説明
このリファレンスデザインは、5S2P AR111ランプにおいてバックブーストLEDドライバのためのコントローラとして、MAX16819を使用します。図1は回路図を示し、図2は回路のレイアウトを示しています。
以下は、入力条件と出力仕様です。
- VIN:12VAC ±10%
- PWM In:N/A
- VLEDコンフィギュレーション:5S2P、LED (19VDC、max)あたり3VDCから3.8VDC、ストリングあたり500mA
このリファレンスデザインの詳細は、主回路ブロックの解析および設計仕様とともに以下に論じられています。
デザイン解析
このAR111ランプデザインは、5つのLEDを2つ並列に合計10のLEDを駆動します。入力電圧は、許容誤差±10%の12VACです。ショットキーダイオードD1から D4は全波整流を提供します。そして、コンデンサC1から C8は電圧を平滑します。 許容できる光のちらつきの量に基づいて、これらのコンデンサのいくつかは、コストを節約するために減らすことができます。コンデンサはタンタル構造で、高温時に優れたパフォーマンスを提供します。
LEDが5S2P構成で配置されるので、電流の完全なバランスは不可能です。しかし、電流の不整合が最小となるように、LEDの特性が十分に揃っていることを仮定します。ストリング内に多数のLEDが使われており、レンズで光が混合されることにより電流バランスの問題がさらに軽減されます。
MAX16819は降圧レギュレータとして使われることを目的としますが、バックブーストモードで動作するように構成することができます。しかしながらその際に電流精度は犠牲となります。
インダクタの選択
LED電流を計算するための式は、以下の通りです。
ILはインダクタを流れる電流です。この式は、LED電流が入出力電圧によって影響を受けるインダクタ電流と等しくなることを示しています。VIN (120Hzのリップルにより)が変動するとLED電流も変動します。
インダクタ電流を計算するために以下の式を使用することができます。
この設計において、平均LED電流は1A、平均VINは13V、そして、平均VLEDは19Vです。要求されるインダクタ電流はこのようになります。
このインダクタ電流は、80mΩの検知抵抗によって達成することができます。低入力電圧(およそ10Vと仮定します)の場合、LED電流はおよそ850mAに落ちます。そして、16Vの入力電圧で、LED電流はおよそ1.12Aとなります。
インダクタL1は、250kHzのスイッチング周波数用として選定します。必要とされる平均電流は2.46A、ピーク電流は2.83Aです。Coilcraft®のインダクタMSS1260-393MLは、39µHで、定格連続電流が2.6A (40℃上昇)、飽和電流が3.08A (10%インダクタンスの低下)となっています。
過電圧保護
負荷がオープンとなる場合、R7、R8、およびQ2が過電圧(OV)から保護します。この保護がない場合、LEDがオープンになると無制限の出力電圧が発生し、部品にダメージを与えます。過電圧検出ポイントはおよそ30Vです。
温度管理
R2、R4、R5、R6、およびU2は、温度上昇時の電流制限回路を提供します。R4は、100kΩ NTCサーミスタ(B定数= 4250)です。温度が50℃ (摂氏)中頃に達すると、R4の抵抗値が下がりU2の制御ピンの電圧を上げます。そして、若干の電流がR6とR2を流れます。この電流は入力の検知抵抗R1で使用できる検知電圧を減らし、次に、インダクタとLED電流を減らします。温度の上昇に伴い、R2の電圧降下が増え、結果としてLED電流を更に低下させます。結局、LED電流が減少して、温度が安定し、そして、平衡状態が得られます。この電流制限回路によりランプを過熱の恐れなしに、エアフローが限られたアプリケーションで使うことが可能になります。結果は、わずかに減りますが十分許容できる光出力です。
SOT223パッケージに納められたQ1 (STN3NF06L)は、60V、0.07Ω、ロジックレベルMOSFETです。このMOSFETは全ゲート電荷(Qg = 9nC、max)が小さく、スイッチングロスを最小限に抑えることができます。このデバイスの消費電力はおよそ400mW (伝導)と500mW (スイッチング)で合計900mWです。パッケージには38℃/Wの熱抵抗があり、それはPCBの温度よりおよそ34℃ (ダイ)の温度上昇となります。計算誤差に対して十分なマージンとなります。
PCBレイアウト
PCBは、上面に全ての回路を配置できるように設計されています。底面は、グランドだけのために残しています。このアプリケーションでは、回路はアルミニウム基板上にあり、グランド接続と放熱板への熱伝導のために利用されます。上面の配線層は、アルミニウム基板への熱伝導を高めるために、銅面積が広くなるよう設計されています。