 59 10 60 10

図1. MAX2208の性能データ
図1. MAX2208の性能データ

MAX2206は、出力フィルタが内蔵されていません。CDMA信号が正しく検出されるように出力電圧を平均化するには、抵抗器とコンデンサから成る外付けローパスフィルタを回路の出力ピンに追加します。出力フィルタを構成している抵抗器とコンデンサの値を増加させると、フィルタ帯域幅は低減されます。フィルタの帯域幅が狭くなると、リップルの振幅が低減されます。表2に、MAX2206の一般的な実装による結果を示します。

表2. 直列の1.5kΩ出力抵抗器と6.8nFシャント出力コンデンサを備えたMAX2206の性能データ

836MHz 1880MHz
PIN (dBm) VOUT (mV) Ripple Noise (mVP-P VOUT (mV) Ripple Noise (mVP-P
15 1558 47 1296 45
13 1264 37 1031 34
11 1036 29 818 27
9 856 23 651 21
7 717 19 523 17
5 613 16 426 14
3 535 13 354 12
1 476 11 299 11
-1 433 10 257 10
-3 415 10 228 10
-5 375 10 207 10
-7 349 10 190 10
-9 319 10 174 10
-11 283 10 158 10
-13 242 10 141 10
-15 200 10 122 10
-17 160 10 103 10
-19 126 10 85 10
-21 98 10 69 10

図2. MAX2206の性能データ
図2. MAX2206の性能データ

リップルを低減するには、費用がかかります。しかし、この費用を支払うことで、応答時間の増大も伴います。つまり、応答時間とリップルノイズのどちらを取るかを決定する必要があるということです。ただし、ほとんどのCDMAシステムが必要とする応答時間は、それほど制約されておらず、一般に500µs未満です。この応答時間を満足しつつ、リップルノイズをシステム仕様の範囲内まで低減することができます。たとえば、MAX2208は、外付けのフィルタがない場合に、応答時間は15µsです。出力コンデンサを新たに追加すると、最大リップルノイズは50mVP-Pまで低減し、応答時間は350µsに増大します。

どちらの製品がアプリケーションに最適なのか?

この質問に答えるための第一歩は、検出する電力範囲を決定することです。電力範囲は検出されるRFパワーと方向性カプラを結合した値によって決まります。結合した数値が高いほど、ディテクタに供給されるRFパワーは減少します。MAX2206は、高い結合値すなわち広いダイナミックレンジを備えており、MAX2208よりも15dB低い電力を検出できるので、こちらの方がよい選択となります。

どちらの製品を使用するかを見きわめるための別の要因として、パワーディテクタが占める回路ボードの面積が挙げられます。MAX2206は、出力側に特別な抵抗器を必要とするため、パワーディテクタの占める面積が増大します。スペースが設計における重要な要因となる場合には、MAX2208の方がよりコンパクトな設計を実現できます。

測定データ

このアプリケーションノートの測定では、出力部品の値は、設計パラメータである500µs未満の応答時間に基づいており、同時に50mVP-P未満のリップルノイズを実現しています。MAX2208での出力リップルを低減するため、1.5nFのシャントコンデンサを出力側に配置しました(図3を参照)。MAX2206では、15kΩの直列抵抗器と6.8nFのシャントコンデンサで構成したRCネットワークを実装しています(図4を参照)。

図3. MAX2208評価キットの回路図
図3. MAX2208評価キットの回路図

図4. MAX2206評価キットの回路図
図4. MAX2206評価キットの回路図

リップルノイズが50mVP-P未満の場合のMAX2208の応答時間は、350µsと測定されました。MAX2206の応答時間は240µsと測定されました。

入力信号の変調:CDMAONE (IS95)上りリンク、1%ピーク-平均 = 3.9dB

注:
使用したテストのセットアップでは、リップルノイズ測定のノイズフロアは、10mVP-Pでした。記録された10mVP-Pの値は、外部ノイズが測定されただけであり、パワーディテクタの性能を示すものではありません。