要約
このアプリケーションノートは磁気共鳴画像(MRI)装置が磁場で動く水素原子の反応を利用して詳細の医療画像を生成する方法を説明します。通常使用される磁場の種類を説明し、なぜ今日のより高い解像度のMRI装置が超伝導磁石に依存しているかを述べます。また、適切に調整された傾斜磁場コイルと、傾斜磁場コイルとRF信号との相互作用による3D画像の生成についても議論します。標準的なMRI装置のファンクションブロックダイアグラムが示されています。
概要
磁気共鳴画像(MRI)装置は、人体内の組織の極めて詳細な画像を提供します。この装置は、組織内に豊富に存在する水素原子が強力な磁場の中に置かれ、共鳴磁気励起パルスによって励起されたときに発生する信号を検出して処理します。
水素原子は、核スピンの結果として固有の磁気モーメントを持っています。強力な磁場の中に置かれると、これらの水素原子核の磁気モーメントは整列します。単純化すると、静磁場中の水素原子核は、引っ張った糸に例えることができます。糸の場合に引っ張る力によって決まる共鳴周波数があるように、原子核には、印加された局所磁場の強度によって決まる共鳴周波数(「ラーモア」周波数)があります。水素原子核を標準的な1.5TのMRI磁場の中に置いた場合、その共鳴周波数は約64MHzです。
Figure 1. Non-page mode memory interface.
水素原子核の共鳴周波数で共鳴磁場またはRF場によって正しく励起すると、水素原子核の磁気モーメントを部分的または完全に、印加磁場に対して垂直の面内に倒すことができます。印加したRF励起場を取り除くと、水素原子核の磁気モーメントは静磁場の中で歳差運動をしながら再整列していきます。この再整列の過程で、印加磁場の大きさによって決まる共鳴周波数のRF信号が発生します。この信号をMRI画像診断装置で検出し、画像の作成に使用します。
MRI画像診断装置のブロック図。
静磁場
MRI画像処理では、水素原子核を整列させるために患者を強磁場の中に置く必要があります。この磁場を生み出す方式としては、固定磁石、常伝導磁石(従来の導線コイルに通電)、および超伝導磁石の3つが一般的です。固定磁石と常伝導磁石は、一般に磁場強度が0.4T以下であり、高解像度の画像処理で通常必要となる、より高い磁場強度を生み出すことはできません。そのため、最高解像度の画像診断装置では、超伝導磁石が使用されています。超伝導磁石は大型で複雑です。超伝導磁石では、コイルを液体ヘリウムに浸して温度を絶対零度近くまで下げる必要があります。
このような方式で生成する磁場は、強力であるだけでなく、空間的に均一で時間的に安定していることが必要です。標準的な装置では、画像処理領域全体で変動を10ppm以下に抑える必要があります。この精度を達成するため、大部分の装置では、専用のシムコイルを使用して比較的弱い静磁場を生み出し、超伝導体による静磁場を「シミング」(「微調整」)することによって磁場の誤差を補正します。
傾斜磁場コイル
画像を生成する際、MRI装置では、まず人体内の特定の2D画像面内の水素原子核を励起し、次にそれらの原子核が歳差運動をしながら定常状態に戻っていく際に、その面内で各水素原子核の位置を特定します。これら2つの作業は、局所領域内の磁場を空間的位置の関数として線形に変化させる傾斜磁場コイルを使用して行います。その結果、水素原子核の共鳴周波数は、その勾配内で空間的位置に依存するようになります。励起パルスの周波数を変えることで、励起する人体内部位を制御することができます。また、放射した共鳴RF周波数と位相の情報を使用することによって、歳差運動をしながら定常状態に戻っていく励起原子核の位置を特定することができます。
MRI装置では、x、y、zの傾斜磁場コイルが必要です。それらによって3つの次元で勾配を生み出し、患者の身体内の任意の平面上で画像スライスを作成します。画像データセットを収集するには、傾斜磁場と励起パルスの印加をそれぞれ正しい手順またはタイミングで行う必要があります。たとえば、z方向の勾配を印加すると、2Dスライスを励起するために必要な共鳴周波数をその面内で変化させることができます。したがって、励起周波数を変化させることで、画像化する2D平面の空間的位置を制御することができます。この励起手順を完了したあとに、x方向にも勾配を正しく印加すると、定常状態に戻っていく原子核の共鳴周波数を空間的に変化させることができます。この信号の周波数情報を使用すると、それらの原子核のx方向の位置を特定することができます。同様に、傾斜磁場をy方向に正しく印加すると、共鳴信号の位相を空間的に変化させることが可能で、したがって、原子核のy方向の位置を検出することができます。勾配とRF励起信号を正しい手順と周波数で正しく印加することによって、MRI装置は特定の人体部位を3Dで構成します。
MRI画像診断装置で十分な画質とフレームレートを達成するには、傾斜磁場コイルによって、対象領域の強静磁場を約5%、急速に変化させる必要があります。これらの傾斜磁場コイルを駆動するには、高電圧(数kVで動作)および大電流(数百A)の電源回路が必要です。大電力が要求される一方、コイルの電流にリップルがあるとその後のRF受信でノイズが生じるため、低ノイズと安定性が重要な性能評価指標になります。そのようなノイズは、画像の完全性に直接影響を与えます。
組織の種類を区別するため、MRI装置では受信信号の振幅を解析します。励起原子核は、励起段階で吸収したエネルギーがすべて放出されるまで信号を放射し続けます。指数関数的に減衰するこれらの信号の時定数は、数10ミリ秒から1秒超の範囲です。回復時間は磁場強度と組織の種類の関数です。この時定数の変動によって、組織の種類を識別することができます。
送信/受信コイル
送信および受信コイルは、水素原子核の励起と、水素原子核の復帰に伴って発生する信号の受信に使用します。これらのコイルは、画像化する特定の人体部位に対して最適化する必要があるため、さまざまな構成で利用可能です。画像化する人体部位に応じて、送信コイルと受信コイルを別個に使用するか、組み合わせた送信/受信コイルを使用します。さらに、画像収集時間を短縮するため、MRI装置では、複数の送信/受信コイルを使用してより多くの情報を並行して回収します。そのために、コイルの位置に関連した空間的情報を利用します。
RFレシーバ
RFレシーバは、受信コイルからの信号を処理するために使用します。最近の大部分のMRI装置は、6つ以上のレシーバで複数のコイルからの信号を処理しています。それらの信号は約1MHz~300MHzの範囲であり、この周波数範囲は印加される静磁場の強度によって大きく変わります。受信信号の帯域幅は狭く(通常は20kHz以下)、傾斜磁場の大きさに依存します。
従来のMRIレシーバは、低ノイズアンプ(LNA)とミキサで構成されています。ミキサでは、対象の信号を低周波のIF周波数に混合し、高分解能、低速、12~16ビットのアナログ-ディジタルコンバータ(ADC)で変換することができるようにします。この受信アーキテクチャでは、1MHz以下の比較的低いサンプルレートのADCを使用します。狭帯域幅の要件があるため、1MHz~5MH zのより高いサンプルレートを持つADCを使用すると、アナログマルチプレクサを介して単一のADCに受信チャネルを時間多重化することによって、複数のチャネルを変換することができます。
高性能のADCが登場したため、より新しいレシーバアーキテクチャが実現可能となっています。最高サンプルレート100MHzの高入力帯域幅、高分解能、12~16ビットADCを使用すると、信号を直接サンプリングすることもできるため、受信チェーンでアナログミキサを使用する必要はなくなります。
トランスミッタ
MRIトランスミッタは、水素原子核を共鳴させるために必要なRFパルスを生成します。送信励起パルスの周波数範囲と傾斜磁場の大きさによって、画像スライスの幅が決まります。標準的な送信パルスは、±1kHzの比較的狭い帯域幅の出力信号を生成します。この狭周波数帯域を生み出すために必要な時間領域波形は、通常、従来の同期関数に似たものになります。この波形はベースバンドでディジタル生成し、ミキサによって適切な中央周波数に高周波変換するのが普通です。信号の帯域幅がかなり狭いため、従来の送信回路では、比較的低速のディジタル-アナログコンバータ(DAC)でベースバンド波形を生成する必要があります。
ここでも、最近のDAC技術の進歩によって、別の送信アーキテクチャが実現可能となっています。超高速、高分解能のDACを利用して、最高300MHzのRF送信パルスを直接生成することができます。そのため、広い周波数帯域にわたる波形の生成と高周波変換をディジタル領域で実行することができます。
画像信号処理
周波数と位相のデータは両方とも、いわゆるk空間で収集されます。このk空間の2次元フーリエ変換を表示プロセッサ/コンピュータで計算し、グレースケール画像を生成します。
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