Brendan O’Dowdが語る「インダストリ4.0」

Brendan O’Dowdが語る「インダストリ4.0」

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Brendan O'Dowd

Brendan O'Dowd

Brendan O'Dowd は、アナログ・デバイセズで産業用オートメーション事業を担当するゼネラル・マネージャです。半導体業界に 30 年以上携わってきました。本稿において、O'Dowd は「インダストリ 4.0」(Industry 4.0)に関する疑問に答えつつ、洞察を交えた解説を行います。

産業分野は、どの程度インダストリ4.0のガイドラインに従うのか?

インダストリ4.0のトレンドは、それほど最近登場したものではありません。2016年、多くの国/地域の政府は、インダストリ4.0の原理がもたらす産業分野の変化が、生産性に関するギャップを埋める一助になることを認識していました。特にEMEA(Europe, the Middle East and Africa)では、インダストリ4.0に関して以下のような取り組みが行われるようになっています。

  • インダストリ 4.0 の先進的な技術に対して投資する
  • 関連する研究開発を実施する
  • 大学などの学術機関だけでなく、工場においても、インダストリ 4.0 に関する知識の習得と理解の促進を図る

現在、インダストリ4.0は、IT、設計/開発、製造、データベース管理、セキュリティなど、以前は必ずしも関連性が深くなかった多くの分野を統合した世界的なイニシアティブになっています。

アナログ・デバイセズは、ソリューション指向の半導体企業です。当社は、状態基準保全(Conditional Based Maintenance)や産業用イーサネットなど、インダストリ4.0に関連した技術に対する要求の高まりを目の当たりにしてきました。

多くの国では、インダストリ4.0の導入を政府主導で推進しています。それにもかかわらず、すべての先進国において、産業分野は、企業が一般的に直面するのと同じチャンスとリスクに向き合わなければならなくなっています。製造企業は、傍観者として静観し、先行者利益を逃すというリスクを冒す余裕はありません。同時に、すぐに時代遅れになり、決して利益を生み出さない可能性がある従来型の多額の投資を行うことにもリスクがあります。

インダストリ4.0への移行は、単に特定の装置を配備したり、新工場を建設したりすればよいといったものではありません。それは、製造企業の運営に根本的な影響をもたらします。特に、ソフトウェア、セキュリティ、ITといった領域の専門技能を強化しなければならない点に大きな特徴があります。このことは、製造企業に対し、投資先や提携先、組織のアジリティを確保する方法について選択肢を提示すると共に、難易度の高いトレードオフを強いる要因になります。

インダストリ4.0に対応する工場の実現に不可欠なものは?

インダストリ4.0を実現するためには不可欠な要素があります。それは、工場全体の接続性を実現する統合型の通信ネットワークです。インダストリ4.0の本質は、データと、そのデータから得られるインテリジェンスにあります。マシン、OT(Operational Technology)システム、(ITベースの)エンタープライズ・コンピューティング・システムの間でデータを転送できるようにならなければ、インダストリ4.0のレベルで扱えるデータは存在しないことになります。

当社は、工場における接続性については、デタミニスティック・イーサネット(Deterministic Ethernet)を採用したネットワークが基盤になると考えています。現在は、いくつかの産業用イーサネット・プロトコルが混在している状況にあります。それらをイーサネットを拡張したTSN(Time-Sensitive Networking)に統一すれば、業界には莫大なメリットがもたらされます。製造企業は、ネットワークに対する投資を長期計画の一部にするつもりであるのなら、ロードマップの中で他の要素の拡充を図ることを明らかにするだけでなく、TSNに対応するソリューションへの投資を行うことも明示すべきです。

インダストリ4.0で、産業用オートメーションはどのようなものに変化する?

インダストリ4.0に対する投資の目的は、労働集約的な製造環境から、より高度で自動化されたインフラへのアップグレードを図ることです。産業用オートメーションに向けたこの新たなアプローチにおいては、いくつか共通の事柄が求められることが明確になりつつあります。それは以下のようなものです。

  • 現在、反復作業は、一般にコボットとして知られるコラボレーション・ロボットによって行われています。コボットは、人間と連携して作業を実施する小型のロボットです。従来の大規模な産業用ロボットの業界は、堅調に成長しています。ただ、新たなコラボレーション・ロボットの市場は、成長の初期段階にあります。
  • 大部分が固定された集中型の制御アーキテクチャから、非集中型で柔軟性の高い工場の現場への移行が進んでいます。そのような環境において、ロボットは PLC(Programmable Logic Controller)や多様なセンサー、アクチュエータを含む多くのシステムと連携して稼働します。そうしたマシンやデバイスは、入力と出力のうちいずれかとして機能します。アナログ・デバイセズのイノベーション(ソフトウェアによる構成が可能な I/O)は、多様なデバイスを入力/出力として自由に選択したり構成したりすることを可能にします。その結果、お客様はオートメーション装置を容易に配備したり再構成したりすることができるようになります。通常、ソフトウェアによる構成が可能な I/O を使用しているメーカーは、配備にかかる時間の短縮(8 週間程度)、エンジニアリング・コストの削減、工場のスペースに関する条件の大幅な緩和といったメリットを得ることができます。また、工場における製造フローを容易に変更することが可能になります。例えば、従来数時間かかっていた変更作業を数分で終えられるといった具合です。
  • 予知保全と状態基準保全は、工場全体の生産性と信頼性の向上に寄与します。振動パターンなどの動作パラメータは、摩耗の初期的な兆候として活用できます。その結果、マシンが故障してダウンタイムが発生する前に、問題が生じそうなマシンを修理することが可能になります。これは、インダストリ 4.0 に対応するシステムにおいて、センサーによる高精度の計測、高度なデータ分析、広帯域に対応するネットワークの重要性を示す典型的な例です。また、予知保全の導入を成功させるために必要なのは、要素技術だけではありません。マシンの健全性を表すデータを運用に役立つ情報に変えるアルゴリズムとソフトウェアを開発するために、オートメーションと産業用マシンのオペレーションに関する深い専門知識が必要になります。

インダストリ4.0の観点から、センサーとソフトウェアの進化をどう見るか?

センサーによって取得した未処理のデータは、ソフトウェアによって実用的な情報に変換されます。上記の予知保全の例が示すように、接続性の確立とデジタル化が実現された工場に価値をもたらすには、センサーとソフトウェアの融合が必要になります。

マシンの健全性を監視するシステムにおいて、センサーは振動や温度などの計測値のストリームを生成します。そのデータ・ストリームは、信号処理技術を使ってノイズや歪みを除去したり、出力を直線化したりすることで、分析に適した形に変換されます。

処理済みのデータには、分析などのソフトウェア処理が適用されます。例えば、複数のソースから得たデータを相互に関連付けたり、異常なパターンを検出したり、発生した障害または潜在的な障害を認識してその場所を特定したりといったことが行われます。その結果、データから実用的な情報が生成されるということです。

センサーが扱う現実の世界とソフトウェアが扱うデジタルの世界を統合するには、以下に示す2つが必要になります。

  • 技術に関する専門技能
  • 特定の分野/アプリケーションに関する専門技能

アナログ・デバイセズは、産業分野で求められるアナログ/デジタル・エレクトロニクスの専門技能と、特定の分野に関する専門技能の両方を確立するために、多大な投資を行ってきました。それにより、お客様がインダストリ4.0に向けたプログラムを構築する際に、有益な洞察をもたらすことができます。また、個々のお客様に固有の運用に対し、どのようにすればメリットを享受できるように新技術を適用できるのか、お客様が理解できるようにサポートすることも可能です。

アナログ・デバイセズの技術は、どのようにインダストリ4.0を支援するのか?

インダストリ4.0は、新たな可能性を開くサイバーフィジカル・システムを構築/運用しようというものです。この概念は、現実の世界とデジタルの世界を新たな方法でつなぐ能力に根差しています。この領域で、アナログ・デバイセズは、50年以上先駆者として開発を続けてきました。

アナログ・デバイセズには、一般的な半導体企業とは大きく異なる点があります。まず、シリコン技術だけでなく、当社の主要な市場で必要とされるソフトウェア、システムに関する専門技能と、特定の分野に関する専門技能を確立すべく多大な投資を行っています。また、それらを比類ないアナログ/デジタル技術と結び付けることで、センシング、測定、解釈、接続、給電、安全性の確保を実現しています。当社は、産業分野の課題にシステムのレベルでアプローチすることにより、お客様が大きな成果を得るための最善の方法を見つけられるように支援します。

製造施設のデジタル化を検討しているマネージャに対する提言は?

上記の問いに対する答えは、できるだけ遠くの未来まで見据えることです。

現在、インダストリ4.0については、過剰な宣伝が行われている状態にあります。そのような動きに惑わされるべきではありません。現在行われている投資の一部は、今後15~20年にわたって意義を持ち続けている必要があります。そのため、目の前にある新しいシステムや技術が長い寿命を持つと確信できることには、大きな意味があります。特に、以下のような事柄が重要になります。

  • 独自のシステムではなく、標準ベースのソリューションを使って拡張可能な接続技術を選択します。
  • 高い精度で計測が行えるだけでなく、堅牢性に優れ、動作寿命の長いセンサーを選択します。

工場における接続性の確立とデジタル化が進むと、サイバー攻撃の脅威も増します。インダストリ4.0の取り組みについて評価する際、マネージャにとってはセキュリティが優先すべき重要事項になります。

セキュリティについて最適化を図る際には、特定のデバイスやエンド・ポイントの条件に捉われるのではなく、システム・レベルのアプローチを採用する必要があります。セキュリティは、エッジ・デバイスの内部やコントローラ、ゲートウェイ、あるいはスタックの更に上といった具合に、システムの様々な個所で様々な方法によって確保しなければなりません。システムの仕様書を作成する際には、ネットワークの任意の個所における対処方法に注目するのではなく、どこにどれだけの問題があるのかということに目を向けるべきです。

各ポイントでの脅威のレベルと脅威に対抗するためのコストについて、電力、性能、遅延のトレードオフを最小限に抑え、効果的なセキュリティ機能を加えるという観点が必要です。システム全体のセキュリティは、階層的なアプローチによって高めることができます。

まとめ

製造企業は、セキュリティの専門技能をマシンのレベルからシステムのレベルまで広げてアプローチする必要があります。そのなかで、自社の組織で対処するのか、それともアナログ・デバイセズのようなパートナーを選択するのかという選択を行うことになるでしょう。その上で、時間とリソースに対して投資することが得策だと言えるはずです。